“スペーステロリスト”ターナロス
                      キャサリンパワーズ
                       
            プロローグ
             
 ディーエスナインの早朝、クワークの店は、談笑する人々で賑わって
いた。ドクターベシアは、ターカリアンティーを飲みながら、携帯パネ
ルで推理小説を読んでいた。
「ドクターベシアですね」と、ガラックが言った。
「よかった、やっと会えた、少しお話していいですか?」
「ええ、ああ、はい、どうぞ」と、ドクターベシア。
「私はガラックといいまして、ご覧のとおりカーデシアの生まれです。
このステーションには、私以外カーデシア人はおりません。ですから、
なるべく多く友達を作りたいと思いましてね。こちらには赴任したばか



 

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1





りなんでしょ?」
「ええ、そうですが。ええ、その、あなたの方は、こちらには長いんで
すよね」
「ああ、ご存知でしたか」
「ターカリアンティーでもいかかです?いけますよ」
「お若いのに気の利く方だ。声をお掛けしてよかった」
「その、噂に聞いたんですが、ディーエスナインに残ったのは、カーデ
シアに情報を流すためなんですか?」
「ご冗談を、ドクター、まさか、この私をスパイだと言うんじゃないで
しょうね?」
「いや、そんなつもりは」
「いやぁ、正直な方だ、深い知性が感じられる。ご存知とは思いますが、
私は衣類を扱っています。なにかご入用いりようせつは、ブティックにいらして
ください。いやぁ、ぜひとも、見るだけでも構いませんので、ご遠慮な
く、いつでも歓迎させていただきますよ」
「ご親切に、どうも、ガラックさん」
「いやぁ、ガラックと呼んでください、気など使わずに」
「ガ、ガラックだね」
「いやぁ、では、お邪魔しました、よかったですよ、あなたのようない
い方とお近かづきになれて」

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 ドクターベシアは、ターボリフトを降りるとすぐに、チーフオブライ
エンに駆け寄った。
「ねぇ、ねぇ、今、お茶を飲んでいたら、誰に話し掛けられたと思う?」
「少佐、第3目標塔、48時間閉鎖します」と、オブライエンは、キラ
少佐に言った。
「スパイだよ、例のガラックっていうやつです」と、ドクターベシアは
今度は、シスコ中佐に言った。
「スパイだなんていうのは、ただの噂だ」と、シスコ中佐。
「いやぁ、違う、話せばわかります。向こうから名乗って、積極的に話
し掛けてきたんですよ。あれは、僕に目を付けたんだ、絶対そうですよ」
「なんのために目を付けたと言うの?」と、ダックス中尉。
「わからないけど、医療機密かもしれない、僕は絶対、漏らしませんか
らね」
「もちろん、君を信じている」と、シスコ中佐。
「そうだ、ねぇ、オブライエン、僕に監視装置を付けた方がいいよ、万
一のために、だって、ねらわれているかも」
「そこまでする必要はないだろう、すこし、頭を冷やせ」と、シスコ中
佐。
「小型艇が回避行動をとっています、そのあとをカーデシア艦が追跡中」
と、キラ少佐。

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「スクリーン、オン!」と、シスコ中佐。
「ベイジョーの船よ、カーデシアの船がベイジョーを襲っている、しか
も、我々の領域で!」と、キラ少佐。
「それは事実か?」
「確認しました、ベイジョーの領域です」と、オブライエン。
「交信する、カーデシアを呼び出せ!」と、シスコ中佐。
「チャンネル、オープン」と、オブライエン。
「カーデシアに告ぐ、君たちは領空を侵犯している、すぐに退去しろ!
繰り返す、退去しろ!」
「返答はありません。ベイジョー船から通信です」
「チャンネル、オープン」と、シスコ中佐。
「こちら、ステーション、聞こえるか?宇宙ステーション」と、ベイジ
ョー船。
「映像は受信できません」と、オブライエン。
「私は、シスコ中佐、ディーエスナインの司令官だ、君は誰だ?なぜ、
追われている?」
「頼む、いますぐ緊急着陸を許可してくれ、頼む」と、ベイジョー船。
「ベイジョーの船は、ひどい損傷を受けています」と、ダックス中尉。
「このままでは、バラバラになるでしょう、爆発します」
「乗員を収容しろ!」と、シスコ中佐。

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「了解」と、オブライエン。
 転送ポッドに人影が現われた。
「医療チーム、急行しろ」と、ドクターベシア。
「私の名はターナロス、政治的保護を求める」と、オブライエンに抱き
かかえられたベイジョー人の男。
「キラ!」と、ターナロスは、キラ少佐に気づいて言った。




