殺人レッスン
            原作:フレドリックブラウン
            アランフィールド
             
            プロローグ
             
 殺人に、ロマンチックなところなんかなにもない。汚い仕事だし、と
ても好きにはなれないだろう。
 そう、殺人をするなら、そいつは別だと考えたほうがいい。死んで数
週間たったカエルを解剖するようなもんだ。においも同じだし、おそら
くぶつを持って、焼却炉へ一目散に走りこみたくなるだろう。
 これを読むのも、今すぐやめた方がいい。やめないのなら、オレが警
告したってことだけは忘れないでほしい。
 



 

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 モーリーエバンズを、好きにはなれないだろう。好きなやつはほとん
どいない。新聞でやつの記事を読んだかもしれないが、その名前ではな
かったはずだ。デュークエバンズがそのころの名前だった。その後、つ
まりこの話の初めは、少年として、スティンキーと呼ばれていた。
 スティンキーにはふざけた響きがある。いつもではないが、ふつうは。
時として、少年たちは、巧みな才能でニックネームをつける。体がにお
っていたわけではない。少年として、両親に週1回はフロへ入るようし
つけられていたからだ。大人としては、いきな服装で、なにか油ぎった
かんじにこざっぱりしていた。実際に油ぎっていたわけではないから、
これは偏見だろう。ヘアオイルは使っていた。
 そろそろ話を先に進めよう。スティンキーエバンズに戻って、レッス
ンその1から。その時、スティンキーは14才で、ギャングの仲間だっ
た。土曜の夜はいつも、10セントストアを襲ってポケットをいっぱい
にして店を出てくるようなギャングだった。ほとんどの連中はうまくや
っていて、つかまることはめったになかった。
 ハリーキャランは、ギャングの親玉だった。ハリーは、ほかの少年た
ちよりすこし年上で、コネがあった。かみそりの刃やレコードプレーヤ
ーの針やらの20ドルの価値はありそうな雑多な寄せ集めを、ハリーの

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ところへ持ってゆくと、5ドルの現金に交換してくれた。そのアイデア
とやつの鉄拳と巨漢を生かして、ギャングたちを支配していた。
 スティンキーエバンズの殺人レッスンその1は、ハリーキャランがス
ティンキーの地獄のドアをノックした午後に始まったといえるだろう。
とくに理由があったわけでもないが、ハリーは、手下たちがみな忠実で
あることを確認するために、たまに、ひとりを選んで殴った。
 それは、ボーリング場のレーンの奥でのできごとで、そこで、少年た
ちは、1回ごとにピンをセットする仕事をしていた。それは、どなり声
から、おもにハリーキャランのどなり声から始まり、ハリーはスティン
キーエバンズを殴り、たっぷりと油を絞った。
 これは、スティンキーにとって初めての経験だった。それまでは、自
分より小さいガキとしかケンカしたことがなかったからだ。制裁は長く
は続かなかった。終わると、スティンキーはレーンに倒れ、少し涙を流
し、ぶつぶつののしりながら、鼻から血を流していた。完全にやられた
わけでなかったから、もっと殴られるためにすぐに立ち上がることはで
きた。
 胸のうちの怒りや憎しみにもかかわらず、スティンキーはもっとよい
ことに気づいた。自分は殴られたってことだった。
 スティンキーは倒れたまま、手の近くには石があった。それが、小さ
な悪魔がスティンキーの心のなかに入ってきた瞬間だった。スティンキ

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ーは石を拾い上げた。
「殺せ!」なにかが囁いささやた。「ねずみを殺せ!」
 それは、なににもいたらなかった。ハリーキャランは、スティンキー
の手から石を蹴り出し、スティンキーの顔を蹴り上げて歯を3本折ると、
ボーリング場の裏口から出ていった。
 それは、なににもいたらなかった。スティンキーは石を投げなかった
し、とにかくハリーキャランの頭には当てなかった。スティンキーは弱
気になっていた。まだ、殺人の準備はできてなかった。
 しばらくして、スティンキーは立ち上がり、家に帰った。

