暗黒の地球帝国
               マイクサスマン、マニーコト
                
            プロローグ
             
 ━━━モンタナ州、ボーズマン。2063年4月5日。
 歴史的な、宇宙人とのファーストコンタクト。
 バルカン星からの使者を乗せた宇宙船が、森の中でテントを張って暮
らす人々の前に、今、着陸しようとしていた。赤味がかった、三叉みつまたの橋
脚から、ドアがあくと、マントを着たバルカン人が出てきた。
 毛皮を着た村長が進み出ると、バルカン人は、向き合い、マントの頭
のおおいを取った。耳はとんがっていて、人々は、息をのんだ。
「長寿と繁栄を」と、バルカン人。右手をあげて、指を奇妙に開いた。
 村長は、右手をあげて、指を開こうとしたが、できずにあきらめた。
かわりに、懐かふところら、長身のライフル銃をぬき、バルカン人を撃った。
「船に乗り込め!」と、別の男性。銃をぬいて、叫んだ。
「かたっぱしから、かっさらうんだ!」
 人々は、銃を乱射しながら、バルカン船の中へ、なだれこんでいった。



 

2

1





「人類の歴史は、戦争の歴史だった」と、ナレーター。
「人類は、宇宙に進出し、宇宙戦争を引き起こした」
 帆船の側面で、火をふく大砲。
 複葉機から発射される銃弾。煙を上げて、落下する戦闘機。
 戦車とともに進軍する歩兵。上空に戦闘機。
 勇壮な音楽のなか、整列して行軍する兵士たち。
 地球にナイフのささった、地球帝国の紋章。
 砲兵隊が、つぎつぎに、大砲を発射。炎を吐く火炎放射器。低空飛行
の戦闘機。
 水爆実験、空母に着艦する戦闘機。魚雷発射の海中の潜水艦。魚雷命
中の別の潜水艦。進軍する戦車。ミサイルで撃墜された戦闘機。多量の
爆弾投下の爆撃機。
 ロケットが発射。月で飛行士に掲げられた、地球帝国の国旗。
 宇宙で分離される核弾頭。
 エンタープライズが宇宙から、つぎつぎに敵の都市を爆撃し、放たれ
た爆弾で破壊されたビル群。何台ものエンタープライズが、多くの敵の
宇宙船を攻撃。
 そして、宇宙に君臨する、地球にナイフのささった、地球帝国の紋章。
 


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「航星日誌、2155年1月13日」と、エンタープライズ船長。「コ
リアンステーションをち、急襲部隊との合流ポイントを目指す」
 エンタープライズは、宇宙を航行していた。
「リード少佐とドクターが、最新プロジュクトのお披露目ひ ろ めをするそうだ」
 
               ◇
 
 医療室。
 拷問ブースの中で、豚の鼻をした、異星人が、悲鳴を上げ、苦痛に顔
をゆがめていた。
「このブースは、従来の拷問ブースより、はるかに、効果的です」と、
リード少佐。
「いかなる人種の、神経中枢も、刺激できる」と、ドクター。「シナプ
スをスキャンし、その都度つ ど、対応します」
「これが、画期かっき的だそうです」と、副長。
「昔でいうところの」と、船長。「ムチ打ちと同じだ!」
「ムチとは、違うから、画期かっき的だといっているのです」と、リード少佐。
「従来の拷問方法では、神経組織がマヒし、時間がたつと、なにも感じ

6

5





なくなる」
「この装置は、刺激する神経群を変えてゆくんです」と、ドクター。
「拷問の対象者が、永遠に、苦痛から逃れられないようにね」
 拷問ブースの中で、苦しむ、異星人。
「個人的趣味も、入っているんじゃないか?」と、船長。
「ミスターテレブは、何をしたんだ?」と、副長。
「知りません」と、リード少佐。「仕事に遅れたか、なにかでは?テラ
ライト人というだけで、つみだが」
 船長は、なにも言わずに、医療室を出ていった。
 
               ◇
 
 船長と副長は、通路を歩いていた。通路両脇に直立する護衛兵士は、
ふたりが正面に来ると、つぎつぎに、腕をのばす敬礼をした。
「私の提案書を、ご覧に?」と、副長。
「ああ、読んだ」と、船長。
「それで?」
「命令通り、部隊と合流する。出所不明のデータをあてにして、ソリア
ン領にゆくことなどできん!われわれの任務は、反乱軍の鎮圧だ。ソリ
アンにゆく気はない」

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「データを見たでしょう?」副長は、立ち止まった。「あのテクノロジ
ーを手に入れさえすれば、反乱を鎮圧できます」
「きみにとっては、大きなチャンスだな」船長も、立ち止まって、副長
に向き合った。
「船長!」
「その船を持ち帰れば、ヒーローになれる。帝国からは、勲章をさずけ
られ、船を一隻任せられるかもしれん」
「私は、帝国を救いたいだけです」
「ふん。持ち場に戻りたまえ!」船長は、また、歩きはじめた。
「船長!あなたは、間違っている!」
 船長は、戻ってきて、副長の耳もとで言った。
「すぐに、ブリッジに戻るか、あのテラライトと代わるか、好きに選べ
!」
「戻ります」副長は、しぶしぶ言った。船長は、歩いていった。
 
               ◇
 
 船長室。船長が、自分の机の上の画面を見ていた。
「なにしてるの?」と、ホシサトウ。黒の室着姿で、入ってきた。
「報告書の見直しだ」と、船長。

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「ここは、あなたのお城じゃなかった?仕事なんか、全部忘れて、ゲー
ムを楽しむ場所でしょ?」
 窓からは、直線状に流れる、恒星の光が見えた。ホシサトウは、画面
を消した。
「私を屈服させられるのは、この船と、きみだけだよ」と、船長。
「あなたの背中を、ナイフで刺す気がないのも、わたしだけよ」と、ホ
シサトウ。「タウセティでは、勝利したそうね」
「盗聴したのか?」
「うん、戦争はもうすぐ終わるそうだから、ブラジルに戻って、また、
教師をやるわ。あなたは、ホームで、ゆっくり、デスク業務をこなし、
週末には、わたしとゲームをするの」
「ただの、プロパガンダだ」船長は、座って、ウイスキーを飲んだ。
「タウセティの戦況は、よくない。大苦戦だ。12隻、失った。誰にも、
言うなよ!クルーが真実を知れば━━━」
「そんな話は、もう、よして!次のゲームでは、やっつけるから━━━」
 
               ◇
 
 宇宙を航行する、エンタープライズ。
 船長が、護衛と、通路を歩いてきて、地球帝国の紋章のある、エレベ

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ータの前で、立ち止まった。
 護衛が、先に立って、エレベータをあけると、中から、フェーザーを
構えた、リード少佐と、女性兵士が現れた。兵士が、フェーザーを発射
した。護衛が倒れ、船長は、銃を抜こうとした。
「動くな!」通路から、副長が銃を構えて現れた。船長は、銃を兵士に
渡した。
「絞首刑だな」と、船長。
「拘束室へ」と、副長。
「いえ、貨物室で片付けます」と、リード少佐。「音も立てず、一瞬で
━━━無事に、拘束室まで、たどれ着けるかどうか」
 リード少佐が、船長をフェーザーでこづくと、副長が、リード少佐に
体当たりして、通路の壁に押さえつけ、顔に銃を押し当てた。
「フォレストになにかあれば、オレがおまえを撃つ!分かったか、少佐
?」
「よく分かりました」リード少佐は、フォレスト船長を、連行していっ
た。
 
               ◇
 
 エンタープライズのブリッジ。

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 トゥポル少佐が、船長席についていた。
 ドアがあき、軍曹と女性兵士に護衛された、副長が現れた。トゥポル
は、立ち上がった。
「動くな、少佐」と、副長。
「フォレスト船長は?」と、トゥポル。副長は、黙ったままだった。
「保安部に連絡!」と、部下に。
 副長は、目で合図した。軍曹は、部下をフェーザーで狙撃した。
「こちらは、副長のアーチャーだ」副長は、船長席のスイッチを押して、
エンタープライズ中にアナウンスした。「本日、宇宙艦隊の命令により、
フォレスト船長を、エンタープライズの指揮官から解任した」
 ホシサトウは、アーチャーの艦内放送を、不信そうに聞いていた。
 医療室のドクターは、宇宙生物の解剖の手を止めた。
「われわれは、帝国を救う、重要任務のため、ソリア領へ向かえ、とい
めいを受けた。任務の詳細を、言うことは、できん」
 機関室のトリップタッカーは、片目を負傷していた。
「だが、これだけは言える。もし、われわれが、成功すれば、帝国は、
反乱軍の息の根を止められる。永遠にだ。2度と艦隊のクルーを、戦場
に送らずにすむ」
 ブリッジで演説する、アーチャー。
「私は、諸君を信じている。かならず、この任務に死力を尽くすと。誰

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にも、勝利への行進をじゃまさせやしない!」
 アーチャーは、胸においた右手を伸ばす、帝国の敬礼をした。
「帝国よ、永遠なれ!」
 ブリッジにいた、全員も、アーチャーの敬礼にあわせて、敬礼した。
「帝国よ、永遠なれ!」
 アーチャーは、一同の忠誠に、うなづいた。
「艦隊司令部から、そのような指令は、届いていませんが」と、トゥポ
ル。アーチャーの耳元で。トゥポルは、技術ブースに移った。
「私個人に、届いた」と、アーチャー。
「記録を見せてください」と、トゥポル。
「そのうちにな」そして、ブリッジの全員に指示した。「進路を変える。
215、マーク13.ワープ最大」
「了解」と、パイロット席にいる仕官。
「伍長」と、アーチャーは、女性兵士に命じた。「トゥポルを、第2貨
物室へ!」そして、トゥポルに。「スリバンの遮蔽しゃへい装置がある。機関室
に運び、トリップとインストールしろ!」
 トゥポルは、じっとしていた。
「この任務を成功させるためには、遮蔽装置がいる」
 トゥポルは、女性兵士に護衛されて、出て行った。
 アーチャーは、ブリッジを見渡してから、船長席にゆっくり座った。