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「ターナロスは、レジスタンス時代の同志です」と、キラ少佐。
「中佐、カーデシアからです」と、オブライエン。
「はは、やっと応答したわね」
「冷静にゆきましょう」
「オブライエン、チャンネルオープン」と、シスコ中佐。
「警告を与える」と、スクリーンに現われたカーデシア船の艦長。
「その男は凶悪な犯罪者だ。直ちに我々に引き渡せ!」
「彼は、保護を要請中だ」と、シスコ中佐。

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「聞き入れる気でいるのか?」
「正直言って、決めかねている」
「コーマの一員だぞ。ベイジョーとて、あんなテロリストの保護はしな
いだろう。その男は我々カーデシアの同朋に憎むべき罪を犯したのだ。
重ねて要求する、即刻、身柄を引き渡せ!」
「事実を至急、確認しよう。その前に、なぜベイジョーの領域を犯し、
我々、惑星連邦の施設を脅かしたのだ、納得がゆくよう、説明してもら
おう」
「脅かすようなまねなど、した覚えはないぞ」
「ならば、いいだろう、交信を終える」
「少佐と医療室に行ってくる。ターナと話を聞くのが先決だろう」と、
シスコ中佐は、オブライエンに言った。
「カーデシアが押しかけたら、着陸許可をたてに、しばらく外で待たせ
ておけ」
「わかりました」と、オブライエン。
「まさか、本気でターナをやつらに突き出す気ではないですよね」と、
キラ少佐。
 ふたりは、ターボリフトで医療室に向かった。
「君もコーマにいたのか?」と、シスコ中佐。
「テロ組織にいた人間が、政府の仕事なんかしていると思いますか?」

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「コーマの連中は、カーデシア人だけでなく、邪魔なベイジョー人まで、
みさかいなく殺している。確か、先月の政府高官の暗殺にも、犯行声明
を出していたはずだ」
「でも、ターナは別です」
「コーマの一員か?」
「ええ、でも」
「かばう気なら、任務からはずれてもらう!どっちつかずの気で任務に
あたられるのはごめんだ。彼がコーマのテロリストなら、このステーシ
ョンを隠れ蓑にして、破壊活動を続けるおそれがある」
「私は、ベイジョーの利益を優先します。どっちつかずの気じゃないわ。
今のベイジョーには、ターナロスのような強い意志を持った人間が必要
なんです」
「カーデシアを倒せればテロも許すというのか?」
「我々が強力な独立国家をもう一度きづくためには、コーマのようなテロ
リストグループは、いわば、必要悪です。はっきり言えば、ターナは我
々にとって、希望の光なんです、見殺しになんかできません」
 医療室では、ドクターベシアがターナロスの治療にあたっていた。
「様子はどう?」と、キラ少佐。
「2度の火傷やけど、裂傷に脳震盪、でも、過去の傷に比べれば軽いもんだ」
と、ドクターベシア。

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「過去の傷?」と、シスコ中佐。
「これが、比較的新しい、おそらく、ニ三年前のものでしょう」
「二年半前だ、正確には」と、ターナロスは、意識を取り戻して言った。
「よく命がもったもんだ」と、ドクターベシア。
「カーデシアは、半殺しにして拷問するのよ」と、キラ少佐。
「司令官のシスコ中佐だ。いくつか質問するから答えてくれたまえ」
「中佐があなたを保護するかどうか、まだ、決定を下していないのよ」
と、キラ少佐。
「少佐、席をはずしてもらいたい!」
「少佐?」と、ターナロス。
「ここで、連邦との連絡将校を務めているの。ベイジョーのために私な
りに戦っているつもりよ。また、あとで来るわ」
「なにを聞き出そうってんです?」と、ターナロス。
「君は、なぜ追われていたんだ?」
「生い立ちから話すことになりますよ」
「コーマのメンバーとして破壊活動を働いていたのか?」
「人も大勢殺してきた、捕まれば、死刑は、まぬがれないね」
「カーデシアはベイジョーから撤退したんだぞ」
「知ってるとも」
「なぜいつまでも、テロ行為を続けるんだ?」

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「うん、どうしてだかな、自分でもわからない。50年以上もさんざん
暴虐行為を働いてきた奴らに、復讐してやりたいと思っていたが、もう、
いやってほど殺したよ」
「すいませんが、休ませないと」と、ドクターベシア。
 
               ◇
 
 キラ少佐は、通信コンソールで、ロールマン提督に言った。
「提督、シスコ中佐は状況を短絡的にしかとらえていません。問題の複
雑さを理解していないんです」
「よく報告してくれました、感謝します、今後も、逐一報告してくださ
い」と、ロールマン提督。
「わかりました」
 
               ◇
 
 シスコ中佐は、司令部に戻った。
「中佐、カーデシアが到着しました」と、オブライエン。
「ダックス中尉がドッキング手続きで時間稼ぎをしていますので、まだ、
大丈夫です」

