心の傷を越えて
               ブライアンフラー、ハリードックロア
                
            プロローグ
 
 ホロデッキ。
 イタリアのレオナルドダヴィンチの工房。
 き掛けのモナリザの肖像画が無造作に置いてあった。
「見かけほど、難しくはないわ」と、ジェインウェイ。セブンに、粘土
細工を教えていた。「一番大事なのは、粘土をこわがらないこと。こわいも
のなどない。失敗するのをおそれてはだめってことよ!粘土には、心に浮
かんだイメージがそのまま現われるの。すべては手と、この粘土にまか
せること。はい!」手を伸ばして、粘土をひとつかみセブンに渡した。
「やってみて!鼻をもう少し足したらどうかしら?」
 セブンは、渡された粘土を、作り掛けの顔の鼻のあたりに置いた。




2

1
























































「上出来だわ!」と、ジェインウェイ。「続けて!」
 セブンは、しぶしぶ粘土に触れたが、うまくゆきそうになかった。
「じつに、非生産的な行為だ」と、セブン。「なんの役にも立たず、な
んの成果も挙げられはしない。時間の浪費だ。くだらない!」
「それは個人の見方によるんじゃない?」と、ジェインウェイ。「わた
しは心が解き放たれるわ。リラックスできる」
 ジェインウェイは、しゃべりつつも、ヘラで粘土細工の顔の手直しを
始めた。
「そのリラックスという概念は、非常に理解し難い。わたしはボーグと
して、常に、任務を遂行し、ひとつが終わればすぐ、つぎへと移った。
効率的だ」
「同じことよ。わたしは一時いっとき、ボイジャーを忘れることで、仕事の効率
が上がるの」
 手を休めた。
「とてもレオナルド先生に見てもらえるシロモノじゃないけど、自分の
手でなにかを生み出してる瞬間が、一番幸せ」
 粘土細工の顔に布をかぶせた。
「この雑然とした室でか?」と、セブン。「古臭いオブジェが、無秩序
に散らかった環境で?」
「そうよ」と、ジェインウェイ。「24世紀から抜け出すのが、いい息

4

3
























































抜きになるわ。この雑然さこそが、わたしのイマジネーションを刺激し
てくれるの。あなたもなにか作れば?」
「わたしに」と、セブン。「ホロデッキのプログラムを組んでみろと言
うのか?」
「きっと楽しめるわ!自分のいろいろな力を発見できるはずよ。ボーグ
のままでは、決して見つけられないようなイマジネーション、独創力、
空想」
「なぜ、そんなものが必要なのか、分からない」
「必要ってわけじゃないの。でも、とても大切なものよ。イマジネーシ
ョンが心を解き放ち、ひらめきや解決策を与えてくれる。大きな喜びを
もたらしてくれる。人間に進歩が、心があるのは、イマジネーションの
おかげよ。わたしは昔、絵の勉強をしていた。モデルを使ったりもした
わ。レオナルドダヴィンチは、心のなの」
忙しいそがい男のようだ」
「そうよ、多作の芸術家で、科学者でもあったわ。はるか━━━はるか昔
のことよ」
 セブンは、天井からるしてある、大きな鳥のような翼のつばさ模型を見上
げた。
「そのデザインもすばらしいでしょ?」と、ジェインウェイ。「彼は、
飛行機の時代が来ることを、その、なん世紀も前に予見していたの」

6

5
























































 セブンは、模型を見上げたまま、全身を硬直させていた。
「セブン?」と、ジェインウェイ。
 セブンの過去の記憶がよみがえった。
「おまえを同化する」ふたりのボーグ。「抵抗は無意味だ。おまえの特
殊性はわれわれに加わる」
 ボーグをかき分けて、セブンは逃げた。
「アニカ〜!」父が呼ぶ声。
「おまえを同化する」ボーグの声。
 飛んで来るワタリガラスの翼のつばさ音。
「セブン!」と、ジェインウェイ。「どうしたの?」
「分からない」と、セブン。実際には、模型を見上げたままだった。
 ジェインウェイも、模型を見上げた。