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 よく言われるように、もしも結婚が天国でなされるなら、殺人は地獄
でなされるに違いない。
 もちろん、だれも地獄を信じてはいない。つまり、小さな赤の悪魔が
みつまたを持って走り回ってるような具体的な地獄を信じてはいない。
 にもかかわらず、地獄は存在する。殺人がなされるところだからだ。
殺人がどうなされるかを説明するには、地獄をそれなりに信じてもらう
必要がある。地獄としては、ここでは古典的なものにしよう。地獄を仮
定するので、小さな赤の悪魔やらもいることにしてもらう。

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 つまり、こうしよう。スティンキーエバンズが、ボーリング場のレー
ンから家へ歩いて帰るあいだ、小さな赤の悪魔がうれしそうにくっくっ
と笑っていたと想像してほしい。
 小さな赤の悪魔は、大きなボスにこう言ったと想像してほしい。
「いいカモですぜ、ボス!」と、小悪魔。「どこにでもいる卑屈なガキ
ですが、こいつはグレードアップしますぜ、ボス!」
「レッスンその1は、やったのか?」と、ボス。
「ええ、たった今!そのあとも、やつはすいすいパスしますぜ!」
「よし!やつは、おまえにまかそう!報告してくれ!」
「了解、ボス!」と、小悪魔。「やつはまかせてください!」
 それは、スティンキーエバンズが14才のときだった。15才で、ス
ティンキーは、スペアタイヤを盗んだ。留置場に1晩泊まらされ、その
後、少年ということで保護観察官に送られた。留置場にいたときに、4
才年上の男と話をしていて、ジャックナイフの話になった。
 そこは暗く、床に鉄格子の影が映っていた。薄い黄の台形が、黒の格
子模様に浮き出ていた。黒の虫がそこを横切ろうとすると、囚人のドカ
靴がうしろから迫り、踏みつぶした。
「やつの胸にジャックナイフを突き立てたら」と、4才年上の男。「そ
いつをねじるんだ。そうすれば、空気が入って、すぐに倒れる。叫ぶ時
間さえない!つまり、スクランブルエッグを作ってもらう時間もないの

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さ!だから、刃は広いのが1番!ねじったときに空気がたくさん入る!
小剣を使うのはよくない。心臓に当たらなかったら、6回は刺さなけり
ゃならない━━━」
 もっと続いた。それがレッスンその2だった。スティンキーは、ハリ
ーキャランのことを考えた。
 
 
 
 
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 ダウンタウンの狭い路地を酔っ払いが歩いていて、うしろからタラン
チュラにつけられていたら、地獄のような叫び声を上げるだろう。ステ
ィンキーエバンズは、震えた。
 スティンキーエバンズは、タイヤ窃盗によって、2週間の保護観察と
なった。それが明けてすぐ、スティンキーは、また問題を起こした。今
度は、半年間の更生施設送りとなった。これは、すばらしい半年間だっ
た。スティンキーは、多くのことを学んだ。つまらない詳細を述べても
退屈だろうから、まとめて、それらをレッスンその3からその5とカウ
ントすることにしよう。

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 施設を出たとき、スティンキーエバンズは、15才だったが、もっと
大人に見えた。自分でも、大人に感じていた。家には帰らないことにし
た。家に帰ると、仕事にかなきゃならないし、保護観察官に報告もし
なけりゃならない。家にいれば、やつらはずっとスティンキーを監視し
続けるだろう。地獄に落ちろ!
 家に行ったのは、何着かの服を出して菓子箱から小銭を借りるだけの
時間だった。25ドル、それだけだった。
 スティンキーは、貨物列車に飛び乗った。線路に沿って店のバラック
が続くところで降りた。スプリングフィールドの分岐ポイントだった。
 安ホテルに室をとると、町をブラついた。カネが底をつくと、ビリヤ
ード店の窓に、「店員求む!」という張り紙のあるところに戻った。
 そこは、ニックチェスターが営むビリヤード店だった。ニックチェス
ターの名前は、聞いたことがあるかもしれない。スプリングフィールド
の住民のあいだでは、ニックチェスターの名は知れていた。
 日焼けした小男だが、スマートだった。200ドルのスーツを着て5
0セントの葉巻を吸っていた。町はずれの高級マンションに住んで、カ
スタムカーを乗りまわしていた。こんなふうにかいつまんだだけでも、
言いたいことは分かるだろう。それらが、週20ドルか30ドルにしか