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            2
 
 宇宙を航行する、エンタープライズ。
「航星日誌」と、アーチャー。「船長、ジョナサンアーチャー。クルー
は、なんの混乱もなく、命令に従った。機関主任、タッカーによれば、
6時間後には、遮蔽が可能になるという」
 副長室。アーチャーは、ライフル銃を見ていた。
「どうやら、命令は本当らしいですね」と、トゥポル。
「らしい?」と、アーチャー。「きみは、私に忠実でなければ、ならぬ。
そう言えるか?」
「指揮官は、あなたです」
「それが、分かっているならいい」そして、ライフル銃をトゥポルに見
せた。
「誰のか分かるか?ゼフレヌコクレーンだ。最初に地球に降り立った、
バルカン人を、これで殺した。彼が、きみらの侵略に無抵抗だったら、
歴史は、どう変わっていただろう?奴隷になっていたのは、地球人の方
かもしれん」
「わたしは、奴隷ではない!」
「忘れるな。おまえは、バルカン人だ!」
 アーチャーは、話題を変えた。

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「いつごろ、ソリア領に入る?」
「すでに、入っていると考えます。彼らは、領域外の星系を、しばしば、
勝手に併合へいごうしますから」
「ワープサインは、分かっている」と、アーチャー。トゥポルに、ディ
スクを渡した。「見つけたら、知らせてくれ!」
「いない可能性の方が」
「いや、いる!きみを、副長に昇格させよう!」
「しかし、順番でゆけば、リード少佐が」
「彼は、有能な兵士だが、従順さに欠けている。それに、野心を持って
いる男だ」
「あなたは、バルカン人を認めていないはずです」
「きみらに対する、オレなりの、礼の言い方だと、思ってくれ。きみら
の能力がなければ、今ある帝国は、なかった。下がってよし!」
 トゥポルは、出ていった。アーチャーは、ライフル銃を大切そうに、
武器コレクションの壁に戻した。
 
               ◇
 
 宇宙を航行する、エンタープライズ。
 副長室。

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「私の護衛として、特権を与える」と、アーチャー。直立している、軍
曹に。「室にも、食事にも、きみは、私だけに従え!いいな!」
「分かりました」と、軍曹。「船長、よろしいでしょうか?見事な戦術
に対して、改めて、祝意しゅくい表しひょうます。私は、きっと、こんな日が来ると
思って━━━」
「仕事に戻れ、軍曹!よけいな口は、きくな!」
 足元で、黒い大きなドーベルマンがうなった。
「ポートスなら、こわくない。腹が減ってるだけだ」
 副長室のチャイムが鳴った。
「入れ!」と、アーチャー。
 ホシサトウが、兵士に護衛されて、入ってきた。
「以上だ」と、アーチャー。軍曹は、敬礼して、護衛の兵士と共に出て
いった。
「艦隊から通信なんて、入ってないわ」と、ホシサトウ。
 アーチャーは、犬をなだめて、すわらせた。
「フフ、もしかして、反乱?そんな度胸が、あったの?」
「それは、ほめているのか?」と、アーチャー。
「フォレスト船長は?」
「無事だ」
「エアロックからほうりだしてない、という保証は、どこにもないわ」

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 アーチャーは、机の上の画面に、拘束室の映像を出した。フォレスト
が、窓枠に手を置いていた。
「話をさせて!」
「今は、だめだ」アーチャーは、画面を切り替えた。「きみが、めんど
うを起こさん限り、殺さんよ。艦隊に、助けなんて求めるな!私には、
きみの、技能が必要だ」
「技能だけかしら?わたしの料理の腕の方は?」
「きみは、目の前にあった、昇進のチャンスをつかんだだけだ」
「あなたのようにね。最初から、あなたが船長になるべきだったのよ、
そうでしょう?もし、提督たちが、裏で結託するようなことがなければ、
エンタープライズは、あなたのものだった。前任者のものは、なんでも、
後任者のものになるって、伝統があるんじゃない?」
「伝統には、さからわん」と、アーチャー。
 ホシサトウは、背中からナイフを出して、アーチャーを刺そうとした。
「トゥポルより、アーチャー船長!」と、通信。
「オレたちには、割り切った関係が、お似合いかもしれん」アーチャー
は、ホシサトウの手から、ナイフを奪い取って、ホシサトウを押しのけ
た。
「アーチャー船長、応答願います!」
「どうした?」

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「ワープサインが、接近中です」
「すぐにゆく」アーチャーは、通信を切った。そして、ホシサトウに。
「戻った時は、へたな考えは、捨ててろ!」
 
               ◇
 
 エンタープライズは、ワープから通常空間に戻った。
 ブリッジ。軍曹に護衛されて、アーチャーが入ってきた。
「船長がお越しだ!」と、リード少佐。
「目標に接近中」と、トゥポル。船長席を立った。「2万キロメートル」
「生体反応、1名、ソリア人です」と、リード少佐。
「トラックエミッター起動!」と、アーチャー。
「こちらを、確認。武器を装填してます」
 軽い衝撃が走った。
「無力化しろ!」と、アーチャー。「パイロット捕獲!」
 エンタープライズは、逃げるソリアン船に、フェーザー砲を浴びせた。
「命中!」と、リード少佐。
「リアクターが、オーバーロードしています」と、トゥポル。
「少佐!」と、アーチャー。
「私はしていません!」と、リード少佐。「武器をねらっただけです」

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「おそらく、パイロットが自爆しようとしているのでしょう」と、トゥ
ポル。
「パイロットをロックして、汚染除去室に転送!」と、アーチャー。
「船長!」と、リード少佐。スクリーンに、ソリアン船の爆発が、映っ
た。
「転送完了!」と、トゥポル。
 アーチャーは、やっと、船長席についた。
「アーチャーより、医療室。ソリア人を転送した。汚染除去室を調整し
ろ!」
 医療室。ドクターは、解剖を中断して、通信に答えた。
「時間がかかります。ソリア人の生命維持条件は、非常に厳しい。温度
を、480ケルビンに上げます」
 汚染除去室のソリア人のかん高い声が聞こえた。
「ご機嫌、ななめか?」と、ドクター。「ふん、ま、待ってろ」
 ドクターは、笑顔になった。
 





30

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            3
 
 アーチャーは、軍曹とトゥポルとともに、汚染除去室に向かった。
 汚染除去室のモニターを、ドクターが見ていた。リード少佐と、制服
姿のホシサトウも、いっしょだった。
「彼は?」と、アーチャー。
「彼とは、限定しない方がいいでしょう」と、ドクター。「ソリア人は、
両性の特性を備えていますから。生体反応らしきものは、安定していま
す」
「言葉は、分かるか?」と、アーチャー。翻訳機を手にした、ホシサト
ウに。
 ホシサトウは、うなづいた。
 アーチャーは、モニターの音声をオンにして、汚染除去室をのぞいた。
ソリア人の姿がなかった。しばらくして、いきなり、クリスタルカマキ
リのような姿を見せた。
「船長のアーチャーだ」アーチャーは、ソリア人に命令した。「おまえ
は、地球の旗艦きかん、エンタープライズ号にいる。質問に答えなければ、苦
痛を味わうことになる」
 ソリア人は、あしを動かして、かん高い声を出した。
「ただ、解放を要求しています」と、ホシサトウ。

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「ふん」と、アーチャー。「おまえが拿捕だ ほした地球船は、今、どこにあ
るのか、答えろ!」
 ソリア人は、また、かん高い声を出した。
「仲間がおまえの船を捜し出し、破壊するだろう」ホシサトウは、翻訳
機を読み上げた。
「生命維持装置を、微調整すれば、協力的になるんでは?」と、ドクタ
ー。「温度を50度、下げてみます」
 ソリア人は、苦しみ出した。
「オレが質問したことに、答えろ!」と、アーチャー。
 ソリア人が、短く、声を出した。
「これは、おそらく」と、ホシサトウ。「侮辱ぶじょくの一種かと」
「もう、50度、下げてくれ!」と、アーチャー。
「外骨格が、くだけ始めたようです」と、ドクター。
「分かった、答える」と、ホシサトウ。
 アーチャーは、温度を戻すように、指で合図した。
「つづけろ!」と、アーチャー。ソリア人に。
「船は、ヴィンターク星系にある」と、ホシサトウ。「ガス巨星の軌道
上にある施設だ」
 ソリア人は、さらに、かん高い声を出し始めた。
「これは、なんだ?」と、アーチャー。トゥポルに。

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「短距離通信です」と、トゥポル。
「救難信号か?」と、リード少佐。「中に通信機は、ないぞ!」
「結晶体の体が、通信機の役割を」と、トゥポル。
「船長、ただちに、宇宙に放り出すことを、おすすめします」と、リー
ド少佐。
「だめだ」と、アーチャー。「さっきの言葉が事実か確かめるために、
拘束を続ける」そして、ドクターに。「なんとか、こいつを黙らせる方
法を考えろ!」
「分かりました」と、ドクター。
 アーチャーとトゥポルは、戻っていった。
 
               ◇
 
 機関室。
 トゥポルとタッカーは、遮蔽装置を調整していた。
「なにか、忘れてないか?」と、タッカー。「ヒッグス!少佐に、放射
線メータを」
 機関士のヒッグスは、器具を取り出して、トゥポルに手渡した。
「オレみたいになりたいのか?デルタ線を浴びすぎて、孫の代まで、後
遺症に悩まされる」

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 タッカーの右目は、ひどく負傷していて、ほとんどふさがれていた。
「フラックス連結器」と、トゥポル。
 タッカーは、工具を壁から持ってきた。
「ワープリアクターのそばにいると、毎年、10年単位で寿命が縮まる
らしい。でも、どうやら、オレの寿命は、週末までだ」
「アーチャー船長に、昇進させてもらったら?」
「あんた、副長だろ。代わりに、進言しんげんしてくれ」
「なぜ、そんな必要が?」
「恩を忘れたか?」
「それは、禁句のはずじゃない?」
「今までは、な」
「なにが恩よ!自分だって、腹いっぱい食べてたくせに!」
「たっぷり、食わせてもらったよ━━━それで、次の晩餐まポンファーで、あと、
何年待てばいいんだ?」
 ケーブルを伝って、異常な音がした。
「おい、この音は、なんだ?」と、タッカー。異様な光が、ケーブルを
走った。「コンバーターだ!」
 タッカーは、コンバーターの爆発で吹き飛ばされた。
 
