アリスのアンダーグランド
          原作:ルイスキャロル
          アランフィールド
           
            プロローグ
             
 アリスは、姉のマギーといっしょに土手にすわって、な~んにもする
ことがなくて、飽きてしまった。1回か2回、マギーが読んでいる本を
のぞいてみたが、そこには、さし絵も会話もなかった。アリスは考えた。
「さし絵も会話もない本なんて、なんの価値があるのかしら?」
 アリスは心のなかで考えていたので、(暑い日ですごく眠くて、頭は
ボーッとしながら)デイジーの花のチェーンを作るのは起き上がる価値
があると、デイジーの花をんでいると、アリスのすぐ近くを、ピンク
の目をした白のうさぎが走っていった。



 

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 そのこと自体におかしなことはなにもなかったし、うさぎがこう自分
に言うのを聞いてもとても自然に思えた。
「あ~、なんてこった!遅刻だ!」
(あとで思い起こすと、すこしは不思議に感じてもよかったが、このと
きは、すべて自然にみえた)しかし、うさぎがチョッキのポケットから
時計を出して、それを見て、走りだすと、アリスも走りだして、心に浮
かんだのは、チョッキのポケットだろうがなんだろうが、時計を取り出
すうさぎなんて見たことないし、あまりに奇妙なので、草地を横切るう
さぎの後を追った。生け垣の下の大きなうさぎ穴に飛び込むのがチラッ
と見えた。その瞬間、アリスもあとに続いてうさぎ穴に飛び込んだ。もと
の世界に、どう戻ったらいいかなんてことはまったく考えなかった。
 うさぎ穴は、ある種のトンネルのようにまっすぐで、突然下に向かっ
ていて、あまりに突然なのでアリスは自分を止めようと考えるひまもな
く、深い井戸のようなところへ落ちていった。井戸が深いのかあるいは
とてもゆっくりと落ちているからか、落ちながらまわりを見ながら、つ
ぎはどうなるのか考えられた。最初に下を見て、どこへ落ちてゆくのか
知ろうとしたが、あまりに暗くて分からなかった。つぎに、井戸の横を
見ると、そこは戸棚や本棚でできていた。地図もあれば絵もあって、く

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ぎでつるされていた。落ちながら戸棚からビンを手にした。ビンには、
「オレンジマーマレード」というラベルがあった。ビンはカラだったの
で、アリスはがっかりした。ビンを落とすと下のだれかにあたってしま
うかもしれないので、落ちながら戸棚のひとつに戻した。
「そうね!」と、アリスは考えた。「こんなに落ちたあとでは、階段で
ころぶことなんてどうってことないわ!家に帰ったら、わたしの勇気に
みんな驚くわ!だって、家の一番高いとこから落ちたってぜ~んぜん平
気だもの!」
(これは、ほとんど本当のことだった)
 
               ◇
 
 下へ、下へ、下へ━━━落ちてゆく終わりってないのかしら?
「なんマイル落ちたのかというと」と、アリス。大声を出して考えた。
「もう地球の中心近くに来てるわ!ちょっと待って!もう4千マイルは
落ちてるから」
(アリスは学校の授業で、この種のことは習っていて、ここは誰も聞い
てる人がいないから、知識を披露ひろうするのにとてもふさわしい場所とは言
えないけれど、最後まで述べるよい機会ではあった)
「そうね、距離は正しい。でも、ここの経度と緯度はどのくらいか?」

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(アリスには、どちらも見当がつかなかった。ただ、経度と緯度は、口
にするだけの重みのある言葉だった)
「もしも」と、アリス。また大声を出して考えた。「地球のちょうど反
対側まで落ちたらどうなるのか?人々がみんな頭を下にして歩いている
ところに出ていったら、おかしく思われるわ!でも、そこの国の名前を
聞くべきね!あら、奥さま、ここはニュージーランドですの?それとも、
オーストラリア?」
 アリスは今聞いてるようにおじぎをした。(空中を落ちながらのおじ
ぎなので、すこし変だった。たぶんうまくできる人なんていない)
「小さな少女が聞いても無視されるのがオチだわ。そんなふうに聞いて
もだめで、たぶんどこかに書けば分かってもらえるのよ!」
 