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ならないビリヤード店からまかなえるだろうか?
 ニックは、20ドルの中折帽を頭の後ろに傾けると、どんなウソでも
見抜けそうな目でスティンキーエバンズを見た。
年齢と しは?」と、ニック。
20はたちです」と、スティンキー。
「ムショにいたのか?」その返事を待たずに、続けた。「ああ、答えた
くなかったら答えなくていい」
 スティンキーは、頭を振った。
「名前は?」と、ニック。
「デューク」と、スティンキー。意を決して。「デュークエバンズ」
「オーケー、デューク!しばらくは、ボールを並べていてくれ!」と、
ニック。「慣れたら、別のことも頼む。うまくやっていこう!」
 デュークは、ビリヤードテーブルに戻った。デュークは、ニックチェ
スターを見ていた。そして、自分がなにをしたいのかに気づいていた。
えりに白のカーネーションをつけたスーツを着て、高い葉巻を吸い、うつ
ろだがなんでも気づいている目で、ポケットには札束。
 力が必要だった。そのために働き、盗みもし、いつか━━━。
 地獄でうれしそうな笑い声がしたのは、たぶん、このときだったのだ
ろう。もちろん、地獄があったとしての話だが。物事はスムーズに運ん
でいた。このとき、小さな赤の悪魔はボスに報告したに違いない。

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「順調です、ボス!」と、小悪魔。「レッスンその6を終えました!ボ
スは来年だって言ってやしたけど━━━」
「そんなにせかせなくてもいい!じっくり育てるんだ!」
「やつは、すぐに卒業まで行きますぜ、ボス!しかも、優秀な成績で!
2・3年待てって言うんじゃ?」
「じっくりでいい。5・6年かけて」
「そんなに長く?」と、小悪魔。びっくりして。「おお、神よ!」
 小悪魔は、すぐに口を硫黄いおうで清めさせられた。


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 つぎを、レッスンその7とその8としよう。デュークエバンズは、だ
んだんとデュークエバンズらしくなった。スーツは、たったの30ドル
だったがズボンの折り目はピシッとさせていた。
 デュークは、もうボールを並べていなかった。コレクションを始めた。
小さいものだったが数は多かった。それがニックのやり方で、力の源だみなもと
った。1本の指で1000の小さなパイを操るあやつ、1度に1つというその
パイのやり方を、デュークは学んだ。
 デュークは、グローブ通りの花屋へ行った。ドアをさっと通り抜ける

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と、店の奥で花束を作っている小柄な店主を見つけた。
「よう、ラーキン」と、デューク。歯を見せて笑いかけた。「会費の4
0ドルは?」
「今は、ちょっと」と、ラーキン。笑いを返さなかった。「払えないん
だ。そのことをウェスコットさんに、けさ電話で伝えたんだ。別の支払
いで、払えなくなったって━━━」
「なんだって?」と、デューク。笑うのをやめた。目が鋭くなった。
「支払ってもらわないと困るんだよ?」
「でも、40ドルはないんだ。家賃の支払いもまだだし━━━」
 デュークは、恐ろしい表情で、店の奥へ。これは、間違いだった。だ
れもデュークエバンズの恐ろしい表情には、耐えられなかった。しかも、
ラーキンは小柄で、かなりの恐ろしさを感じた。
 それは、デュークの仕事ではなかった。デュークは、戻って報告すれ
ばいいだけだった。そのあと豪腕のひとりが送られるだろう。しかし、
やさしい仕事だった。
 デュークは、手の背でラーキンの左顔面からめがねをたたきおとした。
手のひらで右顔面をはたくと、ラーキンは後ずさりした。
 デュークは、ラーキンの頭をさえて、胃のあたりを一撃した。ラーキ
ンは、苦しそうにかがんた。
「これは手始めにすぎない」と、デューク。「40ドル払えないかどう