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「頼むぞ、連中に会う前に、もうすこしターナを調べたい」
「中佐、例のテロシストのことはよくわかりません。でも、カーデシア
と戦ったことがありますか?」
「いや」
「ベイジョー人の心情を、汲み取って、寛大な処置をお願いします。私
は、同情を」
 その時、コールサインが鳴った。
「ロールマン提督から亜空間通信が入ります」
「オフィスで受ける」と、シスコ中佐。
「ベンジャミン、あなたの補佐官のベイジョー人だけど、会議中に私を
呼び出して、テロシストの保護問題で、あなたへの不満をぶつけてきた
わよ。今のうちに善処すべきだわよね」
「ご忠告をどうも」
 
               ◇
 
 キラ少佐は、医療室に入った。
「うう」と、ターナロス。
「大丈夫、私よ」と、キラ少佐。
「こんなところで会うとは、奇妙なもんだな」

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「ともに戦った同志に再会できたなんて、嬉しいわ」
「連邦の制服を着ても、過去は忘れてないか?」
「もちろんよ」
「そうか、どうかな?大きな組織にいたら、昔の闘志なんかなくなって
しまったんじゃないか?」
「シスコ中佐に聞いてもらえばわかるわ」
「仲はいいのか?」
「水と油よ」
「ふふふん」
「疲れたわね、行くわよ」
「キラ、おれはカーデシアに渡されるのか?」
「死んでも私が守るわ」
「確かに、君は、昔のままだ」
 
               ◇
 
 カーデシア船の艦長は、シスコ中佐のオフィスに入った。
「いったいいつまで船を待たしておくつもりだ。これ以上、ドッキング
の手続きを引き伸ばすと、交通に支障をきたすことになるぞ」
「申し訳ないが、きみたちに攻撃を受けて、損傷した個所を直している。

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そのために、時間がかかっているんだ」
「謝罪を受け入れるが、そんな言い訳が通ると思うか?さっさと、ロス
を渡せ!」
「もう少し、時間が欲しい」
「引渡しの要求を受け入れねば、外交問題に発展するだろう。あの男は
残虐な犯罪を犯した危険人物だ」
「ダナー、戦争時の残虐行為は、お互いさまだ」
「奴を、野放しにすれば、今後テロ活動を行うのは、火を見るよりあき
らかだ」
「彼の話では、今ではコーマを脱退して、国家の再建を手伝う気でいる」
「殺戮と破壊の限りを尽くしてきた男だ、その罪の報いは受けさせねば
ならん、絶対に、あの男を生かしては、おけない」
「君たちの気持ちはよく理解できる。しかしだ。彼はベイジョーの英雄
だ。それを、連邦側があっさり引き渡したとなれば、私たちがここで築
きあげてきた協力体制は、一気に崩れる。つまり、申し訳ないが、とり
あえずは、保護を認めるしかない。彼の身柄は、ベイジョー政府に引き
渡す。納得がいかないと言うなら、私ではなく、政府に掛け合うんだな」
「うう」



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            2
 
 キラ少佐は、ターナロスを、用意しておいた室へ案内した。
「ちゃんとしたベッドで寝るのは、ひさしぶりでしょ?」とキラ少佐。
「ベッドなんてものがあるのも、忘れていたよ」と、ターナロス。
「ほんとによかった。あなたは、必要な人よ」
「おれの特殊技術が、連邦の役にたつとは思えない」
「ベイジョーが必要としているのよ。私のことを、連邦の一員になって
しまったと、思っているようだけど、誓って私は」
「君は、シスコの補佐官だろ?」
「そうよ、でも」
「どうころんでも、おれには絶対になれないよ」
「誰かが、臨時政府と連邦との折衝役をつとめないことには、始まらない
わ。少なくとも私がここへ残ったことで」
「なぜ、なぜ、連邦をここへおく?なんのために?その臨時政府とやら
は、連邦が牛耳ぎゅうじっているんだろ?それじゃ、戦ってきた意味がない。我
々が目指していたのは、完全な独立だ。同じじゃないか。カーデシアを
追い出して、連邦を入れただけにすぎない」
「ターナ、状況はすっかり変わったのよ。ワームホールを発見してから」
「また、それか!ワームホール!」

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「聞いて!私だって、あなた以上に不本意だけど、目的のために今のと
ころは連邦の力が必要なのよ。私たちだけでは、カーデシアは、また、
すぐにここへ舞い戻ってきてしまう、ワームホールも奪われるわ、あの
ワームホールにベイジョーの未来がかかっているのよ、交通と商業の中
心地となれば、たっぷりと富と権力が手に入るわ」
「欲しいのは、富と権力じゃない、ベイジョー人のための独立国家だ。
我々の国を取り戻したい」
「もう、取り戻してるわ。この先の目標は、連邦なんかに頼らなくても
国を守ることのできる力を持つことよ。これまで完全な独立を目指して
きたことを思えば、多少の抵抗はあるだろうけれど、あなたのような人
が先頭に立てば、きっと」
「洗脳されてるな。奴らに」
「ターナ、あなたを守るために必死で戦っているのよ。コーマからは抜
けたんでしょうね」
「ああ、信じろ、組織とは、きっぱり手を切ったよ」
「ふーん、あなたに特赦を与えてくれるよう、政府の高官数人に直訴じきそ
たの。他にもコーマを抜ける人がいるなら、掛け合うわ」
「何人かはいるだろうな、捕まらない保証があれば」
「私に、任せておいて、かならず約束を取り付ける」
 