               ◇
 
 下へ、下へ、下へ━━━アリスは、ほかにな~んにもすることがない
ので、また大声を出して考えた。
「ディナは、今夜わたしがいなければさびしがるわ!なんとかしないと!」
(ディナは、アリスの家でわれているネコだった)
「お茶の時間に、ディナのミルク皿を忘れなければいいけど。ディナ、
ここにいっしょにいてくれたらいいのに!空中にはねずみはいないけど、

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こうもりをつかまえられるわ!こうもりってねずみにとても似てるのよ。
でも、ネコって、こうもりを食べるのか?」
 アリスはすこし眠くなって、繰り返し自分に、夢のなかで問いかけた。
「ネコって、こうもりを食べるのか?」
 あるいは、
「こうもりって、ネコを食べるのか?」
 どちらも答えられないので、どちらでもよくなった。眠たくなり、夢
で、ディナといっしょに散歩をして、アリスは熱心にディナに聞いた。
「ねぇ、ディナ!ほんとうのことを教えてくれる?ディナは、今までこ
うもりを食べたことあるの?」
 突然、「ババ~ン!」と、ステッキやヒゲ剃りがどっさりある山の上
に落ちて、落下は終わった。
 アリスは、どこもケガはなく、自分の足で山を飛び降りた。見上げて
も暗く、アリスの前には、別の長い通路があって、白のうさぎが先を急
いでいた。見失うわけにいかなかったので、アリスは風のようにうさぎ
のあとを追った。コーナーを曲がるときに、うさぎの声がした。
「耳もヒゲも、遅れないよう急げ!」
 アリスもすぐにコーナーを曲がった。するとそこは、低いホールがの
びていて、天井にはランプが並んでいた。
 ホールには、ランプごとにドアも並んでいた。どのドアもかぎがかか

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っていて、アリスはすべてのドアを試して、悲しくなって、ホールの中
ほどまで来た。
「これじゃ、どうやって出たらいいの?」
 
               ◇
 
 アリスは、ガラスでできた小さな3脚テーブルの前に来た。テーブル
の上には、小さな金のカギがあった。
「このカギは、きっとドアのカギだわ!」
 しかし、どのカギ穴も大きすぎるか小さすぎるかどちらかで、ドアを
あけられなかった。
 低いカーテンに来ると、そのむこうに18インチの高さのドアがあっ
た。金のカギを試すと、ちゃんとカギ穴に合って、アリスはドアをあけ
られた。うさぎ穴くらいしかない小さなドアのむこうをのぞくと、今ま
で見たことのないような美しい花壇だった。
「暗いホールを出て、美しい花壇や冷たい噴水を見てみたいわ!」
 しかし、小さなドアには、アリスの頭も入らなかった。
「わたしの頭だけでも通り抜けられたら、肩なんてなくたっていいわ。
望遠鏡のように伸び縮みできたらいいのに!どうやったらいいか分かれ
ばできそうな気がする!」

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 このところ信じられないことがたて続けに起こるので、アリスは不可
能なこともあきらめずに考えるようになった。
 なにもできずに、別のカギか、なにか人間を伸び縮みさせる手引書で
もないかとテーブルまで戻ると、小さなボトルがあった。
「たしか、前はなかったはずよ!」と、アリス。
 ボトルのラベルには、大きな字体で美しくこう書かれていた。
「わたしを飲んで!」
「わたしを飲んでですって?」と、アリス。「よく言われそうなことだ
わ。そういうときに注意することは、ビンに毒入りって書いてあるかよ
く見ること!」
 アリスは、今までいろいろなお話のなかで、子どもたちが焼かれてし
まったり、野獣に食べられてしまったり、そのほかの楽しくない目にあ
ったりするのは、子どもたちに教えられた簡単なルールを忘れていたか
らだということを知っていた。つまり、火のなかに飛び込めば燃えてし
まうとか、ナイフで指を深く切ればふつう血が出るとか、そして忘れて
ならないのは、毒入りと書かれたビンを飲めば、遅かれ早かれ、同情し
がたい目にあってしまうということだった。
 しかし、このボトルには毒入りと書かれてなかった。アリスはなめて
みると、とてもおいしかったので、(いろいろなフレーバーが混ざって
いて、チェリータルト、カスタード、パイナップル、ローストターキー、