               ◇

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 機関室。
 ドクターが、タッカーの右手の甲の火傷やけどを治療していた。
「遮蔽装置は、直るのか?」と、アーチャー。
「1日は、かかります」と、タッカー。
「6時間で、直せ!」
「何十という、EPSがある中で、オーバーロードしたのは、ただ、ひ
とつ」と、リード少佐。「遮蔽装置につながる、EPSだけです」
「他のシステムにも、被害が出ています」と、タッカー。「内部センサ
ーも、Gデッキの重力プレートも、ダウンしていて━━━」
「遮蔽装置が最優先だ!」と、アーチャー。そして、リード少佐に。
「責任の所在が、だれにあるのか、すぐに、突き止めろ!」
「調査なら、部下にさせます」と、タッカー。「部外者に、うろうろさ
れちゃあ、仕事の邪魔になる!」
「遮蔽装置を直せ!」
 アーチャーは、機関室を出ていった。
 
               ◇
 
 フォレストのいる拘束室。

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 アーチャーが入ってきて、スピーカーをオンにした。
「誰が遮蔽装置を、壊した?」
「なにか、あったのか?」と、フォレスト。
「ブラック提督が、スパイを送りこんでいるんだろ?名前を言え!」
「ほんとうに、提督が、この私の船に、スパイを乗せているなら、誰か
聞きたいのは、こっちだ」
「フォレストの室へゆき、個人ファイルを調べろ!」と、アーチャー。
護衛の軍曹に。「艦隊から、通信がないか」
「従えば、共謀者として」と、フォレスト。軍曹に。「おまえも、死刑
にされるぞ!」
 軍曹は、フォレストから、アーチャーに視線を移した。
「了解です。船長」軍曹は、拘束室から、出て行った。
「らしくないな、ジョナサン」と、フォレスト。「きみは、権力には、
無欲だったはずだ。だから、私は、きみを信頼し、そばに、置いてきた。
野心とは、無縁だと、思っていたからな」
 アーチャーは、鉄格子をあけて、フォレストの背後から、殴りかかっ
た。
「ああ、そうだ!なんで、ここにいるのか、分かっているんだな?」
 アーチャーは、背後から、フォレストの首を締め上げた。
「離してくれ!」と、フォレスト。「そうすれば、死刑の時には、苦し

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まずに、死なせてやる!提督は、そんなやわな殺し方は、せんだろ?」
 アーチャーは、腰から短剣を抜いて、フォレストの首に押し当てた。
「殺せ!」と、フォレスト。「この報いは、かならず、来る!」
 アーチャーは、無言のまま、フォレストから離れ、鉄格子を閉めて、
拘束室を出て行った。
 
               ◇
 
 会議室。
「犯人は、このジャンクションに侵入し、故意に、このEPSをオーバ
ーロードさせました」と、リード少佐。モニターを見ながら、アーチャ
ーに報告した。
「立ち入り禁止区域だぞ!」と、アーチャー。
「進入者警報が、解除に」
「どうやって?」
「可能は方法は、ひとつ。点検用のスキャン中には、解除されます。タ
ッカー少佐は、オーバーロードの30分前に、スキャンを開始していま
す」
 
               ◇

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 医療室。
「ウウウ、ウウウウウ」と、タッカー。
 拷問ブースの中で、タッカーが拷問を受けていた。
「破壊工作を命じたのは、だれだ?」と、アーチャー。
「オレは、無実だ!」と、タッカー。
 リード少佐は、拷問の強度を上げた。
「ウウウ、ウウウウウ」と、タッカー。「リード!ここを出たら、きさ
まを殺してやる!」
「できるものならな!」と、リード少佐。
「おまえは、ブラック提督から」と、アーチャー。「ここの機関主任に
命じられている。フォレストの部下をはじいての、抜擢ばってきだ。おまえは、
提督のスパイだろ?目的は、なんだ?」
「船長。すべて、誤解です!」
 リード少佐は、さらに、拷問の強度を上げた。
「ウウウ、ウウウウウ」と、タッカー。「オレは、やってない」
「なにを、命じられた?」
「分かってください!あなたを裏切ったことは、ありません!」
「続けろ!」
「ウウウ、ウウウウウ、ウウウ━━━」

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 アーチャーは、医療室を出ていった。
 
               ◇
 
 宇宙を航行する、エンタープライズ。
 副長室。
 アーチャーとホシサトウは、デノビュラ風パイを、堪能たんのうした。
「こんなパイ、初めて!」と、ホシサトウ。「すごく、おいしかったわ
━━━もう、キャビアなんて、どうでもいい」
「オレが渡したデータは」と、アーチャー。「もう、元帥に、送信した
か?」
「したわよ。中味は?」
「万一の保険だ」
 アーチャーは、なにかを思いついて、立ち上がった。
「どうしたの?」と、ホシサトウ。
「タッカーは、有能な機関士だ。遮蔽装置を破壊したいなら、もっと、
うまくやる」
「トゥポルがいたから、思うようにできなかったんじゃない?」
 アーチャーは、それを聞いて、デスクまで行って、スクリーンのスイ
ッチを入れた。

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47





「コンピュータ、トゥポル少佐の居場所は?」
「返答不能。内部センサー、オフライン!」と、コンピュータ。
「センサーを切るのが、目的だったのか!」
「どうしたの?」と、ホシサトウ。
「そこにいろ!」
 アーチャーは、棚から銃を取り出して、室を出て行った。
 
               ◇
 
 トゥポルは、2名のバルカン人仕官を従えて、拘束室に向かった。
 拘束室のドアがあくと、2名の衛兵は、身構えた。すぐに、手榴弾がしゅりゅうだん
投げ込まれ、衛兵は、吹っ飛ばされた。トゥポルは、銃を構えて入って
きた。フォレストは、トゥポルに気づいて、鉄格子のところまで出てき
た。
 アーチャーは、護衛と、拘束室までくると、バルカン人仕官の銃撃を
受けて、身をかわし、エレベータに退却した。
 トゥポルは、拘束室の鉄格子をあけ、フォレストに銃を手渡した。
「来るのが、遅いぞ!」と、フォレスト。
「助けを、つのっていたんです」と、トゥポル。
「警報は?」

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49





「内部センサーを、切ってあります。通信システムも」
「まずは、ブリッジの奪還だっかんだ」
 フォレストとトゥポルは、護衛とともに、ブリッジに向かった。
 
               ◇
 
 ブリッジでは、交代要員の仕官たちが、船の運航を監視していた。
 フォレストとトゥポルたちの攻撃で、あっさり、ブリッジは制圧され
た。
 トゥポルは、すぐに、パイロット席についた。
「ソリア領から、脱出しろ」と、フォレスト。「ワープ最大!」
 パイロット席の警報が、鳴った。
「進路変更できません」と、トゥポル。
「では、停止だ!」
 パイロット席の警報が、また、鳴った。
「まったく、応答しません」
 ブリッジのドアがあき、両手をあげた、アーチャーが立っていた。
「問題でも?」と、アーチャー。ゆっくり、ブリッジに入ってきた。
「きさま、か」と、フォレスト。
「目的の座標に着くまで、自動航行は、解除できない。そう、セットし

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た」
「では、解除してもらおう!今、すぐにな」
「できない!乱数コードで、暗号化してある」
「なんとか、できないか?」と、フォレスト。トゥポルに。
「暗号の解読には、4・5日かかります」と、トゥポル。
「座標ポイントに着く方が、ずっと、早い!」と、アーチャー。「ブリ
ッジは、お返しします、船長!」
 


            4
 
 医療室。
「ウウウ、ウウウウウ」と、アーチャー。
 拷問ブースの中で、アーチャーが拷問を受けていた。
 フォレストは、医療室に入ってきた。
「もう、中に入って、10時間です」と、ドクター。「おそれ、いる」
「外に出せ!」と、フォレスト。
 拷問ブースがあくと、アーチャーは、そのまま、倒れこんだ。
「リード少佐を、呼べ!自分の発明品の、威力を試させよう!」

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「ふん」と、ドクター。護衛とともに、出ていった。
「オレを、ここで、殺す気か?」と、アーチャー。「それとも、裁判に
?」
「ガードナー元帥が、解放しろと、さ。データを受け取ったらしい。元
帥は、おまえの申し出に、興味がある、と。おまえが、勝手にコースを
設定したせいで、なぞの船とやらの、調査を命令された」
 アーチャーは、床で苦しみながらも、笑顔になった。
「裏切り者め!」と、フォレスト。アーチャーの襟首えりくびをつかんで、床に
放り投げた。「このことは、忘れんからな!身支みじたく度をし、1時間後に、
会議室で、報告を!」
 フォレストは、護衛とともに、医療室を出ていった。
 
               ◇
 
 宇宙を航行する、エンタープライズ。
 会議室。
「平行宇宙ですか?」と、トゥポル。
 アーチャーは、制服姿で、パネルの前に立ち、フォレストとトゥポル、
それに、タッカーとホシサトウが着席していた。
「科学理事会が、徹底的に調査したところ、平行宇宙が存在するという

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証拠は、なにもなかったようですが」
「ソリア人は、きみらの種族より、柔軟な発想ができる」と、アーチャ
ー。「トリコバルト弾頭を、爆発させた。この、死んだ星の重力の、く
ぼみの中でな。爆発は、両面に通じる、裂け目を作った。出入り口だ。
別の宇宙への」
「出入り口?」と、タッカー。
「裂け目は、不安定で、同胞の船を送るのは、危険と考え、救難信号を
送ったらしい。この裂け目に向かって!向こうから、助けが来るように。
そして、作戦は、みごと、成功した」
「どこからの情報です?」と、ホシサトウ。
「ソリア人は、異星人を雇って、働かせている。その、ひとりだ。彼ら
は、相当の値で、情報を売ってくれる」
「ぼったくられてないと、いいが」と、タッカー。
「彼は、通信が妨害される前、この画像を送ってきた」
 アーチャーは、スクリーンに岩石の画像を出した。
「別に、なにも、見えませんが」
「コンピュータ、スリーアルファ、拡大!」
 岩石の奥の基地に停泊する、船が見えた。
「地球の船か?」と、フォレスト。
「平行宇宙には、われわれの宇宙に存在するものが、すべて存在すると

