赤の悪夢
            原作:フレドリックブラウン
            アランフィールド
             
             
             
 彼は、なにによって起こされたのか、わからないまま、目がさめた。
最初のゆれのあと、1分で、2回目のゆれが来た。ベッドが少しゆれ、
タンスの上の小物が、ガタガタと、音をたてた。3回目のゆれを、横に
なったまま、待っていたが、来なかった。その時までは、来なかった。
 ほとんど目が覚めてしまっていて、もう、眠ることができなかった。
時計の夜光盤を見ると、まだ、真夜中の3時であった。ベッドから出て、
パジャマのまま、窓のところまで歩いた。暗い空に、点滅する光が見え
た。夜の音が聞こえた。どこかで、ベル。



 

2

1





 しかし、なぜ、この時間にベルなんか?災害を知らせるベルなのか?
ここの軽いゆれが、どこか近くで、大きな地震につながったのだろうか?
あるいは、これから、ほんとうの地震が来る、という警報のベルなのか?
家から出て、どこか広い場所へむかえと警告しているのか?
 突然、おそれからではなく、自分でも分析したくない奇妙な衝動によ
って、どこかへ逃れたかった。ここに、いたくなかった。走らねばなら
なかった。そうしなければならなかった。
 そして、彼は、走った。ホールを抜け、正面玄関を出て、静かに、は
だしのまま、門につづく、長い、直線の歩道を。門をくぐると、背後で
戸がしまった。フィールドのなかへ。フィールド?なぜ、ここに、フィ
ールドが?門のすぐ外から?なぜ、フィールドに、彼の背丈くらいの、
切断された電信柱のような、太いポストが点在しているのだろう?考え
がまとまらないまま、すぐにスタートして、自分が、なぜ、ここにいて、
自分がなにもので、なにをしようとしているのか、思い出そうとしてい
ると、次の地震が来た。こんどは、かなり大きく、走りながら、ふらつ
いて、奇妙なポストのひとつにぶつかり、一瞬の衝撃で、肩が傷つき、
走るコースがそれて、ほとんど、倒れそうになった。走りつづけようと
する、この異様な衝動は、なんだったのだろう?いったい、どこへむか
っているのだろう?
 そして、本格的な地震がやってきた。地面は、彼の下でめくれあがっ

4

3





たようにみえた。大きくゆれ、あおむけにひっくりかえって、彼は、突
然現れた、モンスターのような空を見上げた。1マイルもあろうかとい
う、ワードの大きな赤の文字。
 ワードは、TILTだった。彼がそれを見つめていると、点滅してい
た照明は、すべて、消えて、ベルがけたたましく鳴り響いた。これが、
すべての終わりだった。
 
 
 
                            (終わり)











6

5