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かよく考えな!」
 デュークは、40ドルをせしめた。
 本部への帰り道、デュークは、葉巻を買った。葉巻のにおいは、たば
こ同様、嫌いだった。しかし、今から、葉巻を吸うようになった。えり
は、ラーキンの店の花瓶から頂戴した白のバラの花をさした。
 靴もピカピカに磨いてあった。そうする必要もなかったが、その方が
気分がよかった。
 ニックチェスターは白のバラの花を見たとき、左の眉が0・5ミリほ
ど上がったが、デュークは気づかなかった。

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 デュークは、トニーバリアと親しくなった。だれでもトニーとはすぐ
仲良くなれた。トニーは、ラーキン同様、背が低かったが、軽くあしら
えるタイプではなかった。トニーは、魚雷だった。トニーは、クールで
張りつめたかんじで、動作はすばやく華麗だったが、あまりに速いので
ぎこちなく見えた。トニーとはいっしょにいても、だれも心からはくつ
ろげなかった。トニーを背後からたたこうとしたら、トニーは爆発した
だろう。魚雷が、トニーバリアにちょうどふさわしい呼び名だった。
 トニーとスヌーカービリヤードを2回やれば、トニーが、高級イタリ

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アン赤ワインのキャンティに目がないことに気づくだろう。
 デュークは、トニーにいろいろ学びたかったので、室にはいつもキャ
ンティを置いてあった。デュークは、野心のある若者ならかならず知っ
ておきたいことを、トニーから学んだ。こんなふうに。
「だれかをやるには、45口径オートマティックに限る。32口径では
だめだ。32口径だと、肩とか足に当たったら、撃ってないのと同じだ。
頭か心臓に当てなきゃならない。やがて死ぬにしても、しばらくは生き
ている。話ができるくらい長くね、ふん?しかし、45口径の弾丸た まなら、
どこに当たっても、バッドに殴られたみたいにすぐにぶったおれる。
 銃をどこかに運ぶ場合は、32口径オートマティックの方がいい。軽
いし、コートがふくらむこともない」
 学んだことは基本的なものばかりだったが、デュークはいろいろ堀り
下げて、いくつかの重要な点に気づいた。パラフィンテストをごまかす
方法とかだ。その方法を知らないなら、ま、知らないでいる方がいい。
ここでは、レッスンではなく、状況を話しているだけだ。
 トニーは、あらゆる意味で、ガンマンだった。ナイフは弱いやつが使
うもので、げんこはゴリラが使うもので、トミーガンは相手もまともに
ねらえないガキの使うものだった。
「なぜタイプライターより45口径かというと、1発で仕留められるか
らだ。3秒ですむ。弾丸た まを食らわせ、ぐらつかせ、倒れる」