58

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いいます」
「地球帝国や艦隊が」と、ホシサトウ。「別の宇宙に?」
「だから、なんだって、いうんです?」と、タッカー。
「ソリア人が、製造年を調べたところ」と、アーチャー。「この船は、
別の宇宙のものというだけでなく、100年後のものでもあった。使わ
れている、テクノロジーのことを考えてみろ!未来の戦術システム。進
化した生物兵器。エンジンは、夢のようなスピードを可能にする!すべ
て、われわれの手に、入るんだ!」
「聞く価値は、ありません」と、トゥポル。「あの船は、誰かが、われ
われをおびき出すために、作り出したおとりにすぎない。アーチャー副
長は、反乱騒動の責めをおうべきです」
「もう、よせ、少佐」と、フォレスト。
「船長、われわれは、ただちに━━━」
「黙れ!調査は、元帥の命令だ」そして、タッカーに。「すぐに遮蔽装
置を直せ!」
 フォレストは、護衛とともに、会議室を出ていった。
 アーチャーは、勝ち誇った顔で、トゥポルを見た。
 
               ◇
 

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 機関室。
 タッカーは、遮蔽装置を修理していた。
「船長に、進捗報しんちょく告を」と、トゥポル。機関室に入ってきた。
「フィールドコンバーターを調整して、終わりだ」
 タッカーは、遮蔽装置を、離れた。
「お前のせいで、4時間も拷問ブースに、ぶちこまれたんだぞ!」
「その怒りは、アーチャー副長に、ぶつけるべきでは、ないでしょうか
?」
「内部センサーを不動にして、オレのせいにしたのは、お前だ」
「それは、違うわ」
「なにが、違うんだ?オレがなにかしたなら、覚えているはずだろう」
「そうとは、限らない」
「オレに、なにをした?」
「機関室から、室に、おびき出したの。食事をしようと━━━ふたりき
りになると、精神融合を使って、わたしの意識を移し、パワーグリッド
細工さいくするように、強要した。任務完了後、ふたたび、精神融合し、あ
なたの記憶をすべて、入れなおした。フォレスト船長に、指揮権を戻す
ことが、わたしの任務だった」
「きっと、後悔させてやるからな」
おどしは、非論理的よ!」

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「機関室から、ブリッジ!」
「続けろ!」と、フォレスト。ブリッジの船長席から。
「準備完了。非常用以外の、全パワーをまわします」
「遮蔽を開始しろ!」
 タッカーは、遮蔽装置を起動した。機関室とブリッジの照明が、暗く
なった。
 エンタープライズは、宇宙を航行しながら、船体が一瞬ゆがんでから、
消えた。
 
               ◇
 
 ブリッジ。
「座標に接近中です」と、トゥポル。技術ブースで。「自動航行、解除
されました」
「外を、見てみよう!」と、フォレスト。
 スクリーンには、輪をもつ、ガス巨星と、いくつかの、岩石衛星が映
った。
「右下の月を、拡大!」と、アーチャー。
 ホシサトウが拡大画像を出すと、月の基地に停泊する、USSディフ
ァイアント NCC1764の機体が、スクリーンに映し出された。ま

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わりに、小さなソリア船が、何隻も、飛んでいた。
 
               ◇
 
 会議室。
「生命維持を含む、主要システムは、オフライン」と、トゥポル。スク
リーンを見ながら、報告した。「生体反応は、13名。すべて、異星人
です。うち、1名は、爬虫類。ここのセクションに、集中しています」
「船のクルーは?」と、アーチャー。
「地球人は、いっさい、感知していません」
「きっと、全員、殺されたんでしょう」と、リード少佐。
「コイルのサイズを見てください」と、タッカー。「ワープ7は、出せ
るはずです」
「攻撃部隊を、送った方がいいな」と、フォレスト。そして、アーチャ
ーに。「きみの提案だ。指揮をとれ!可能な限り、データを引き出し、
船を破壊してくれ!」
「破壊?」と、アーチャー。「あの船は、拿捕だ ほすべきです」
「危険すぎる、ここは、ソリア領の、ど真ん中だぞ!」
「船長!考え直して、ください」
「これは、命令だ、副長!」そして、全員に。「解散!」一同が室を出

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てゆくと、トゥポルに。「同行しろ!2度と、アーチャーを、この船に
戻す気はない。私の言う意味が、分かるな?」
 
               ◇
 
 ソリア人の基地に停泊する、ディファイアント NCC1764。
 その内部に、宇宙服を着た、5名が、転送されてきた。宇宙服のヘル
メットの両側に、ライトがついていた。
「コンポーネントが、ありません」と、トゥポル。
「バラしてるんだ」と、アーチャー。
 赤い制服を着た、人間が倒れていた。
「地球人です」と、トゥポル。
 仰向けにすると、胸が撃たれていた。アーチャーは、近くに落ちてい
た、フェーザーを拾った。
「よろしければ、私が携帯します」と、リード少佐。
 
               ◇
 
 汚染除去室。
「昼寝の時間は、終わってないぞ!」と、ドクター。

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 ドクターが、つまみを回すと、ソリア人は、苦しみ出して、甲高かんだかい声
を上げ始めた。
 エンタープライズのブリッジ。
「送信波、感知しました」と、ホシサトウ。「汚染除去室です」
「ブリッジから、フロックス」と、フォレスト。「なにが、起こってい
る?」
「鎮静剤がききません」と、ドクター。
「では、殺せ!今、すぐだ」
「はい、喜んで」
 汚染除去室のソリア人は、さらに、甲高かんだかい声を上げた。
「3隻の船が、こちらに接近中!」と、ホシサトウ。
「ドクター!」と、フォレスト。
「あと数秒で、死にます」と、ドクター。そして、ソリア人に。「さっ
さと、死んでくれ!」
 カマキリのクリスタルは、細かく砕け散った。
「フロックスから、ブリッジ。もう、この客に、煩わわずらされることは、あ
りません」
 フォレストは、やっと、ホッとした。
「ソリア船が、呼びかけています」と、ホシサトウ。
 

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               ◇
 
 宇宙服の5人は、ディファイアントのブリッジに来た。
「彼が、船長だ」と、アーチャー。船長席で、赤い制服の人間が、倒れ
ていた。
「首が折れています」と、トゥポル。
「ここから、リアクターを、オーバーロードできそうです」と、タッカ
ー。
「よし!かかれ!」と、アーチャー。
 
            エピローグ
 
 エンタープライズのブリッジ。
「さらに、4隻」と、ホシサトウ。
「アーチャーを呼べ」と、フォレスト。「即刻、任務中止だ!退避コー
スを、設定!」
「通信不能です!」と、ホシサトウ。
 ソリア船は、送信波を検知した領域を、7隻で囲むと、くもの巣を張
り巡らした。
「近くの船をねらえ!」フォレストは、立ち上がって、狙撃ブースの女

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性仕官に。「発射!」
「ダメージなし!」と、ホシサトウ。
「魚雷を装填!ただちに、発射!」
 ソリア船が、くもの巣にプラズマを放電させると、エンタープライズ
が、姿を現した。
 ソリア船は、一斉攻撃を始めた。
「敵に、見つかりました」と、ホシサトウ。
 ブリッジに閃光が、いくつも、走った。
「脱出しろ!」と、フォレスト。そして、通信機で。「機関室。遮蔽を
解除し、全パワーを、エンジンにまわせ!」
「遮蔽装置が、反応しません」と、機関室。
 
               ◇
 
 ディファイアントのブリッジ。
「所要時間は?」と、アーチャー。
「それを、聞きたいのは、こっちの方です」と、タッカー。
「わたしが、システムを、起動します」と、トゥポル。
「きみは、下がっていろ!」と、アーチャー。
「もうすぐです」と、タッカー。

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 ディファイアントのブリッジが、明るくなった。機体のワープエンジ
ンの回転ファンが、回転を始めた。
 警報が鳴った。
「エンタープライズが、攻撃を受けています」と、トゥポル。
 
               ◇
 
 エンタープライズのブリッジ。
「防御プレート、ダウン!」と、ホシサトウ。「Cデッキ、パワーダウ
ン!C、D、Eです」
「こちら、機関室。抑制フィールド、崩壊中です」
「反物質の、排出は?」と、フォレスト。
「無理です。リアクターの爆発まで、3分!」
「こちらは、船長。総員、脱出ポットへ、向かえ!船を、放棄する!」
 ブリッジの仕官たちは、顔を見合わせた。
「聞こえないのか!」と、フォレスト。
 ブリッジの仕官たちは、ブリッジから出て行った。
「なにを、する気ですか!」と、ホシサトウ。
「できる限り、時間を稼ぐ」と、フォレスト。「ここを、離れろ!早く
!」

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 ホシサトウは、ブリッジを後にした。
 フォレストは、船長席に、ふたたび、ついた。
 
               ◇
 
 ディファイアントのブリッジ。
 船が起動されたので、全員が、ヘルメットを取った。
「エンタープライズの被害は、甚大じんだいです」と、トゥポル。
「武器とエンジンを、オンラインにできるか?」と、アーチャー。
「手を尽くして、みます」と、タッカー。
「死体を片付けろ!」
 アーチャーは、リード少佐と軍曹に手伝わせて、船長席の死体をどか
した。
 
               ◇
 
 エンタープライズのブリッジ。
 フォレストは、船長席で、攻撃を続けた。
 エンタープライズから、多くの脱出ポットが発射された。いくつかは、
ソリア船のくもの巣にひっかっかって、爆発した。

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               ◇
 
 ディファイアントのブリッジ。
「副長!」と、トゥポル。スクリーンに。
 スクリーンには、エンタープライズが、ソリア船の攻撃で、爆発する
瞬間が映し出された。
 
 
                  (第四_五_二話 終わり)











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            プロローグ
 
「スタートレック、前回は」と、ナレーター。
 前回の場面が、オムニバス形式で、再現された。
「平行宇宙が、ですか?」と、トゥポル。
「平行宇宙には、われわれの宇宙に存在するものが、すべて存在すると
いいます」と、アーチャー。
「地球帝国や艦隊が」と、ホシサトウ。「別の宇宙に?」
「わたしは、奴隷じゃない!」と、トゥポル。
「忘れるな。おまえは、バルカン人だ!」と、アーチャー。
 ブリッジに、フェーザーの閃光。
「もう、キャビアなんて、どうでもいい」と、ホシサトウ。
「この船は、別の宇宙のものというだけじゃなく、100年後のもので
もあった。使われている、テクノロジーのことを考えてみろ!すべて、
手に、入るんだ!」と、アーチャー。