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               ◇
 
 オドー保安主任は、プロムナードにいる部下に呼び出された。
「どうした?」と、オドー。
「実は、ちょっと、もめていまして」と、保安部員。
「到着したばかりのクリンゴン人ふたりが、どうしても、武器を渡さな
いんです」
「クリンゴンは絶対自分の武器を手放さない」と、クリンゴン女性。
「君たちの名は?」
「デュラス姉妹を知らないのか?ルーサとベトールだ」と、ルーサ。
「武器については、特別な規則がある。武器を渡すか、ステーションを
去るかだ。決めたまえ!ふたつにひとつだ」
「偉そうに!」と、ベトール。
「今すぐに、答えを聞きたい」
 ルーサとベトールは、しぶしぶ腰にさげたデフラクタを保安部員に渡
した。
「ようこそ、ディーエスナインへ」と、オドー。
「ふん!」
 
               ◇

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 オドーは、シスコ中佐のオフィスへ入った。
「非常に興味深い客が来ました。デュラスとかいうクリンゴン人の生意
気な姉妹です」と、オドー。
「ルーサとベトールだな」と、シスコ中佐。
「ご存知でしたか?」
「クリンゴンの最高評議会を支配しようとして、内戦を引き起こした連
中だ。その後、姿を消していたが」
「保安記録を調べました。クリンゴンの危険人物リストに載っていまし
たよ」
「再起のために資金稼ぎをしていると噂に聞いたが、何をしにここへ?」
「さあ、クワークの店にいますが、ギャンブルはしてませんね。ふん、
食事するでもなし、ただ、ずっと、座っています」
「不審だな」
「いっそのこと、捕まえてクリンゴンに突き出しては、いかがでしょう
か?」
「オドー!」
「最高評議会を敵にまわしているんでしょ?」
「ここで法を犯したわけじゃない、無実のものに手は出せない」
「カーデシアがここをおさめていた時なら、ああいう連中は、排除した」

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「目を離すな!」
「もちろんですよ、司令官」
 
               ◇
 
 ディーエスナインの夜、ガラックは、クワークの店にいた。
「飲んでるようですね、ガラックさん」と、ドクターベシアは言った。
「すいません、さんは抜きでしたよね、ガラックでゆきます」
「そう、呼び捨てで結構。掛けてください、どうか、お付き合いを」と、
ガラック。
「偵察中なんでしょ?お邪魔じゃないんですか?」
「まぁ、職業柄、どういう服がはやっているか、常に観察して把握しな
ければなりませんからね。クリンゴン人の装いのセンスには独特のもの
があります」
「ええ、ほんとに」
「興味深い。なかでも特に、あそこにいるふたりの服装は、研究してみ
る価値がありますね」
 ターナロスは、店の入り口に現われた。
「あの方は?」と、ガラック。
 ターナロスは、デュラス姉妹と店を出て、三人は倉庫へ入った。

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「さぁて、約束のものをもらおうか」と、ベトール。
「手配中だ」と、ターナロス。
「それでは、話が違うじゃないか!」
「カーデシアに追われたせいで、手に入れられなかったんだ」
「言い訳など聞きたくないね」
「金はどこにある?」と、ルーサ。
「あしたには、かならず届く」
「いいか、私たちをこんなところまで来させておいて、無駄足になった
ら、命はないと思え!」
 三人が去ると、ねずみに変身していたオドーが現われた。
 
               ◇
 
 キラ少佐は、司令部でシスコ中佐を出迎えた。
「ターナの件で、聴聞会を要請しました」と、キラ少佐。
「見通しは?」と、シスコ中佐。
「大臣ふたりと、大物閣僚ひとりの賛成票を取り付けたので、他のかた
も右へならうでしょう」
「そうか」
「それに、安全が保証されるのならば、ターナを追って、コーマを抜け

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るものがふたりはいるそうです」
「そうか」
「それと、もうひとつ、最初は中佐を疑って。すべて、中佐のお力添え
があったおかげです。心から感謝しています」
「ロールマン提督にも、ぜひ、そう報告してほしいね」
「中佐」
「知らないとでも思ったのか?信頼関係を大切にしたい」
 