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トフィー、それにホットバタートーストの味がした)すぐにすべて飲ん
でしまった。
 
               ◇
 
「へんな気分!」と、アリス。「望遠鏡のように、縮んでしまうわ!」
 アリスは、10インチの背丈になったが、顔は輝いていた。「これで、
美しい花壇の小さなドアを通れるわ!」
 アリスには心配なことがあった。
「いったいどこまで縮んでいく?キャンドルのように縮んでいったら、
困るわ。炎はほのお、キャンドルが燃え尽きたら、どうなってしまう?」
 アリスは、キャンドルが燃え尽きたところを見たことがなかった。
 しかし、なにも起こらなかったので、アリスはドアを通ることにした。
ドアの前まで行ってから、金のカギをテーブルに忘れてきたことを思い
出した。戻って見上げると、金のカギは、はるか上のガラスのテーブル
にあって、手が届かなかった。足をかけても、ガラスの3脚はすべりや
すく、登れなかった。
 アリスは、すわり込んで泣きだした。
「しっかりしなさい!」と、アリス。自分に。「泣いてもなんの役にも
立たないわ!しばらくがまんするのよ!」

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(アリスは、自分にアドバイスができた。ときには涙を浮かべるほど、
きつくしかった。ひとりクリケット試合もやったことがあって、まるで
自分がふたりいるかのように、自分にも耳を疑うほど不親切にふるまう
ことができた)
「でも、ひとりふた役なんて、今はなんの役にも立たないわ。自分を尊
敬できるようなことはなにもないもの!」
 アリスは、テーブルの下の小さな黒の箱に気づいた。箱をあけると小
さなケーキが入っていて、カードには、大きな字体で美しくこう書かれ
ていた。
「わたしを食べて!」
「いいわ、食べるわ!」と、アリス。「もしも大きくなったら、カギに
手が届くし、もしも小さくなれば、ドアの下を抜けられる。いずれにせ
よ、花壇に行ける。どっちでもかまわないわ!」
 アリスは、ケーキをすこし食べた。
「どっち?」
 アリスは、手を頭の上に置いて、大きくなったと感じようとしたが、
驚くことに、同じサイズのままだった。これは、ケーキを食べてふつう
のことだったが、アリスは、非常識なことばかり期待していたので、ふ
つうのことがすごくバカらしいことに思えた。
 アリスは、すぐに食べ終えた。

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               ◇
 
「おかしい!すごくおかしい!」アリスは、叫んだ。
(アリスは、あまりに驚いて、正しい英語を忘れてしまった)
「望遠鏡を1番長くのばしたみたいだわ!さよなら、わたしの足よ!」
(アリスは、下を見た。足は、遠ざかって視界から消えそうだった)
「かわいそうなわたしの足!だれが靴下や靴をはかしてくれるのかしら?
わたしには手に負えないわ。あまりに離れすぎていて、足の世話ができ
ない。自分たちでなんとかしなさい!でも親切にはするから、わたしが
歩きたいときは、そうして欲しい!クリスマスには毎年新しいブーツを
プレゼントするから!」
 アリスは、いろいろプランを考えた。
「足はたしかに運んでくれるものだけど、プレゼントしたり手紙を書く
のはおかしなことだわ!
 わたしの右足へ
  カーペットに気をつけて!
    アリスより、愛を込めて
これは、あまりにナンセンスだわ!」
 そのとき、アリスの頭がホールの天井にたっした。背丈は5フィートを

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越えていて、すぐに小さな金のカギをとると、花壇のドアに急いだ。
 悲しいことに、アリスのできることといったら、横になって片目で花
壇を見るくらいで、ドアを通り抜けることなど、前よりもっとできそう
になかった。アリスは、すわり込んでまた泣きだした。
「恥を知りなさい!」と、アリス。「大きな図体ずうたいをして!」
(じっさい、そうだった)
「こんなふうに泣いたりして!すぐやめなさい!」
 しかし、アリスは泣きやまず、なんガロンもの涙を流して、まわりは
深さ4インチの大きなプールのようになって、ホールの中ほどまでたっ
た。そのあと、ピチャピチャいう小さな足音が聞こえてきた。なにが来
るのか見ると、アリスは泣きやんだ。
 白のうさぎだった。きれいな礼服を着て、左手に白の手袋、右手に小
さな花束を持っていた。
 アリスは、白のうさぎがそばを通るときになにかを聞こうとしたが、
気分が沈んでいたので、低いおどおどした声になった。
「あの~、よろしかったら、教えて」
 うさぎは声のするホールの天井を見上げてから、花束と白の手袋を落
として、暗闇のなかへ猛ダッシュで走っていった。
 アリスは、花束と白の手袋を拾った。花束はいいにおいがして、アリ
スはずっと花束のにおいをかぎながら、「待って!」と言いながら、う

