死の手紙
	            原作:フレドリックブラウン
	            アランフィールド
	             
	            プロローグ
	             
	 ラバティは、あいていたフランス窓から侵入すると、静かにカーペッ
	トを横切り、机に向かって仕事している白髪の男性の背後に立った。
	「ハロー、コングレスマン?」と、ラバティ。
	 コングレスマンクインは振り返った。そして、ラバティが銃口を向け
	ている拳銃を見て、震えながら立ち上がった。
	「ラバティ」と、コングレスマン。「バカなことはやめろ!」
	 ラバティは、ニタリとした。「いつかこうなるって言っただろ?4年
	待ったんだ。今は、もう安全さ」
 
	 
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	「逃げ切ることはできないよ、ラバティ!私は手紙を託してある。私に
	なにかあったら投函することになってる」
	 ラバティは、笑った。「ウソを言うんじゃない、クイン!そんな手紙
	なんて書けやしない。もしもオレの動機を説明しようとしたら、おまえ
	自身の罪を認めることになるからな。なぜおまえはオレを訴えて裁判に
	かけようとしない?そうしないのは、真実が明らかになったら、おまえ
	の名前は永遠に地に堕ちることになるからさ」
	 ラバティは、引き金を6回引いた。
	 
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	 ラバティは、車に戻り、運転して帰る途中、橋の上から拳銃を捨て、
	アパートに帰るとすぐ寝室へ行った。
	 よく眠っていたが、ドアベルで起こされた。バスローブを引っ掛けて、
	玄関のドアをあけた。
	 彼の心臓は立ったまま止まり、そのままだった。
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	 ラバティのドアベルを鳴らした男は、驚いてショックを受けたが、正
	しいことをした。ラバティの体をアパートの中に運び、警察と救急車に
	電話して待った。
	 救急隊員は、ラバティが死んでることを確認し、男は警部補に質問さ
	れた。
	「きみの名前は?」と、警部補。
	「バブコック、ヘンリーバブコックです。ミスターラバティに、手紙を
	手渡すよう頼まれてました。この手紙です」
	 警部補は、手紙を受け取り、一瞬ためらったがすぐにあけた。
	「なぜ、ただの黒い紙なのかね?」と、警部補。
	「分かりません、警部補」と、バブコック。「私のボスのコングレスマ
	ンクインから、すいぶん前に手紙を渡されました。そして、もしもコン
	グレスマンクインになにか普通でないことが起こったら、すぐに手紙を
	ラバティに手渡すように言われました。それで、ラジオの知らせを聞い
	て━━━」
	「ああ、知ってる。クインは昨夜遅くに殺された。きみはクインの下で、
	どんな仕事をしていたのかね?」
	            エピローグ
	 
	「それは、極秘ですが、今となっては、極秘でもないでしょうね。私は、
	ボスの代わりに、重要でないスピーチやボスが出たくない会合に出てい
	ました。そうです、警部補。私は、ボスの影武者です」
	 
	 
	 
	                            (終わり)