               ◇
 
 シスコ中佐は、オフィスに入ると、オドーが待っていた。
「どうだ、オドー、デュラス姉妹に動きはあったか?」と、シスコ中佐。
「ここには、仲間がいるようです」と、オドー。
「仲間?」
「元コーマのメンバーが仲間のひとりです」
「ターナがつながりがあるのか?」
「なんらかの取引をしているらしく、支払いを迫られているようです。
金が届くのを待っています」
「コーマを抜けるふたりが運んでくるんだな?」
「なぜ、ご存知で?」

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「そのふたりのことは、キラ少佐に聞いた」
「少佐にも話しておきますか?」
「しばらく、待て!」
 
               ◇
 
 デュラス姉妹は、ガラックの店にやってきた。
「ここが、おまえのブティックか!」と、ルーサ。
「ようこそ、いらっしゃいました」と、ガラックは言った。
「最新のファッションをご紹介しましょう、クランス4号星のシルクの
ランジェリーなどいかがでしょうか?」
「調子に乗ってしゃべっていると、その舌を引っこ抜いてやるよ、はぁ
!」
「いやぁ、お手柔らかに!クリンゴンのお客様は、初めてなもので。で
は、どういったものをお探しなのでしょうか?」
「買い物にきたんじゃない、売りにきたんだ」と、ベトール。
「聞いた話だが、おまえはカーデシアの代表として、ここに残っている
んだろう?」と、ルーサ。
「とんでもない!私は、ただの、洋服屋にすぎませんよ」
「くだならない押し問答をしている暇はない!ターナロスの首を欲しく

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ないのか?」
「あの男をカーデシア当局に渡してくれるというんですか?」
「引き換えにいくらなら出す?」と、ベトール。
「ラチナムの延べ棒で払ってもらおう」と、ルーサ。
 ガラックは電子パッドに金額を打ち込んで見せた。
「ふん!バカにする気か!」
「おふたりとも、お待ちを!ここからが交渉でしょう?短気はいけませ
ん、私はいい交渉相手です。できるだけご希望に沿いますよ、とにかく、
腹を割っていきましょう」
 
               ◇
 
 ターナロスの室のチャイムが鳴った。
「どうぞ」と、ターナロス。キラ少佐が入ってきて、言った。
「四人目の票を取れたの。これで聴聞会は決まったわ。あなたは無事に
特赦を受けられるわよ」
「知らなかったよ、君はたいした政治家だな」と、ターナロス。
「私が?政治家だなんて、そんな、とんでもないわ!」
「まんまと、シスコや連邦をあやつって、政府の連中を動かしたじゃな
いか!」

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「騒いだだけだわ。あんまりうるさいから、連中が根負けしたのよ」
「あははは、我々の思惑どおりだ。今の君なら、奴らを説得できると思
っていた」
「我々というのは?私がいると知って、ここへきたのね?あなたを信じ
ていたのに」
「コーマは甘くない!ベイジョーの自由のために戦っているのだ。君も
昔は戦っていただろ?」
「今だって戦っているわ!」
「自分をごまかすのはよせ!連邦の連中は信じられないとか、臨時政府
はあてにならないと言っているが、その間で、おいしい役を演じている
じゃないか!」
「ひどすぎるわ!」
「図星だろ!キラ少佐!」
「私だって連邦には頼りたくない。でも、現状では」
「連中の与えた暖かなベッドに慣れたら、もう出られないさ。戦いの場
には戻れない!」
「それじゃ、私に連邦を裏切って、彼らを武力で追い出せって言うわけ
ね?」
「違う、流血沙汰はもうごめんだ。本当だ。おれはこの先、もう、誰も
傷つける気はない。だから、協力してくれ!」

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「私をだましてたくせに、よく言うわ。これ以上、利用されるのは、も
う、ごめんよ!」
「目的を果たすために、ワープできるシャトルが欲しい。君だけを頼っ
てここまで来たんだ」
「どういう計画か聞きたいわ」
「あと一歩で、一滴の血を流すことなく、ベイジョーにとって理想の独
立国家を築くことができるんだ」
「方法は?」
「ふふ、リスクが大きすぎる、これ以上話すことはできない」
「この私がシスコに、言うとでも、思ってるの?」
「その時に初めて、君の本心がわかる、そうだろ?」










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            3
 
 クワークの店で、ドクターベシアは、ターカリアンティーに口をつけ
た。
「やぁ、ガラック、元気かい?よかったら、こっちへ」と、ドクターベ
シア。
「誰かに見られている気がします」と、ガラック。
「スパイは、たいへんだな」
「人生には、はめをはずして楽しむ時と、用心して行動すべき時がある。
たとえば、今は、後者です。コーマのテロリストがふたり、ここへ来て
いる」
「テロリスト?なにをしに来たんだろう?」
「私にも、わかりません。目的を知りたければ、ふたりで組めば、きっ
と探りだせますよ」
「僕はドクターなんだよ、そんな」
「ドクター、彼らのねらいを突き止めてしまえば、絶対に、対策が立て
られるはずです」
「悪いんだけど、そろそろ、行かないと」
「待って、ドクター、そろそろ私のブティックに来ていただきたいです
な。今夜はどうです?20時55分に来ていただけませんか?あなたを