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さぎの後を追った。
 
               ◇
 
「きょうは、すべてがおかしいわ!」と、アリス。自分に。「きのうは、
すべてがふつうだったのに!夜に変わったのかしら?落ちついて考えて
みましょ!朝起きたときは、わたしは同じだったか?ちょっと違ってた
気がする。違ってたとしたら、この世界にいるわたしはなんなの?むず
かしいパズルだわ!」
 アリスは、自分と同じ年齢の子どもたちと比較してみた。
「わたしは、ガートルードではないことは確かだわ。ガートルードは長
い巻き毛だけど、わたしはぜんぜん巻き毛じゃない━━━わたしは、フ
ローレンスではないことも確かだわ。わたしはいろんなことを知ってる
けど、フローレンスはほとんどなにも知らない。それに、フローレンス
はフローレンスだし、わたしはわたしよ。むずかしいパズルだわ!知っ
てたものが、ちゃんと分かるかテストしてみましょ!4×5は12、4
×6は13、4×7は14、あら、なんてことでしょう!このままでは
20になかなかならないわ!掛け算表は、証明にならない。地理がいい
わ。ロンドンはフランスの首都、ローマはヨークシャー州の首都、パリ
は━━━あ~、みんな違ってる!分かったわ!わたしはフローレンスに

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なってしまったんだわ!それじゃ、こんどは『子どものクロコダイル』
を歌ってみましょ!」
 アリスは、ひざの上に乗せた両手を合わせて、歌い始めた。しかし、
声はしゃがれて、歌詞も前とは違っていた。
「子どものクロコダイルは
 尾は輝いて
 ナイルの水をかけると
 全身が金色にひかり輝く
 
 楽しそうに笑い
 ツメをきちんと広げて
 魚を迎えると
 アゴもやさしく笑う」
「この歌詞は、ぜんぜん違うわ!」と、アリス。目は涙であふれた。
「やはり、わたしはフローレンスになってしまったんだわ!ちっぽけな
家に住んで、おもちゃもなく、習い事もたくさんあって!いや、違う!
ぜったい違う!フローレンスなら、ここに座ったまま、なすすべもなく
頭を下げて、〝どうぞ〟って言うだけだわ。わたしなら、見上げて、こ
う言うの。〝わたしはだれ?最初に教えて!もしも好きな人なら、そう
なるわ。もしもきらいな人なら、ここに座ったまま、好きなだれかにな

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るまで待つ〟でも━━━」と、アリス。涙がどっとふきだした。「頭を
下げるのは、みんなの方よ!わたしはずっとひとりだったので、とこと
ん疲れた!」
 アリスが下を見ると、驚いたことに、しゃべりながら左手にうさぎの
小さな手袋をしていた。
「どうやってつけたのかしら?もしかしたら、また、小さくなりだした
んだわ!」
 アリスは、テーブルに戻って、自分の背丈を調べてみると、2フィー
トになっていた。そして、さらに急速に小さくなっていた。
「小さくなったのは、右手に持っているこの花束のせいだわ。ちょうど
いいタイミングで、花束を捨てなければ!今よ!」
 アリスは、3インチになった。
「さぁ、花壇へ行きましょ!」と、アリス。大声で。
 アリスが花壇のドアに戻ると、ドアはまたカギがかかっていて、小さ
な金のカギは、前のようにテーブルの上にあった。
「前よりもっと悪いわ。わたしは、前のように小さいし、どうしたらい
いの?」
 このとき、アリスは足をすべらしてドボンと塩水のプールに落ちた。
かろうじて、アゴだけ水面から出した。
「そうね、ここは地面の下で、この塩水は、わたしが9フィートだった