 

82

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 アーチャーは、リード少佐を、壁に押さえつけ、顔に銃をつきつけた。
 ソリア船のくもの巣に、プラズマが放電した。
「エンタープライズが、攻撃を受けています」と、トゥポル。
「敵に、見つかりました」と、ホシサトウ。
 ブリッジに閃光が、いくつも、走った。
「こちらは、船長。脱出ポットへ、向かえ!船を、放棄する!」と、フ
ォレスト。
 エンタープライズから発射された、多くの脱出ポット。
 ブリッジで、攻撃を続ける、フォレスト。
 ディファイアントのブリッジのスクリーンに映し出された、爆発する
エンタープライズ。
 
               ◇
 
 ディファイアントのブリッジ。
「少佐!」と、アーチャー。
「スラスター、オン」と、タッカー。
「ドッキングクランクを、はずせ!」と、アーチャー。
「できません!」と、トゥポル。
「武器は?」

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「━━━」と、リード少佐。
「複雑すぎる!あと、2.3分、ください!」と、タッカー。
「見えた!シールド起動!」と、リード少佐。
「すぐに、はいれ!」と、アーチャー。
「クランクを、刺激しています。だが、はずれない!」
「左右のスラスターを、交互に動かせば、はずれるかもしれん!」
 アーチャーは、パイロット席の操縦かんを、交互に動かした。
 船が、大きく、揺れた。
「はずれました!」と、トゥポル。
「船尾スラスター、起動!」と、アーチャー。
 トゥポルは、警報に気づいて、センサーをのぞいた。
「ソリア船、6隻が、こちらに向かっています」
「まだ、武器は、使えんのか!」
「パワー連結器が、はずれていて、バイパスできるかどうか」と、タッ
カー。
「あれを!」と、軍曹。スクリーンのソリア船の動きに。
 ソリア船、6隻が、ふたたび、くもの巣を作りはじめ、プラズマを放
電させた。
 
 地球帝国の勇壮なテーマ曲。

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 人類の戦争の映像。
 地球にナイフのささった、地球帝国の紋章。
 







            5
 
 ディファイアントのブリッジ。
「ミスター、タッカー!」と、アーチャー。
「待ってください」と、タッカー。
「ううん」アーチャーは、待ちきれないという表情になった。
「すまん、手を貸してくれ!」と、タッカー。トゥポルに。
「合図をしたら、プラズマを、前方エミッターに送れ!」
「さらに、3隻接近!」と、リード少佐。
「あと、数秒、辛抱しんぼうを!」と、タッカー。

88

87





「ううん」アーチャーは、壁を叩いた。
 船が揺れた。
「今のは?」
牽引けんいんビームです。敵に、牽引けんいんされています」と、リード少佐。
「もう、待てん!」
「もう、すぐです!」と、タッカー。そして、トゥポルに。「今だ!」
 トゥポルは、エミッターハンドルを、前に、押し出した。
「戦術システム、オンライン!」と、トゥポル。
 リード少佐が、フェーザー砲で攻撃を始めると、牽引けんいんビームは消え、
敵の基地が、爆発した。くもの巣を張り始めていた、3隻を撃破した。
「出力最大!」と、アーチャー。
「残りも、退却してゆきます」
「基地が、攻撃を開始!」と、トゥポル。
「船尾の魚雷は、装備してあるか?」
「ないわけがない!」と、タッカー。「ありました」
 リード少佐は、基地に7・8発の魚雷を、お見舞いした。
 警報音が鳴った。
「脱出ポットです!」と、リード少佐。「左舷12キロメートル。うち
のです」
「━━━収容しろ!」と、アーチャー。

90

89





 
               ◇
 
 宇宙を航行する、ディファイアント。
 会議室。
 仕官たちが、ヘルメットを取った宇宙服のまま、集まっていた。
 脱出ポットから、救出された、ホシサトウは、帝国軍の制服姿で、ド
クターは、黒い医療服だった。
「なぜ、ワープドライブがない!」と、アーチャー。
 机の上のスクリーンを見ていた。
「基地で、分解されたからです」と、タッカー。「しかし、幸い、部品
は、すべて、格納デッキにある。ただ、組みなおすには、時間がかかり
ます」
「どのくらい?」と、トゥポル。
「2・3日━━━実際、なんの機械が分からないものも、あります。ま
るで、汽船勤めの機関主任が、初めて、宇宙船に、乗り込んだようだ」
「12時間以内に、ワープを可能にしろ!」と、アーチャー。「でなけ
れば、おまえは、クビだ!」
「捕虜にした、異星人に、手伝わせては?」と、トゥポル。「なにか、
知っているかもしれません」

92

91





「作業中、目を離すな!ワープエンジンが直ったら、突撃部隊との、合
流点へ向かう」
「戦える状態では、ありません!」と、トゥポル。
「ソリアは、簡単に、片付いた」と、リード少佐。
「この船は、400人のクルーを、要します。われわれは、全部で、4
7人ですよ。ディファイアント号は、まず、地球に運ぶべきです。宇宙
艦隊に、たくし、すみずみまで、分析して━━━」
「時間がないのだ!」と、アーチャー。「このディファイアントの武器
を、すぐ、前線に、持ち込まなければ、帝国は、反乱軍に負ける!解散
!」
 仕官たちは、室を出ていった。
「少佐!」アーチャーは、トゥポルの腕を取って、座らせた。「きみは、
残れ!」
 アーチャーは、軍曹の手から、銃を取って、トゥポルの首に突きつけ
た。
「よくも、裏切りやがったな!」
「あなたが、艦隊命令を受けたというのは、明らかに、ウソでした。フ
ォレスト船長に、指揮権を戻すことは、艦隊仕官として、当然の任務よ」
「オレに、忠誠を誓ったはずだ!」
「フォレスト船長から、あなたを、殺せと、命じられた」

94

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「なぜ、オレに言う?」
「フォレストは、死んで、命令は無効になった。今は、あなたが、指揮
官です」
「うまく、いってると、思っていたのに!バルカン人とは、な!だが、
オレを、裏切りやがった。おまえの代わりを勤める士官がいれば、とっ
くに、エアロックからほうり出している!この船には、お前が必要だ。
だが、今度、オレを裏切るようなことをすれば━━━」
「分かっています!」
「出てけ!」
 トゥポルは、室を出ていった。
 
               ◇
 
 船長室。
 ドアがひらいて、ホシサトウが入ってきた。
「ハハハ、なんて、かっこしてるわけ?」と、ホシサトウ。
「制服だよ」と、アーチャー。「ここの船長の」
 アーチャーは、黄緑のガウンの上着に、黒いズボンだった。
「服の趣味は、人それぞれだって、言うけど」
「どこにも、記録が載っていない」

96

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「記録って?」
「帝国だ。もうひとつの、世界には、存在しないらしい」
「帝国が?」
 ホシサトウは、グリーンのワインをグラスに注いだ。
「同じ名は、出てくるが━━━歴史は、まったく、違う!地球は、帝国
を築くかわりに、異種族間で、同盟を作り、それの、一部になっている」
 ホシサトウは、机の上の、スクリーンに気づいた。
「この、惑星連邦って、やつ?」
「ふん、バカどもの、寄せ集めだ」
 アーチャーは、出された、ワインを飲んだ。
「あたしたちは?向こうにも、存在するの?」
「コンピュータ!」と、アーチャー。
「ピュルピュル」と、コンピュータ。
「経歴ファイルに、アクセス!艦隊仕官、ホシサトウ!」
「検索━━━ジジジ、ピッ!」
 アーチャーは、スクリーンを、ホシサトウに見せた。
「ホシサトウ、宇宙艦隊初の、ワープ5シファイブップの、通信仕官」
 アーチャーは、経歴書を読み上げた。
「30代後半、宇宙言語の、翻訳マトリックスを完成させる」
「一応、名を残したようね」

98

97





「結婚相手も、ってるぞ!どうやって、この世を、去ったかも━━━」
「やめて!知りたくない!」
「これは。きみじゃ、ない!」
「知りたくない!」
 アーチャーは、読むのをやめた。
「コンピュータ!」と、ホシサトウ。
「ピュルピュル」と、コンピュータ。
「経歴ファイルに、アクセス!艦隊仕官、ジョナサンアーチャー!」
「検索━━━ジジジ、ピッ!」
「アッハハァ、すっごい!」と、ホシサトウ。
「高名な、ワープ専門家、ヘンリーアーチャーの息子!」
 ホシサトウは、経歴書を読み上げた。
 アーチャーは、立ちあがって、落ち着きがなくなった。
「ジョナサンは、宇宙艦隊初となる、ワープ5シファイブップの船長に任命され
た。惑星連邦内で、彼の名を知らぬものは、いない。彼は、その生涯で、
数々の褒章をほうしょう受け、歴史家は、彼のことを、22世紀の、もっとも偉大
なる、探検家と、絶賛!ふたつの惑星の、名にもなっている!」
 アーチャーは、こぶしで叩いて、スクリーンを消した。
「ちょっと!」と、ホシサトウ。
「この男は、くずだ!」と、アーチャー。「やつは、地球の未来を、下

100

99





等な人種の集団に、売り渡した!偉大な人間とは、間違っても、平和を
望んだりはしない!望むのは、征服だ!」
「もう忘れて!」と、ホシサトウ。「あなたの未来は、始まったばかり
じゃない!地球帝国の皇帝が、この船を見たら、どんな、顔をするか?
あなたは、一躍、帝国の英雄になるわ。自分の船を、まかされるはずよ
!」
 アーチャーは、ホシサトウの顔を見た。そして、両手を広げた。
「自分の船なら、もう、こうして、持っている」
 ホシサトウは、不思議そうな顔をした。
 