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生まれ変わらせるような、すばらしいスーツをお見せいたしますよ」
「スーツ?テロリストの話から、いきなりスーツの売り込みかい?」
「とにかく、ぜひともいらしてください。20時55分にに新しいスー
ツを用意してお待ちしております。いいですね?」
「ああ、わかったよ、それじゃ、ひとまず失礼するよ。スーツね」
 
               ◇
 
 シスコ中佐は、自分のオフィスから司令部に出てきた。
「少佐」と、シスコ中佐。
「なんでしょう?」と、キラ少佐。
「コーマを脱退してきたふたりに、なるべく早く会いたい」
「はい、すぐに手配を」
「ふたりの印象は?」
「というと?」
「ターナロスと同じくらいに、信用できる連中か?」
「もちろんです」
「シスコ中佐」と、ドクターベシアが言った。
「ぜひ、相談したいことが」
「ああ、何だ?」

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「例のカーデシア人の、ガラックですが、もう、とても、僕の手には負
えそうにありません」
「どうした?」
「スーツを売ると言うんです」
「スーツ?」
「20時55分に来いと」
「なぜ、妙な時間に呼ぶ?」
「わかりませんが、こちらに来ているテロリストと関係がありそうです。
ガラックは、ふたりで組んで、奴らの企みを探り出そうと言うんです。
何で、僕を誘うのかも、わかりませんよ」
「彼には、何か含むところがあって、そう言っているのかもしれない。
我々に共通の敵が存在することを、知らせたいんじゃないのか?」
「どうしたらいいでしょう?」
「私の意見だが、その新しいスーツを買いにゆくべきだ」
 
               ◇
 
 キラ少佐は、オドーの保安室へ入った。
「忙しい?」と、キラ少佐。
「何の、ご用でしょう?」と、オドー。

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「そのぉ、議会にターナたちを連れてゆく際の、警備体制は大丈夫?」
「ご心配なく、ちゃんとやっていますとも」
「そう?」
「ベイジョー人には、私どもには、とうていマネのできない、能力がひ
とつあります」
「それは?」
「うわべを作る、虚勢をはる能力です。本心を隠すことは、私には、非
常に難しい」
「私が、いつも、あなたに意見を求めるのは、そのせいよ。率直な意見
が聞ける。私の過去を知ってる?」
「かなり詳しく知っていますよ」
「誇りに思えないようなことも、してきたわ。ハルという基地を襲った
ことは、今も、夢に見てうなされる。でも、少なくとも、当時は、信念
を持って行動していたわ」
「それでは、今は、迷いがあるということですか?」
「私もあなたも、連邦の人間じゃない」
「というと?」
「私には、戦うべき相手がいるのに、自分を欺いて現状に甘んじている
のかもしれないわ」
「どうやら、苦しい選択を迫られているようですね。どちらを選びます

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?」
「どちらかを裏切ることになるわ」
「自分を裏切らない道を選ぶことです」
「とはいえ、ターナたち仲間を裏切ることはできない」
「仲間?彼らは、仲間ですか?」
「昔は、私もああだったわ」
「今はどうです?」
「協力、断ることもできるわ。無視すればいい」
「知ってますか?ドレニアン星のダチョウは、敵が来ると水に潜って姿
を隠す。それで、溺れ死ぬこともあります」
「ターナたちが、何をする気かわからないけど、やっぱり、隠れて、見
て見ぬふりをすることは、できないわ。ああ、本当の戦争の方が楽だっ
たような気がする」
「オドーから司令官」と、オドーは通信バッジに言った。
「なんだ?」と、シスコ中佐の声。
「今、この室にいる方からお話があるそうです」
 
               ◇
 
 ドクターベシアは、ガラックの店へ入った。

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「ドクター、遅いですよ、もう、20時57分です、さぁ、これを好き
なだけ、試着してください。ただし、くれぐれも、音はたてないように
願います」
「僕は、ただ」と、ドクターベシアは言いながら、試着室へ入った。
「時間どおり、21時少し前だ、いらっしゃい」と、ガラック。
 デュラス姉妹は、ガラックの店にやってきた。
「くだらん挨拶など必要ない」と、ルーサ。
「本気で取引する気はあるのか?」と、ベトール。
「確認のために、もう一度、聞かせてもらいたいのですが、支払いは、
例のベイジョー人の身柄と引き換えでいいんですね?」
「ターナロスとは、4時間後に取引することになっている」と、ベトー
ル。
「そちらの取引は、どんなものですか?」
「おまえには、関係ない」と、ルーサ。
「やはり、カーデシアの代表として、すべてを把握していませんとね。
関係はあるはずです」
「我々から奴に、ギリトリウムを売る予定だ」と、ベトール。
「ベイジョー8号星の衛星で、落ち合う約束になっている」と、ルーサ
は言った。
「そこで奴を引き渡す」

