ハンスカーベルのリング
            原作:フレドリックブラウン
            アランフィールド
            (ラブレーの作品を現代風にアレンジ)
            プロローグ
             
 むかしむかしフランスのあるところに、お金持ちですこし高齢のハン
スカーベルという宝石商がいた。ハンスカーベルは、研究熱心で教養も
あり、みんなに好かれていた。暮らしはつつましくなにかに失敗したわ
けでもなかったが、ハンスカーベルは、この年まで独身だった。60才
前後だという。正確な年は教えてくれなかった。
 この年になって、ハンスカーベルは、宮廷の執行官の娘と恋に落ちた。
活発で元気な娘で、宮廷の王の食卓に料理を運ぶ女給をしていた。
 ハンスカーベルは、その娘と結婚した。



 

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 幸せな新婚生活だったが、ハンスカーベルは、若い妻に疑いを持ち始
めた。妻を深く愛してはいても、妻は元気がよすぎて活発すぎるのでは
ないかという気がした。彼が与えられるものが、もちろんお金は十分あ
ったが、お金以外で与えられるものが、彼女を満足させるには十分では
なかったかもしれなかった。かもしれない?はっきり言おう。十分では
なかったのだ。不自然にならないように、ハンスカーベルは、調査を依
頼して、妻が浮気をしていることを知った。ハンスカーベルは、心が動
揺して苦しみ、夜眠るたびに悪夢に悩まされた。
 
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 その悪夢のひとつに、ある夜、デビルが現れた。ハンスカーベルは、
悩みを打ちあけて申し出た。
「なにか妻の貞操ていそうを保証してくれるものがあったら、ここにあるお金で
ゆずってほしいのだが!」
「もちろん、いいとも!」と、デビル。「魔法のリングをあげよう。目
覚めたら、リングがあるよ。そのリングをはめている限り、きみの奥さ
んがきみに隠れて浮気をすることは不可能だ」

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 デビルは、消えた。
 ハンスカーベルは、目覚めた。
 そしてリングをはめていることに気づいた。
 悪魔が約束したことはホントだった。






            エピローグ
 
 若い妻も目覚め、体をもぞもぞさせて言った。
「ハンス、ステキなリングをしてるじゃない。ダーリン、だれに?」
「夢のなかのデビルさ━━━つぎは、もっと実用的なものをもらうよ」
 
 
                            (終わり)



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