               ◇
 
 通路。
 赤の制服を着た、タッカーが歩いてきた。
「どうした?」と、タッカー。
「少佐!」と、修理用通路のはしごにいる、技術仕官。「プラズマレギ
ュレータが、どちらも、なくなっています」
「そんなことで、オレを呼びつけたのか?格納庫にあるだろ?」
「違います!10分前まで、ここに、あったんです。連結器を取りにゆ
き、戻ったら、消えてました」

102

101





「すぐ、捜すんだな!10分で、ここを起動できなければ、ワープでき
ないのは、お前のせいだと、アーチャーに言う!」
「はい、捜しますよ」
 タッカーは、戻っていった。
 技術仕官は、はしごを上って、上のフロアに出た。
「誰か、いるのか?」と、技術仕官。フェーザーを構えながら、進んだ。
 床に落ちていた、プラズマレギュレータを拾った。
「ギャー!」と、技術仕官。上の階から降りてきた、なにかにつかまっ
て、体ごと持ち上げられた。骨が砕ける音がした。
 
               ◇
 
 宇宙を航行する、ディファイアント。
 ブリッジ。
「傷口から、爬虫類の唾液が」と、ドクター。アーチャーに報告した。
「検出されました」
「かみ殺したわけか?」と、アーチャー。
「うーん、傷口からみて、かなり大きな、生き物です。体長は、2メー
トル以上」
「内部センサーで、見つけられるのか?」と、アーチャー。技術パネル

104

103





の前の、トゥポルに。
「主要部には、いません」と、トゥポル。薄いブルーの服を着ていた。
「が、機関部は、まだ、センサーが機能していません」
「前のクルーが」と、リード少佐。赤い惑星連邦の制服を、着ていた。
「飼っていた、ペットでは?」
「恐竜をうも、同然ですよ」と、ドクター。「そんな、可能性は、ま
ず、ない!」
 タッカーが、ブリッジに入ってきた。
「レギュレータが見つかりません」と、タッカー。「このままじゃ、リ
アクションチェンバーが、動かせない!ワープは、不可能です」
「誰が、盗んだにせよ」と、トゥポル。「われわれの最大の弱点を知っ
ている」
「捕虜のひとりを」と、アーチャー。「会議室に連れてこい!」
「分かりました!」と、リード少佐。
 
               ◇
 
 会議室。
 ブルーの肌をした異星人が、イスに縛られたまま、軍曹に殴られてい
た。

106

105





「ウーウー」と、異星人。
 軍曹は、殴るのをやめた。
「クルーを襲ったのは?」と、アーチャー。
「それを」と、異星人。「あんたらに言ったら、オレたちが、殺される」
「言わなければ、私がおまえを、殺す!」
「勘弁してくれぇ!」
「下がれ!」と、アーチャー。イスを支えていた、士官を下がらせた。
 アーチャーは、銃を抜いた。
「リード少佐!」と、トゥポル。机の上のスクリーンに。「新しい捕虜
を、会議室に」
「了解!」と、リード少佐。拘束室から。
「出力を最大にすると」と、アーチャー。銃を調整しながら、異星人に
近づいた。「人体を、破壊できるらしい。試すときを、楽しみにしてい
た」
 アーチャーは、異星人の首に、銃口を押しあてた。
「ワワワ」と、異星人。「やつの名前は、スラーっていうんだ」
「やつとは?」
「オレたち奴隷の、かしらだよ。この船の、改修作業をまかされてた。あ
んたたちが、撃ってきたとき、やつは、運搬用の通路に隠れ、船を破壊
しようと、してたんだ」

108

107





「その通路は、どこにある?」
「たぶん、22デッキのパワートランスファーコンジットの近くにある
と思う」
 アーチャーは、トゥポルに、あごで合図を送ると、トゥポルは、セン
サーで調べ始めた。
「そこは、あったかいんだ。やつの種族は、高温を好む」
「やつの種族とは?」
「ゴーンだ。やつは、ゴーン人だよ!」異星人は、泣きだした。
 

            6
 
 ディファイアントのブリッジ。
 リード少佐は、スクリーンの通路図を見ながら、黄緑のガウンのアー
チャーに、報告した。
「一時は、彼を、ここに追い詰めたんですが、アクセスチューブを通っ
て、逃げられました。追い詰めたクルーは、行方不明です」
「時間を、かけ過ぎだ」と、平行宇宙のアーチャー。
 振り返ると、平行宇宙のアーチャーが、惑星連邦の制服を着て、船長
席の肘掛けに座っていた。

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「私は、船の緊急時、けっして、保安部に任せたりしなかった。自分で、
解決したぞ!」
 それを、聞いて、アーチャーは、リード少佐に、言った。
「テラライト人を送った方が、まだ、ましな仕事をしたろう!チームを
組織しろ!私が指揮をる!」
 
               ◇
 
 ディファイアントのブリッジ。
「船内から」と、ホシサトウ。「例の爬虫類が、こちらに、呼びかけて
います」
「場所を、特定できるか?」と、アーチャー。
「スクランブルをかけています」
「回線をつなげ!」
「翻訳マトリックス、起動!」
「アーチャーだ!プラズマレギュレータを、返せ!」
「この船から、脱出したい」と、ゴーン人。無線回線で。
「レギュレータを返せば、相談に乗ってやる!」
「断る。おまえら、地球人は、信ずるに値する種族では、ない!先に、
シャトルをよこせば、ここを脱出したあとで、レギュレータがどこにあ

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るか、教える」
「おまえと、交渉するつもりは、ない!レギュレータは、どこだ!答え
る気がないなら、力づくで━━━」
「ピュ!」と、通信回線。
「回線、切られました」と、ホシサトウ。
「少佐!」と、アーチャー。リード少佐に。「隊を組織しろ!精鋭でだ
!」
「ゴーンの申し出は、正当です!」と、トゥポル。
「やつは、レギュレータを返さんよ!」と、アーチャー。「シャトルを
渡せば、仲間を伴い、戦艦で攻めてくる!ワープできなきゃ、一巻の終
わりだ!」
 アーチャーは、ひとりで、エレベータに乗った。
「ゴーンを打ち負かせば」と、平行宇宙のアーチャー。アーチャーの耳
元で。「初めて、部下の尊敬をうることが、できるな!」
 
               ◇
 
 ディファイアントの通路。
 リード少佐は、フェーザーを構え、部下2名とともに、通路を進んだ。
 アーチャーは、護衛を伴って、通路で、リード少佐と合流した。

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 リード少佐は、修理用通路のはしごを上って、上のフロアに出た。
「生体反応!」と、リード少佐。センサーを見ながら、アーチャーに。
「すごく弱い。ジャンクション3のスリー近くです」
「この隔壁かくへきを閉めれば」と、アーチャー。「逃げ道は、ひとつしか、な
くなる!やつを、ジャンクション3にスリー、追い詰めろ!待ち伏せる」
「了解」
 アーチャーは、護衛とともに、別の通路へ向かった。
 リード少佐は、通路を進むと、床に通信機が落ちていて、信号を送っ
ていた。
「ピピピ、ピピピ」と、床の通信機。
「アーチャー船長」と、リード少佐。無線機に。
「どうした?」と、アーチャー。無線機から。
「やつは、いません。通信機を改造し、偽装サインを出していました」
「ジャンクション3にスリー、急げ!」
「分かりました」
「ピピピ、ピピピ」と、床の通信機。
「その耳障みみざわりな音を、止めろ!」と、リード少佐。部下に。
 部下が通信機を閉じると、壁に仕掛けられた、地雷が起動した。
わなだ!」リード少佐は、逃げようとして、爆発に巻き込まれた。
 アーチャーは、爆発音を聞いて、護衛と戻ってきた。

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「しくじりました」と、リード少佐。床に倒れていた。
「アーチャーより、トゥポル。やつは?」
「ゴーンは、主要部に移動しました」と、トゥポル。「現在、第9デッ
キです」
 アーチャーは、リード少佐を、助け起こそうとしたが、意識がなかっ
た。
「作戦を、変更する。第9デッキの環境制御装置に、アクセス!私の合
図を、待て!」
「分かりました」
 アーチャーは、護衛と、第9デッキに向かった。
 赤や黄色の制服を着た、ディファイアントの乗組員が、何人も床に倒
れていた。
 ゴーンは、通路の上に隠れていた。
 アーチャーが真下に来ると、襲いかかった。
 護衛は、フェーザーで、ゴーンを殴ると、ゴーンは、護衛に襲い掛か
った。
「アーチャーから、トゥポル」アーチャーは、って逃げようとした。
 ゴーンは、ふたたび、アーチャーに向かってきた。
「セクション4Aだ。起動準備!」
「スタンバイ!」と、トゥポル。

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 アーチャーは、セクション4Aから、となりのセクションに移動した。
「今だ!」
「重力、強化!」トゥポルは、環境制御のレバーを、引いた。
 ゴーンは、ひざをついた。そして、床に押さえつけられた。
「重力プレート、20G!」
 エレベータがあいて、フェーザーを構えた、ふたりの兵士がやって来
た。
「武器をよこせ!」と、アーチャー。
 アーチャーは、立ち上がって、フェーザーを受け取ると、床で動けな
くなった、ゴーンを撃った。
 
               ◇
 
 宇宙を航行する、ディファイアント。
「ディファイアント航星日誌。2155年1月18日。プラズマレギュ
レータを、無事、取り返し、突撃部隊との、合流点に向かう」
 ディファイアントの食堂。
 トゥポルは、ドクターと食事をしていた。
「リード少佐の、具合は?」と、トゥポル。
「ふーん」と、ドクター。「今のところ、なんとも、言えない。死んだ

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としたら、いくつか、儀式の準備をしなくては、なりません」
「ライブラリーのデータベースを、熱心に、閲覧しているみたいね」
「古典文学を、調べていただけです。もうひとつの宇宙では、どう描か
れているのか、気になって、有名な作品を、何作か、読んだんです。ハ
ハッ、ストーリーは、同じだが、キャラクターが一様に違う。みな、弱
く、じつに、あわれみ深い。シェイクスピアは、もちろん、例外です。彼
の戯曲だけは、どちらの宇宙においても、とても、残酷だ」
「歴史ファイルを、見てみては?惑星連邦に、興味をもつはずです。も
うひとつの宇宙では、地球人とデノビュラ人は、同等だそうよ。もちろ
ん、バルカン人も」
「ふん」
「興味ないようですね」
「危険な記録だ。私が船長なら、アクセスを禁じます。よからぬ思想の
種を、植え付けたくはない。ふん?」
「よいか悪いかを決めるのは、わたしたち━━━」
 警報が鳴った。
「こちら船長。総員、配置につけ!」
 