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 デュラス姉妹は、店を出て行った。
「ギリトリウムって?」と、ドクターベシア。
「ああ、非常に珍しい水晶元素で、強力なエネルギー源となるものです
が、利用するためには、反物質変換器がいります。ターナロスが、ここ
へ来る前に、カーデシアに追われていたのは、変換器のためです。盗ん
だんだ」
「じゃぁ、両方そろったら?」
「そう、おわかりでしょ?爆弾を手にいれたも同然、それも、特にすさ
まじい、破壊力を持つ爆弾です」

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 翌日、ドクターベシアは、司令部に来ていた。
「逮捕は無理だ、まだ、罪を犯したわけではない」と、シスコ中佐。
「共謀罪にあたります」と、オドー。
「なにを共謀したんです?ターナのねらいさえわからない」と、ドクタ
ーベシア。
「姉妹との取引が済んだら、爆発物の所持を理由に逮捕できますよ。あ
きらかな証拠もあります」と、オブライエン。
「そのとおりだわ、ターナを泳がせましょ」と、キラ少佐。

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「そうしよう」と、シスコ中佐。
「ターナと同行します」
「それは許さない」
「聞いてください。もしも、いっしょに行かなければ、ターナは何かあ
るのではと、警戒するはずです。安心させるには、私も行くしかない。
それに、ターナが失敗しても、コーマの連中は、あきらめません。少な
くとも、組織のねらいは探っておくべきです」
「オブライエン、私とふたりで、一足先にベイジョー8号星へ行って、
探知されないように、張り込もう」
「了解」と、オブライエン。
「ダックス、君は、カーデシアの動きを監視して、我々に連絡してくれ。
奴らはかならず来る」
「ターナと出発しろ、では、現地で」と、シスコ中佐は、キラ少佐に言
った。
 
               ◇
 
 オドーは、司令部の監視モニターで、キラ少佐とターナロスを監視し
ていた。
「ふたりはシャトルに乗りました」と、オドー。

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「了解」と、ダックス中尉は、言った。
「ディーエスナインから、ガンジー」
「何だ?」と、ガンジーの操縦室にいるシスコ中佐。
「ふたりは、スターゲイザーに乗り込み、発進準備にかかりました」
「了解した、大尉」と、シスコ中佐は答え、隣にいるオブライエンに指
示した。
「メインパワーシステムを停止!」
 ふたりのシャトルは、衛星の軌道上で停止した。
「ふぅ、静かですね」と、オブライエン。
 
               ◇
 
 キラ少佐は、ターナロスを乗せて、シャトルを操縦していた。
「ベイジョー8号星までの距離、残り12万キロ。通常エンジン。それ
は、何?」
「反物質変換器だ。この船のワープドライブからパワーを充電する」と、
ターナロス。
「真正面からクリンゴン船が姿を現したわ」
「大丈夫だ、会うことになっている」
「クリンゴンと?なぜ?」

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「今にわかるさ」
 
               ◇
 
 衛星軌道上のシスコ中佐のシャトル。
「クリンゴンが転送準備しています」と、オブライエン。
「発進の準備をしろ!」と、シスコ中佐。
 
               ◇
 
 キラ少佐のシャトルにデュラス姉妹が転送で現われた。
「約束どおり、延べ棒を持ってきた、13キロある」
「ほら、こっちもだ」と、ルーサは言って、ターナロスにギリトリウム
を渡した。
「エヒ、マッハ」と、ベトールが言うと、デュラス姉妹は転送で戻って
行った。
「それは何?」と、キラ少佐。
「独立の鍵だよ」と、ターナロスは言って、反物質変換器に戻って行っ
た。
 

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               ◇
 
 衛星軌道上のシスコ中佐のシャトル。
「クリンゴンが遮蔽して発進」と、オブライエン。
「コースセット!キラのシャトルに接近する」と、シスコ中佐。
「1分12秒後に至近距離です」
 
               ◇
 
 ディーエスナインの司令部。
「ディーエスナインからガンジー」と、ダックス中尉。
「どうした?」と、シスコ中佐の声。
「カーデシアの戦艦、アルドラが国境を越えました。スターゲイザーに
接近する模様。29秒後にベイジョーの領域に入ります」
「了解した」と、シスコ中佐は、ガンジーの操縦室で言った。
「スターゲイザーのセンサー域に入ります」と、オブライエン。
「なにごとだ?」と、ターナロスは、スターゲイザーの反物質変換器の
前で言った。
「別のシャトルよ」と、キラ少佐。
「我々を待ち伏せしていたんだな、なぜ、ばれた?」