8

7
























































            1
 
 医療室。
「これで3度目の体験だ」と、セブン。ドクターとジェインウェイに説
明していた。「場所も時間も特定はしている。浮かぶのは、いつも支離
滅裂なイメージばかり」
「詳しく話してくれ」と、ドクター。ハンディセンサーで、セブンを調
べ始めた。「一種の幻覚なんだね?」
「幻覚の経験はない。どうもボーグの船にいるようなのだが、わたしは
彼らをおそれている。3回とも同じだった。ボーグに追われ、同化を迫ら
れ、わたしは必死に逃げつつ、いつも同じ鳥を見る」
「鳥を?」と、ジェインウェイ。
「そうだ、大きな黒い鳥だ。わたしに向かって、飛んで来る、鳴きつつ」
「うん」と、ドクター。ハンディセンサーを見た。「心的動揺が現われ
ている」
「どういう意味だ?」と、セブン。
「きみの人間としての生理機能がよみがえり始めているんだ。心がさま
ざまな形で、支給しようとしている。そう、夢や幻覚、有眠時退行を通
してね」
「有眠時退行?」

10

9
























































「フラッシュバック。心的外傷のストレス傷害の可能性がある」
「無理ないわ」と、ジェインウェイ。「あなたはボーグに同化されてい
た。長期にわたった同化が、大きなトラウマになっているんだわ」
「わたしはボーグに育てられたんだ」と、セブン。「親同然の彼らを、
なぜ、恐怖を感じる?」
「分からん」と、ドクター。
「このようなフラッシュバックは、ずっと続くのか?」と、セブン。
「神経スキャンを続けるとしよう」と、ドクター。「ところで、消化組
織が復活したようだ。そろそろ固形や液体の栄養物をってみてはどう
かな?」
「食事は非効率的だ」と、セブン。
「そりゃ、ホログラムなら必要ないが、しかし、人間には必要なんだ。
必要な栄養物を、リストアップしよう。ニーリックスに渡すといい。彼
の料理はすすめられんが、仕方ない」ドクターは、リストを作るために、
自分のデスクに戻って行った。
「じつに、不快な感覚だ」と、セブン。「自分に起きていることが分か
らない。追い詰められいる気分だ」
「チャコティから、艦長」と、スピーカーから声。
「どうぞ」と、ジェインウェイ。
「お客さまがご到着です」と、チャコティ。「会議室におこしを!」

12

11
























































「すぐ行くわ」と、ジェインウェイ。それからセブンに。「ボーマーの
首相よ。彼らの領域を通過したいんだけど、なんやかや言って、承知し
てくれないの。考えを変えてくれないかと」
「わたしはここで、ドクターのリストを待つ」
「わたしがついてるわ」と、ジェインウェイ。「がんばりましょ!」セ
ブンの腕を軽く叩いて出て行った。
 
               ◇
 
 ボーマーの小型艇が3隻、首相一行を送り届けて、ボイジャーに伴っ
て飛行した。
 会議室。ジェインウェイとチャコティ、トムパリス。ボーマー側から
首相と副首相。
「それで、お考えいただけましたでしょうか?」と、ジェインウェイ。
「おめでとう艦長」と、首相。「検討した結果、ボーマー独立国は、あ
なたの船が領内を通過することを許可します」
「クルーを代表して感謝します。航海を3か月、短縮できますわ」
「もちろん、こちらの提示する条件に従えばの話ですが」と、首相。
「できる限り、ご協力いたします」
「当然だよ、艦長」と、首相。「領内では、ワープ3以上出してはなら

14

13
























































ん。武器システムはすべて解除したまえ。それから、不必要なスキャン、
調査活動はいっさい禁止する。絶対に領内で探査を試みないこと。また、
軍用機以外の船体との交渉を禁止する」
「船の進路は」と、副首相。「こちらで用意します」そういって、スク
リーンの前へ行った。描いた進路は、曲がりくねっていた。
 それを見たトムパリスは、艦長にささやいた。「なん週間かかるか、
分かりませんよ」
「なんか月かも」と、チャコティ。
「わがボーマーの領内や」と、副首相。「友人惑星や産業エリアを避け
て設定してあります。いかなる変更も、もちろん、認められません」
「きみらが自由に視察できるポイントも」と、首相。立ち上がってスク
リーンの脇へ行った。「全部で17か所用意した」
「ボーマー首相、ちょっとよろしいですか?」と、ジェインウェイ。や
はり立ち上がって、首相の脇に近づいた。「進路設定のご配慮は、感謝
いたしますが、でも、もしよろしければ、変更させていただけません、
もっと、短く」
 