               ◇
 

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 宇宙の戦場。
 アベンジャー号は、反乱軍の戦艦の砲火を受けながら、退却していた。
 アベンジャー号のブリッジ。
「報告!」と、ブラック提督。
「Bデッキに亀裂。非常用防護壁、機能!」と、バルカン人のソヴァル
副長。
「アンドレア船に、集中砲火を浴びせろ!」
「防御プレート、32パーセント。提督、別の船が接近中!」
「反乱軍か?」
「違います━━━」
 ディファイアントは、前方の船を、1発で撃破した。さらに、別の船
を、撃った。
 
               ◇
 
 ディファイアントのブリッジ。
「命中です」と、軍曹。狙撃ブースで。
「テラライト船が、砲撃」と、ホシサトウ。「ダメージなし」
「リアクターをねらえ!」と、アーチャー。船長席で。「ロックオン、
発射!」

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「ターゲット、破壊しました」と、軍曹。
「バルカン船が、逃げようとしています」と、ホシサトウ。
「追いかけろ!」と、アーチャー。
「船長━━━」と、トゥポル。たまらず、声をかけた。「敵は、戦意を
喪失しています」
「ロックし、発射しろ!」
 ディファイアントは、魚雷を発射した。
 バルカン船は、輪の中心のブリッジが、爆発した。
 トゥポルは、あきらめた顔をした。
「最後のアンドレア船が、逃げます」と、ホシサトウ。
「ロックしました」と、軍曹。
「待て!」と、アーチャー。「行かせろ!ここで、なにが起きたか、仲
間に言わせるんだ━━━ブラック提督を呼べ!」
 ホシサトウは、無線をつないだ。
「アーチャーか?」と、無線。
「遅れて、すいません、ブラック提督」
 スクリーンに、アベンジャー号の、半分破壊されたブリッジにいる、
ブラック提督が映った。
「エンタープライズは?」と、ブラック提督。「フォレスト船長は、ど
こだ?」

126

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「説明するには、時間がかかります。まずは、ご自分で、この船を、ご
覧になってみては?」
 
               ◇
 
 宇宙を航行する、ディファイアントとアベンジャー号。
 ディファイアントの会議室。
 ドアがあいて、ブラック提督とアーチャーが入ってきた。
「じつに、すばらし船だな、副長!」と、ブラック提督。「この船のテ
クノロジーをもってすれば、反乱軍に勝ち目は、ない」
「おっしゃるとおりです」と、アーチャー。
「つぎに、船長の空きができたら、君を推薦しよう」
「あなたなら、今すぐ、私を昇進させられるのでは?」
「残念ながら、今、あいている船はない」
「ディファイアントがある!」
「それは、元帥が、許可されんだろう」
「彼らは、君にこの船を渡すつもりは、ない」と、平行宇宙のアーチャ
ー。アーチャーの耳元で。ブラック提督が話している間、ささやき続け
た。
「分解して、秘密をさぐる気だ。君には、まかされて、せいぜい、衛星の

128

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定期便だろ?彼の本音が、分からないか?この船を、自らみずか、皇帝に、献
上する気だ。手柄は、ひとりじめ、そして、君は、一生、脇役のままで
終わる━━━」
「君は、帝国の救い主だよ、副長!」と、ブラック提督。
「船長だ!」と、アーチャー。護衛の軍曹に、目で合図を送った。
「あなたは、もう、いらない!」
 軍曹は、ブラック提督の護衛を、蹴り倒した。
 ブラック提督は、銃を抜こうとしたが、アーチャーのフェーザーに撃
たれ、原子レベルに、分解された。
 
            7
 
 宇宙を航行する、ディファイアントとアベンジャー号。
 アベンジャー号の貨物倉庫に、全員を集め、アーチャーが演説した。
「われわれ、全突撃艦隊は」と、アーチャー。「反乱軍に、完敗した。
何万という、艦隊仕官が、殺されたのだ。ディファイアントが来なけれ
ば、君らの多くも、そうなっていただろう。責めをおうべきは、だれか?
帝国に命をささげた、諸君たちでは、ない!この戦犯は、戦況の危機に
もかかわらず、艦隊司令部のイスに、ふんぞり返っていた、連中だ!や
つらの弱腰が、敵の猛攻を招き、やつらの堕落と傲慢が、帝国に敗北を

130

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もたらしたのだ!1兵士として、言わせてもらう。何世紀にもわたり、
栄えてきた、この偉大なる帝国を、そんな腰抜けどものせいで、終わら
せられん!だから、私に、力を、貸してくれ!これ以上、あの、恥知ら
ずの連中に、指揮をらせていては、とうてい、反乱軍を、打ち負かす
ことはできん!まずは、上層部を倒さねば、ならん!外に停まっている、
あの船さえあれば、すべてに、勝てる!ディファイアントさえあれば、
誰も、われわれを、止められは、しないのだ!」
 
               ◇
 
 宇宙を航行する、ディファイアントとアベンジャー号。
 バルカン人のソヴァル副長の室。チャイムが鳴った。
「入れ!」と、ソヴァル。
 ドアがあいて、トゥポルが入ってきた。トゥポルは、右手を上げて、
指を奇妙に開いた。
「たとえ、ドアが閉まっていても」と、ソヴァル。「そんなこと、する
もんじゃない!」
 トゥポルは、右手を下げた。
「会えて、うれしく思う」
「もう、歴史ファイルを、ご覧に?」と、トゥポル。

132

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「なかなか、おもしろく、読ませてもらったよ」
「おもしろい?」
「この、もうひとつの宇宙は、別世界だな。われわれの世界は、惑星連
邦などとは、無縁だ」
「あなたは、理想主義者だったはずです」
「たしかに、大昔は」
「われわれが、行動にでなければ、帝国は、アーチャーの手に落ちます」
「アーチャーは、正しい!帝国は、腐りかけている。あの男に、任せて
みては?」
「同胞は、どうなるんです?あの船は、反乱軍を全滅させる。何千とい
う同胞もです。われわれで、同胞の加勢をしましょう!」
「加勢を?」
「ディファイアントのエンジンと戦術システムのデータを、彼らに送り
ます」
「そんなことをしたところで、アーチャーがひるむものか!」
「わたしは、あの船を、破壊する気です」
「なんだと?」
「パワーシステムを、無力化します。力を貸してください!死ぬまで、
帝国にかしづいているつもりですか?」
「もう、革命を起こすには、年をとりすぎた」

134

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「アーチャーは、きっと、皇帝になったら、われわれに反乱の罪をきせ
るでしょう。バルカンを破滅させます。わたしに、力を貸してください
!」
 
               ◇
 
 アーチャー船長の室。
 暗闇の中、アーチャーがテーブルのはしに座っていた。ホシサトウが
そばに来た。
「上級仕官連中は、オレのことを、認めちゃいない」と、アーチャー。
「そのうち、変わるわ」と、ホシサトウ。
「トゥポルも、そうだ。あいつの目を見てれば、分かる」
「だったら、追い出しちゃえば!船も、動くようになったし」
「ほかにも、地球人以外は、全員、排除するとしよう!ディファイアン
トから、たたき出す!」
「全員を?」
「ああ、どこにスパイがいるか、分からん!オレの船には、ひとりだっ
て、異星人は、乗せられん!」
「しばらくは、病気にならないように、気をつけてよ!忘れているよう
だけど、ドクターも異星人よ!」

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「フロックスは、別だ!デノビュラ人は、反乱に、加わってない!彼は、
残す」
「わたし、皇帝の妃にきさきなるの、初めてよ!勉強しておくこと、ある?」
「もう、十分、オレの役に立ってるさ」
 
               ◇
 
 ディファイアントのブリッジ。
 トゥポルは、技術ブースで、ディファイアントのデータを、ディスク
に抜き取っていた。
 ドアがあいて、アーチャーが入ってきた。
「ガードナー元帥に、つなげ!」と、アーチャー。「伍長!トゥポル少
佐を、第2転送室に、ご案内しろ!」
 トゥポルが、ブリッジを出ようとすると、軍曹が、トゥポルのナイフ
と銃を、奪った。
「これ以上、君に、この船のためにしてもらうことは、ない」と、アー
チャー。
 スクリーンに、ガードナー元帥が映った。
「アーチャー!」と、ガードナー元帥。「いったい、なにが、起こって
いるというんだ?」

138

137





「私の進言を、ご覧に?」
「われわれ艦隊に、無条件降伏をしろと?きさま、正気を失ったか?」
「ディファイアントのスペックを、見たでしょ?これは、無敵の船です」
「ブラック提督と話をさせろ!」
「今、席をはずしています」アーチャーは、船長席に座った。
「私は、元帥に、艦隊の武装解除を、おすすめします。これ以上、船を
失うわけに、いかんでしょ?」
「最初で、最後の警告だ、副長!地球には、近づくな!近づけば、容赦
はしないぞ!」
 ガードナー元帥は、通信回線を切った。
 
               ◇
 
 ディファイアントの通路。
 ドクターが歩いていると、呼び出し音が鳴った。
「ドクターフロックス!」と、無線。
「フロックスです」と、ドクター。無線に。
「アベンジャー号で、急患発生。至急、向かってください!」
「了解」
 

140

139





               ◇
 
 宇宙を航行する、ディファイアントとアベンジャー号。
 アベンジャー号の通路。
 ドクターが医療用カバンを持ってくると、トゥポルとソヴァルが待っ
ていた。
「どちらも、急患には見えん!」と、ドクター。
 
               ◇
 
 アベンジャー号の貨物室。
「ディファイアントに、破壊工作を?」と、ドクター。「正気とは、思
えません」
「頼めるのは、君しかいない」と、ソヴァル。「われわれが動けば、怪
しまれる」
「あのアーチャーのスピーチ、あれは、妄想よ!」と、トゥポル。
「なにごとも、実現できれば、妄想には、なりません。アーチャー船長
なら、実現は、可能です。船長に、報告します」
「帝国に、忠誠心は?」と、ソヴァル。
「あるにきまってます!」