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「カーデシアの戦艦も3分でやってくる。さっきのクリンゴンが売った
のよ」
「ワープエンジンで発進しろ!」
「無駄よ、逃げ切れないわ」
「手は、他にもある!」
 キラ少佐は、反物質変換器に向かったターナロスを止めようとして、
逆にフェーザーを持ったターナに捕まった。
「裏切ったな、ディーエスナインへ進路をとれ!」と、ターナロス。
「嫌よ!」
「従わなければ、ここで、爆弾を使うぞ。ベイジョー8号星の住人は全
員死ぬ」
「何千人もの仲間を犠牲にする気?」
「その命は、君がコーズをセットするかどうかにかかっているんだ」
 キラ少佐は、しぶしぶターナロスの命令に従った
「ワープします」と、オブライエンは、ガンジーの操縦室で言った。
「あとを追え!」と、シスコ中佐は言った。
「ガンジーからスターゲイザー。減速しろ!従わねば、攻撃する!繰り
返す。直ちに減速しなければ、攻撃を開始する!」
「部下が乗っているんだ、本気で撃ちやしないだろう」と、スターゲイ
ザーのターナロス。

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「しかし、万一に備えよう。よく聞け!こちらは、コーマだ。この船に
は、ギリトリウムを使った爆弾装置を積んでいる。攻撃すれば、それが
爆発するぞ」
「もしも、ワープ中に爆発すれば、放射能汚染が広範囲に広がります」
と、ガンジーのオブライエン。
「奴は、ステーションに戻るつもりだ」と、シスコ中佐。
「こちらは、連邦のシャトル、ガンジーだ。カーデシア軍、応答せよ」
「中佐、やっと我々と手を組む気になったか」と、ガルダナー。
「ガルダナー、ターナはスターゲイザーというシャトルに強力な爆発物
を積んでいる。ディーエスナインへ向かうのを阻止できないか?」
「ここからシャトルまで、2分14秒はかかる」
「それでは、1分遅れます」と、オブライエン。
「いい機会だから、おまえたちにひとつ警告しておこう」
 シスコ中佐は、通信を切った。
「トラクタービームで引き付けられないか?」
「それは無理です。向こうは27秒先行しています。撃墜するしかない
でしょう」
「光子魚雷を準備しろ!スターゲイザーが減速したら発射する」
「了解」
 2隻は、ワープスピードでディーエスナインに向かった。

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「ディーエスナインまで1万キロに接近」と、スターゲイザーのキラ少
佐。
「一滴の血も流さず解決するですって?ステーションにも何百人という
ベイジョー人が住んでいるのよ」
「このおれを信じることだ」と、ターナロス。
「は、は」
「コースを変更しろ!これから、ワームホールの入り口に向かうぞ」
「ワームホール?標的は、ステーションじゃないのね?あんな装置でワ
ームホールを爆破できるとでも思っているの?」
「爆破する気などない。入り口を潰すだけだ」
「は、そんなことしてもベイジョーのためにならないわ」
「ワームホールが消えれば、連邦もカーデシアも引き上げる。違うか?
進路を変更しろ!早く!」
 キラ少佐は、シャトルを方向変換した。
「ワームホールへ突入する気だ、振り切られます」と、ガンジーのオブ
ライエン。
 スターゲイザーは、ワームホールへ突入した。キラ少佐は、ターナロ
スに飛びかかり、ギリトリウムを発射を阻止しようとした。スターゲイ
ザーは、ワームホールを抜け、ガンマ宇宙域へ出てから、ギリトリウム
は発射された。

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 スターゲイザーは、停止したが、ギリトリウムは、青い閃光を発して
爆発した。そこへガンジーが追いついて停止した。
「覚悟しろ」と、ターナロスは、フェーザーをキラ少佐に突きつけた。
「こちらシスコ。キラ少佐、無事か?」
「キラの命は、おれにかかっている。無事に帰したいなら、おれの言う
とおりにしろ!」
「いいか、よく聞け、ターナ!」と、シスコ中佐は言った。
「今すぐ、私に降伏しろ!もうすぐカーデシアの戦艦が来る。今度は、
おまえを助けてはやらんぞ。いいんだな?」
 ターナロスは、あきらめて、キラ少佐に、フェーザーを渡した。
「中佐、ターナは降伏しました」と、キラ少佐。










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            エピローグ
 
 ターナロスは、ディーエスナインに戻ったところで、オドーに逮捕さ
れた。
「ターナ、独立を手にいれるなら、別のやり方をとるべきよ。状況が変
わったの。いつか、あなたにも、わかるわ」と、キラ少佐。
「裏切り者!」と、ターナロスは言って、連行されていった
 キラ少佐は、シスコ中佐と目を合わせたが、ふたりは何も言わずに、
通路を戻っていった。
 
 
 
                    (第一_一_二話 終わり)








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