               ◇
 
 食堂。

16

15
























































 セブンが食堂のドアを入った。
 ニーリックスは、それを見て、料理を中断して迎えに行った。
「おお、来た」と、ニーリックス。「こりゃまた、お珍しい、わが食堂
にようこそ!案内しようか?」
「生理機能が、固形栄養物を必要とし出したらしい」と、セブン。ハン
ディパネルをニーリックスに渡した。「ドクターが、必要な栄養素をあ
げてくれた。作ってくれないか?」
「ああ、じゃちょっと見てみよう」と、ニーリックス。リストを読み上
げた。「糖たんぱく250グラム、ポリペプチド53%、繊維質のグリ
コーゲン26%で構成されているもの━━━これじゃ、食欲がなくなる。
それよりオレが料理するシャドレカブは、栄養的にも問題ないし、それ
に作っているこっちまで喜びを味わえるってシロモノだ」
「喜びは必要ない」と、セブン。
「だけど、そりゃ違うだろ、うまいメシというものは、単に、栄養を摂
取するだけとはわけが違う」
「なにが違う?」と、セブン。
「そ、そりゃ、満足度に決まっているだろう?心のこもった料理は味が
違う。ま、一度食ってみりゃ分かるって!シャドレカブをどう調理する
かだが、ゆでるか焼くかいためるか」ニーリックスは、キッチンへ誘導
した。

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17
























































「調理は必要ない」と、セブン。
「必要あるんだな、これが」と、ニーリックス。「あんたは、もうなが
いあいだ、口からものを食べていない。少しでも消化しやすくしないと
な!蒸すか!」
 ニーリックスは、キッチンへ入って、調理を始めた。蒸気を上げる大
きなフライパンに、シャドレカブを投入した。「よし、と。このレシピ
は、うちの家族の秘伝のレシピってやつなんで、オレたちは先生だから
ね」
「タラクシア人」と、セブン。
「ああ、その通り」
「生命体218」と、セブン。
「そうだっけ?」
「おまえたちの特殊性は、すでにわれわれに同化されている」
 それを聞いた瞬間、ニーリックスは真顔になった。
「そりゃ、知らなかったな」と、ニーリックス。
「ドルマイン星域で、39人が乗った貨物船を襲ったのだ。簡単に同化
できた。高密度の筋肉組織は、ボーグにもってこいだった」
「そうか、そりゃよかった」ニーリックスは、皿に盛りつけた。「はい、
できあがり」
 料理をもって、セブンをテーブルに案内した。

20

19
























































 テーブルに料理の入った皿と、ナイフとフォークを並べて、中央に一
輪挿しを置いた。
「どうぞ」と、ニーリックス。
「なにがだ?」と、セブン。
「食べるときは、座るって決まっているんだ」
 セブンは、周りを見て、確かに、みんな座っていたので、しぶしぶニ
ーリックスの引いたイスに腰かけた。
「あの、どうかした?」と、ニーリックス。
「慣れていないだけだ」と、セブン。「ボーグは座らない」
「今日はまだ、一日目だからね」ニーリックスは、ナプキンをセブンの
膝に掛けた。
「じゃ、食べてごらん」セブンの向かいに座って、見守った。「ああ、
これ持って!」フォークを指差した。「それで料理を、すくうんだ。や
ってみて!そう、そうしたら、口へ運んで、シャトルベイに入って行く
みたいに。ファークだけ出して、口を閉じたままね、そうそうそう。か
んで!もぐもぐもぐ。もぐもぐもぐ。そして、飲み込む。だ、だから、
ごっくん」
「不思議な感覚だ」と、セブン。
「すぐ慣れるよ!もっと食べて!」
 もう一口食べると、セブンは動かなくなった。

22

21
























































「ほ、ほかのもん、持ってこようか?少しお茶でも飲もう?」
 セブンは静止したまま、ボーグの叫び声を聞いた。フォークを持った
腕に、黒のナノプローブが現われて、花を咲かせた。セブンは痛みを感
じて、腕をつかんだ。
「おまえを同化してやる!抵抗は無意味だ!」セブンは立ち上がって、
ニーリックスを突き飛ばして食堂を出て行った。
 ほかのクルーたちは「今の見た?」と言って、ニーリックスを助けに
来た。


            2
 
 ボーマーの小型艇3隻は、ボイジャーに伴って飛行した。
 会議室。
「このコースでしたら、条件に合います」と、チャコティ。ぐにゃぐに
ゃのコースの上に、ほぼ直線のコースを示した。「友人惑星からは、3
光年は離れている」
「話にならん」と、首相。「これでは、アグラットモット星雲を通るこ
とになる。あそこは、ナソーディとの貿易交渉のキーになる」
「星図を作ってみます?」と、トムパリス。「できるだけ、そこを避け

24

23
























































て━━━」
「失礼だが」と、副首相。「あなたの翻訳機は、故障してるのかな?」
「艦長、至急、ブリッジへ」と、スピーカー。
「ちょっと失礼しますわ」と、ジェインウェイ。ブリッジへ向かった。
 