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ときの涙のプールよ。こんなに泣かなければよかったわ!」
 アリスは泳ぎながら、抜け道をさがした。
「あんなに泣いたバツなんだわ!自分の涙のプールでおぼれるなんて、
おかしいわ!」
 
               ◇
 
「きょうは、すべてがおかしいわ!」と、アリス。自分に。
 すぐ近くを、なにかが水しぶきをあげて泳いできた。セイウチかカバ
くらいの大きさだったが、自分が3インチだったことを思い出すと、そ
れはただのネズミだった。アリスと同じように足をすべらしたのだ。
「ネズミと話すことが」と、アリス。「なにかの役に立つのかしら?う
さぎには、まったく相手にされなかったわ。ここにずっといるのもイヤ
だし、ネズミが話せないという理由もない。やってみるべきだわ!」
「ネズミさん」と、アリス。「このプールを出る道をご存知?もう泳ぐ
のには疲れたわ!」
 ネズミは、泳ぎながらアリスをじろじろ見て、ウィンクをしたがなに
も言わなかった。
「たぶん、英語が分からないんだわ!そう、ウィリアム王が連れてきた
フランスのネズミよ!」

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(アリスの歴史の知識では、なにが何年前に起こったことなのかよく分
からなかった)
「Ou est mon chat?」(ネコはどこ?)
 これは、アリスのフランス語のテキストの最初の例文だった。
 ネズミは、ジャンプするとふるえだした。
「あら、ごめんなさい!」と、アリス。急いで言い足した。「傷つけた
かしら?ネコは好きでなかったわね?」
「きらいです!」と、ネズミ。ふるえる声で。「あなたが私でしたら、
ネコが好きですか?」
「たぶんきらいね」と、アリス。なだめるように。「おこらないでね!
あなたに、うちのディナを見せてあげたいわ。ディナをひと目見れば、
あなたもネコが気に入るわ!ディナは、それほどおしとやかでおとなし
いネコなの」
 アリスは、もう泳ぐのにあきて、半分は自分に言い聞かせていた。
「ディナは、手足をなめたり、顔をふいたりして、暖炉のそばにおとな
しく座ってる。みんなをいやしてくれる。それにネズミをつかまえるの
は一流よ━━━あら、ごめんなさい!また、傷つけてしまったかしら?」
 アリスは、また大声であやまった。ネズミは、こんどは全身の毛をさか
立てていた。
「すごく傷つきました!」と、ネズミ。おこってふるえていた。「うち

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の家族はみんなネコが嫌いです。ネコは、ずるいし低俗で下品だから。
もう2度とネコの話はしないでください!」
「ええ、そうするわ!」
 アリスは、別の話題を大あわてでさがした。
「あなたは、そうね、あなたは、イヌはお好き?」
 ネズミは答えなかった。アリスは、熱心に続けた。
「うちの近くに、かわいいイヌがいるのよ!あなたに見せてあげたいわ。
明るい目をした小さなテリア。そう、長いカールした茶の毛をして、投
げるボールが大好き。ちょこんと座って、ディナーとかおやつをせがむ。
牧場主に飼われていて、彼の話では、ネズミをみんなやっつけたそうよ
━━━あら、ごめんなさい!また、傷つけてしまったかしら?」
 ネズミは、全力で泳いでアリスから離れていった。プールには大きな
波が立った。
「ネズミさん」と、アリス。できるだけやさしく呼びかけた。「戻って
きて!ネズミさんが嫌いなら、もう、ネコもイヌの話もしない!」
 ネズミは、これを聞くと、Uターンしてゆっくりアリスのところへ泳
いできた。ネズミの顔は、すっかり青ざめていた。
(アリスは、ネズミに強い感情を感じた)
「岸へ泳ぎましょう!」と、ネズミ。ふるえる低い声で。「そこで私の
生い立ちを話します。それを聞けば、私がなぜネコやイヌを嫌いなのか

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分かるはずです」
 泳いでゆくのは、やたら時間がかかった。プールには、鳥や動物がた
くさん泳いでいたからだ。アヒルに、ドードー、ロリー、イーグレット、
そのほか珍しい生き物たちがいた。アリスは先頭を泳いで、大集団は岸
へ泳ぎついた。
 
 
 
 
 
 



 

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            2
 
 
 
 
                            (つづく)















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