142

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「アーチャーは、皇帝を殺す気です」と、トゥポル。「そして、後釜あとがま
!」
「船長なら、統治者として、ふさわしいのでは?」
「アーチャーがしくじれば、その責めは、クルーが負わされる」と、ソ
ヴァル。
「わたしたちは、死刑です」と、トゥポル。「知っていますか?皇帝の
命を、救った者は、なにを望もうと、かなえられるそうです。すばらし
いと、思いませんか?自由に使える、専用の医療施設を持てるなんて。
どんな実験だって、好きなだけできます」
「解剖にしても、そうだ」と、ソヴァル。
「解剖?」と、ドクター。
「好きなだけ、解剖する宇宙生物を、そばに、置いておくことができる
だろう」
「皇帝が、私の患者であれば」と、ドクター。「救う義務がある。命の
危機という点では、この件も、同じです」
 





144

143





            8
 
 アベンジャー号の通路。
 トゥポルが歩いてきて、エレベータのスイッチを押した。
 エレベータが開くと、銃を構えた、ホシサトウと護衛が現れた。
「なんの、マネ?」と、トゥポル。
「とぼけないで!」と、ホシサトウ。「ダウンロードした回路図は、ど
こ?」
「回路図?」
 ホシサトウは、護衛に、目で合図した。
 護衛は、トゥポルのナイフと銃を、奪った。
「行きなさい!」と、ホシサトウ。
 トゥポルは、背中を向けた瞬間、護衛を倒して、ホシサトウの銃をた
たき落とした。
 すぐに、ホシサトウは、ナイフを抜いて、切りかかった。
「ずっと、あんたと、やり合いたかったのよ!」と、ホシサトウ。
「さんざん、船長においしい料理をふるまわれて」と、トゥポル。「よ
くそんな体型が、維持できるわね!」
「タッカー少佐が、すこし、あんたに、手ほどきしてあげろってさ!」
 ホシサトウは、ナイフを奪われて、トゥポルに殴られて、床に倒れた。

146

145





 トゥポルは、走りだしたが、倒れていた護衛に、麻酔モードで撃たれ
た。
「連れていって」と、ホシサトウ。身を起こした。
 
               ◇
 
 宇宙を航行する、ディファイアントとアベンジャー号。
 ディファイアントの通路。
 ドクターは、人気ひとけのないのを、見計らって、修理用通路のはしごを上
った。
 
               ◇
 
 アベンジャー号のブリッジ。
 アンドレア人の仕官が、パイロット席で倒れている士官を、どかした。
「ターボリフトを、止めろ!」と、ソヴァル。「ブリッジを確保!」
 緑の肌の女性仕官は、狙撃ブースについた。
 
               ◇
 

148

147





 ディファイアントの会議室。
 トゥポルは、手錠をされて、座っていた。
「誰と、グルなんだ?」と、アーチャー。「死ぬ覚悟は、できてるな?」
「わたしが死んでも、なにも、変わらない!」と、トゥポル。「あんた
に、勝ち目はないわ!」
「だが、ディファイアントが勝つ!物理的に言って、火力が違う!」
「未来は、惑星連邦のものです」
「ここと、どっかの宇宙が、ごっちゃになっているようだな」
「地球人は、いつか、きっと、その傲慢さのツケを、払わされることに
なる!」
「ふん」
 
               ◇
 
 ディファイアントの修理用通路。
 ドクターは、壁のカバーをはずして、回路図と見比べた。
「この忙しいのに、なんです?」と、ドクター。無線に。
「現状の報告を!」と、ソヴァル。無線で。
「あなたがくれた、回路図とは、全く違うようだ」
「デュオトロニックモジュールを、はずしてくれ!リレーは、その後ろ

150

149





にある!」
「はずした!」
「リレーをはずす前に、フローレギュレータを、止めるのを、忘れるな!
プラズマが燃え出す」
 
               ◇
 
 ディファイアントの会議室。
「アベンジャー号に行って、異星人を、全員、拘束しろ!」と、アーチ
ャー。
 命令を受けた、仕官たちは、転送された。
 
               ◇
 
 アベンジャー号のブリッジ。
 警告音が鳴った。
「なにものかが、この船に、進入した!」と、ソヴァル。「ドクター、
急いでくれ!」
 
               ◇

152

151





 
 ディファイアントのブリッジ。
「ワープフィールドが、ゆらいでます」と、軍曹。狙撃ブースで。
「パワーが、もれている!主要EPSリレーだ」と、タッカー。機関ブ
ースで。
「船長に、知らせます」
「待て!コンジットに、穴があいただけだろう。船長をわずらわせる必
要は、ない。オレが直す!」そして、別の仕官に。「代われ!」
「はい、少佐!」別の仕官は、機関ブースに移った。
 
               ◇
 
 ディファイアントの会議室。
 トゥポルは、手錠をされたまま、無表情に座っていた。
「これ以上、尋問を続けても、時間のムダです」と、ホシサトウ。「さ
っさと、殺してよ!」
「ずっと、この時を、待っていたんだろ?」と、アーチャー。
 ディファイアントは、大きく揺れた。
 
               ◇

154

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 ディファイアントの修理用通路。
 ドクターは、リレーを2組、取り外した。
 
               ◇
 
 ディファイアントの会議室。
「アーチャーからブリッジ!報告!」と、アーチャー。
「メインパワー、停止!ワープ不能に!」と、ブリッジ。
 
               ◇
 
 アベンジャー号のブリッジ。
「1万メートルに、接近!」と、ソヴァル。そして、緑の肌の女性仕官
に。「円盤部をねらえ!」
 アベンジャー号は、ディファイアントに、上から急降下して、攻撃し
た。
 ディファイアントの円盤部に、いくつか直撃弾が炸裂した。
 
               ◇

156

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 ディファイアントの修理用通路。
「ソヴァル、こちら、終わりました。転送の準備をしてください!」と、
ドクター。
 タッカーは、修理用通路から、ドクターに飛びかかった。
「きさま、いったい、なにをした?」と、タッカー。
 
               ◇
 
 ディファイアントのブリッジ。
 アーチャーとホシサトウが、戻ってきた。
「武器を起動しろ!」と、アーチャー。
「すべてが、停止しています!」と、軍曹。
 アーチャーは、パネルをたたいた。
 
               ◇
 
 アベンジャー号のブリッジ。
「砲撃を続けろ」と、ソヴァル。
 

158

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               ◇
 
 ディファイアントの修理用通路。
 タッカーは、ドクターを倒した。
 リレーを、4組とも元に、戻し始めた。
 
               ◇
 
 ディファイアントのブリッジ。
「主要システムが、戻り始めました」と、軍曹。
「シールドも使えるな?」と、アーチャー。「ただちに、起動!」
 
               ◇
 
 アベンジャー号のブリッジ。
「フロックス」と、ソヴァル。「パワーが戻ったぞ!なにを、した?」
 
               ◇
 
 ディファイアントの修理用通路。

160

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 ドクターは、倒れていた。
 タッカーは、リレーを元に戻した。
「ドクター、答えろ!」と、ソヴァル。
 
               ◇
 
 ディファイアントのブリッジ。
「武器、オンライン!」と、軍曹。
「アベンジャーに派遣した士官たちを、転送で戻せ!」と、アーチャー。
「収容完了!」
「アベンジャーを、破壊しろ!」
 ディファイアントは、下から、フェーザーと魚雷で、アベンジャー号
を攻撃した。
 アベンジャー号は、機関部が爆発した。
 
               ◇
 
 アベンジャー号のブリッジ。
「射程領域外へ、退避!」と、ソヴァル。「全パワーを防御へまわせ!」
 ブリッジでは、柱がいくつか倒れてきた。

162

161





 
               ◇
 
 ディファイアントのブリッジ。
「被害は、甚大じんだいです」と、ホシサトウ。
「やつら、逃げる気ですよ」と、軍曹。
「光子魚雷、用意!」と、アーチャー。「リアクターを、ねらえ!」
 
               ◇
 
 アベンジャー号のブリッジ。
 炎の中、緑の肌の女性仕官が、倒れていた。
「ウォォォー」と、ソヴァル。
 ディファイアントの光子魚雷が命中すると、アベンジャー号は爆発し
た。
 





164

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            エピローグ
 
 アーチャー船長の室。
「忘れる前に」と、アーチャー。
「うん?」と、ホシサトウ。
「頼みがある。あす、朝イチで、歴史ファイルを消してくれ!これ以上、
だれにも、知られたくないからな!例の、惑星連邦なんて、存在は!」
 ホシサトウは、テーブルに用意してあった、2つのシャンパングラス
を持ち上げた。
「もうひとつの宇宙のデータなんて、全部、消せばいい!」
「その通り!」
 ふたりで、乾杯した。
「艦隊は、二日ふつか後には、地球に戻るわ。指揮官たちの、支持を、得られ
る?」
「全員、皇帝に、忠実だ。だれが、皇帝になろうとな。艦隊が着くころ
には、すでに、もう、誕生してるさ。このジョナサンアーチャー皇帝の、
支配が!反乱軍を鎮圧したら、わが帝国の規模を、さらに━━━」
 アーチャーは、シャンパンの毒がきいてきて、イスから落ちた。
「大丈夫?」と、ホシサトウ。
 ホシサトウは、立ち上がって、ドアをあけた。

166

165





 軍曹が入ってきた。
 アーチャーは、軍曹を見上げてから、息えた。
 
               ◇
 
 ディファイアントは、地球の軌道に入った。
 ディファイアントのブリッジ。
 ドアがあいて、軍曹に護衛された、ホシサトウが入ってきた。
「ガードナー元帥に、つないで」と、ホシサトウ。船長席で足を組んだ。
「回線、オン!」と、通信仕官。
「こちらは、宇宙船、ディファイアント。ただちに、降伏しなければ、
地球を攻撃する。応答せよ!」
 スクリーンに、ガードナー元帥が映った。
「アーチャーは、どこだ?」と、ガードナー元帥。「おまえは、なにも
のだ?」
「帝国の新たなる、皇帝、ホシサトウです。今後は、わたしに、服従な
さい!」
 
 
                  (第四_五_三話 終わり)

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