               ◇
 
 ブリッジ。
「報告!」と、ジェインウェイ。緊急事態を示す赤ランプが点滅するブ
リッジに入った。
「保安部員から通報があり」と、トゥヴォック。「ニーリックス及びク
ルー3名が、セブンの攻撃を受けました」
「ジェインウェイからセブン」と、ジェインウェイ。呼びかけた。「セ
ブン、聞こえたら応答してちょうだい!」
「現在位置は?」と、チャコティ。
「第6デッキ、セクション28」と、トゥヴォック。
「すぐに向かえ!」と、チャコティ。トゥヴォックが出て行くと、保安
パネルについた。
「艦長、なにかあったんですか?」と、首相。副首相とともにブリッジ
に来ていた。

26

25
























































「こっちが聞きたいですわ」と、ジェインウェイ。「チャコティ、第6
デッキ、封鎖!」
 
               ◇
 
 通路。
 セブンが歩いて行くと、ボーグがふたり歩いて来た。
「セブン」ボーグの声。「おまえを同化する。抵抗は無意味だ。抵抗は
無意味だ」
 セブンは、保安部員がふたり立っている方へ歩いて行き、フェーザー
で腕を撃たれる。すぐに防御シールドでおおって、平然と歩いて行った。
 
               ◇
 
 ブリッジ。
「保安部から艦長」と、スピーカー。「セブンオブナインを発見。ボー
グシールドで武装し、フェーザー銃も効果ありません」
「了解」と、ジェインウェイ。「ブリッジより全保安部員へ。フェーザ
ー銃の周波数はランダムにセット、ただし、麻痺以外は使用禁止よ」
「ボーグ?」と、首相。「船内にボーグがいるのか?」

28

27
























































「彼女は、もう、クルーの一員です」と、ジェインウェイ。「集合体か
らは、解放しました。もうボーグではありません」
「では、なぜ、ボーグシールドを装備している?」
「分かりません」
 
               ◇
 
 通路。
 セブンは、歩いて行くと、シールドが張られていたが、平気で歩いて
行った。
 
               ◇
 
 ブリッジ。
「セキュリティフィールドを突破されました」と、チャコティ。ジェイ
ンウェイも横から、保安パネルを見た。「武器庫に侵入しています」
 
               ◇
 
 通路。

30

29
























































 セブンは、フェーザーライフルを構えたまま、武器庫から出て来ると、
ターボリフトに乗り込んだ。
「第10デッキ!」と、セブン。すぐにパネルに入力を始めた。
 
               ◇
 
 ブリッジ。
「セブンは、ターボリフトです」と、ハリーキム。
「ターボシャフトの電源を切って!」と、ジェインウェイ。
「ボーグコードで命令をブロックしています」と、ハリー。
「ジェインウェイからトゥヴォック!セブンは第10デッキへ向かって
いるわ。先回りできる?」
 
               ◇
 
 第10デッキのターボリフトのドア。
「現在、向かっているところです」と、トゥヴォック。「ここで待機!」
保安部員2人と、ドアを囲んで待機した。
 セブンが出て来た。
「武器を降ろし、後ろへ下がれ!」と、トゥヴォック。「撃て!」

32

31
























































 セブンは、フェーザーを受けても平然として、逆に、トゥヴォックと
保安部員2人を撃った。トゥヴォックは、寸前で身をかわした。セブン
は表情を変えずに、歩いて行った。
「トゥヴォックより、ブリッジ」と、トゥヴォック。「作戦は失敗です、
負傷者2名。セブンは、ジャンクション32アルファへ」
 
               ◇
 
 ブリッジ。
「シャトルベイね」と、ジェインウェイ。
「フォースフィールドを張りました」と、チャコティ。保安パネルを操
作した「ハリー、第10デッキにパワーを集中させろ!」
「完了」と、ハリー。
 
               ◇
 
 シャトルベイの入口。
 セブンは、手をかざすが、フォースフィールドがあったので、入口の
パネルに入力を始めた。
 

34

33
























































               ◇
 
 ブリッジ。
「シャトルへ転送する気です」と、ハリー。
 
               ◇
 
 シャトル内部。
 セブンが転送されて来た。
 
               ◇
 
 ブリッジ。
「サイトトゥサイトで転送したらしい」と、チャコティ。「すでにシャ
トル内です。エンジンを起動」
 ジェインウェイが隣りに来て保安パネルを見た。
「シャトルベイ封鎖」と、ジェインウェイ。
 シャトルベイのシャッターを破壊して、シャトルが発進して行った。
「トラクタービーム!」と、ジェインウェイ。
「効果なし」と、チャコティ。「シャトルシールドを増幅させています」