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 デュークエバンズは、トニーからいろいろ学んだ。唯一学ばなかった
ことは、トニーを恐れなければならないということだった。デュークは
入ったばかりの頃、トニーは仲間だと考えていた。トニーは、ニックが
嫌いだった。それで、デュークはそう働きかけようと━━━。
 2年がたった。デュークは、悪でも身長でも成長し、ギャングとの仲
も良くなった。デュークは、入手経路がバレないように拳銃を2挺ちょう買っ
た。自分用にライフルも買って、このことはみんなにオープンに話した。
たまにハンティングに出かけ、自動拳銃の練習場所をいくつか森の中に
見つけておいた。だれも、デュークが拳銃を持っていることも練習して
いることも知らなかった。
 少しのあいだ、豪腕の連中を仕切っていたこともあった。だれに会っ
て、いくらカツアゲするか指示していた。デュークは、そこからピリッ
とした興奮を味わった。
 一度、タバコ店にパイナップルを仕掛けた。パレルマンの店で、アド
バイスにさからって、会費を払うのをこばんだのだ。それは表向きの理由で、
ほんとうはデュークに向かってパレルマンがこう言ったからだった。
「ここから出ていけ、チンピラ!」
 デュークエバンズは、もうチンピラではなかった。

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 爆発を数ブロック離れた場所で聞いて、こう考えた。
「だれがチンピラだって?」
 パレルマンが爆発の瞬間、店にいたことを願った。その場面を鮮明に
思い描いた。暗い路地にいたので、無表情を装う必要はなかったからだ。
デュークは、ぞっとする顔をしていた。
 いいところなんてまったくない。デュークエバンズは、もともとナイ
スガイではない。このことはすでに警告したはずだ。
 こうして、デュークエバンズは、準備を━━━ボロもうけの列車を乗
っ取る準備ををすませた。

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 デュークエバンズは、うまくやり遂げるかもしれない。失敗しないよ
うに、拳銃で。ニックは撃たれて死んだようにみせた方がいい理由があ
った。
 デュークエバンズは、ある日、車を盗んで、カバーをかけて夜遅くま
で隠した。ニックが自宅に帰ると、電話をかけた。デュークは、自宅に
いるニックが見える場所にいた。ニックを監視してなにが起こっている
か見ることが重要だった。ニックは今までは、手下を自宅に来させない
ようにしていたが、あるいは━━━。

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 とにかく、詳細はどうでもよかった。ニックは服を着て、2ブロック
歩くために出てくる。近いので、車をガレージから出すことはしないだ
ろう。そして、ニックは、そこの角を曲がることになるだろう。
 デュークは、車を電気を消して停めていた。ちょうどいいタイミング
でエンジンをかけ、ニックが角を1/3曲がったら、先に行こうが戻ろ
うが、ニックをとらえられるだろう。
 その角は電灯があったが、車が停めてあるところは暗かった。デュー
クが考えていたより暗かった。ニックは、あと数分でやって来るだろう。
デュークの注意は、ニックを監視することに集中していた。
 デュークは、ふたりの男たちが、逆方向から近づいてきたことに気づ
かなかった。ひとりが、助手席のドアをあけた。ひとりは、トニーバリ
アで、もうひとりは、スイードだった。
 トニーは助手席にすわって、デュークのレバーに45口径を突きつけ
た。デュークは、45口径でどうなるかというトニーの話を思い出した。
「トニー、そうじゃないんだ━━━」と、デューク。汗をかき始めた。
「黙れ!北へ向かえ!」と、トニー。銃で押した。
「トニー、分け前ならたっぶりある━━━」
 スイードは、後ろに乗り込んで、拳銃の台尻でデュークの後頭部を殴
った。


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            エピローグ
 
 夜明けまでは時間があった。地獄のではなく、スプリングフィールド
の。小さな赤の悪魔が、ボスのところに走りこんできた。うれしそうに
くっくっと笑いながら、矢尻状のしっぽを大喜びで振っていた。
「ただいま卒業しましたぜ、ボス!」と、小悪魔。笑い声で。「やつは、
最終レッスンを終えました。これで、殺人については完璧です。湾に着
くまで気絶してますが、足にセメントのおもりをつけられてます。ふた
りにからかわれるまで、命乞いするでしょうね。そのうちあきらめて、
殺人については完全に分かるでしょう。これで、完璧です!」
「よくやった!やつはここに来るのか?」
「ええ」と、小悪魔。「もうすぐ連れてきます。すぐに」
 
 
 
                            (終わり)





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