36

35
























































「艦長」と、ハリー。「ボーマースペースへ向かっています。ワープで
消えました」
「イオン粒子の痕跡を消していて」と、トムパリス。「追跡できません。
見失いました」






            3
 
 ボーマーの小型艇3隻は、ボイジャーに伴って飛行した。
 艦長室。
 ボーマーの首相と副首相、チャコティは、艦長室に集まっていた。
「彼女を全力で追っています」と、ジェインウェイ。艦長室に戻って来
た。「早期解決のため、ボーマースペースでの捜索を許可いただけませ
んか?」
「話を整理させてもらおう」と、首相。「きみらは無断で、わが領域に
現われ、領内を通過させろと言う。野蛮なボーグ一匹野放しにしたうえ、

38

37
























































今度をそれを見つける手助けをしろと?」
「今回のことは謝りますが」と、ジェインウェイ。「わたしたちは、だ
れも、野放しになどしていません。力を貸していただければ、この状況
をすぐに解決します」
「失礼だが」と、首相。「きみにはとても、その力があるとは思えん」
「わたしの船にいるということを、お忘れなく!」
「あなたのたった一隻の船を、わが軍が取り巻いていることも?きみの
ボーグは、すぐに見つかるだろう。わが軍がすでに追跡中だ」
「追跡?」と、チャコティ。「どうやって?」
「いかなる船も、物体も」と、首相。「宇宙のちりでさえ、わが領土内に
入り込んだ未確認のものは、ただちに境界線グリッドで追跡されること
になっているのです。ボーグは発見次第、抹殺━━━」
「首相!」と、ジェインウェイ。
「情報を共有するつもりはない」と、首相。「したがって、今後のきみ
らの船は、わが領域の境界線から5光年の位置にとどまり、わずかな異
動でも、われわれへの攻撃行為とみなす」
 それを聞いたジェインウェイは、表情を変えずに、チャコティに言っ
た。「副長、お客さまを転送ルームにお連れして!」
 
               ◇

40

39
























































 
 ボイジャーは、単独で飛行した。
「艦長日誌、補足」と、ジェインウェイ。「貨物室を隅から隅まで調査
するため、特別チームを組織した。過去2か月間、セブンオブナインの
室も同然だったこの場所なら、彼女の行動を解明する、なんらかの手掛
かりが見つかるに違いない」
 
               ◇
 
 貨物室。
 総勢30人のクルーが、貨物室を捜索していた。
「結構、ショックなんじゃない?」と、ベラナトレス中尉。ハンディセ
ンサーで調べながら、ハリーキム少尉に近づいた。
「どういう意味?」と、ハリー。ハリーも自分のハンディセンサーを出
した。「彼女は、ただの仕事仲間」
「なにをムキになってるわけ?」と、ベラナ。
「きみは誤解している」
「誤解してるって、どういう意味?」と、ベラナ。
「もう、いい」
 ベラナは、ボーグ再生装置の裏からなにかを見つけた。

42

41
























































「ね、これ見て!」と、ベラナ。置き時計のようなものをハリーに見せ
た。
「どうかした?」と、ジェインウェイ。貨物室に、様子を見に来た。ハ
リーから置き時計のようなものを渡された。
「ボーグのデータリンクです」と、ベラナ。「彼女の日誌も入力されて
います。ボーグの特殊コードで」
「ボーグ語には自信があります」と、ハリー。「翻訳しましょうか?」
「お願い」と、ジェインウェイ。置き時計のようなものをハリーに渡し
た。
「ボーマーには、よほど、嫌われたようです」と、チャコティ。貨物室
に入って来た。「1時間で、境界のパトロール船は2倍に、境界線グリ
ッドは36%パワーアップされました」
「ずいぶん手厚い歓迎ね!」と、ジェインウェイ。
「ドクターが、セブンの転送時データを分析しました」チャコティは、
ハンディパネルをジェインウェイに見せた。「見せたいものがあるそう
です」ジェインウェイは、ハンディパネルを一べつしただけでチャコティ
に返した。「仕方ありませんよ。彼女がボイジャーにいたがっても、ボ
ーグの部分が許さない。インプラントを取り除いても、彼女のコアの部
分は、集合体の一部なんです」
「いいえ、そんなことないわ」と、ジェインウェイ。ふたりでターボリ

44

43
























































フトの入口まで歩いて来て、乗り込んだ。
「第5デッキ」と、ジェインウェイ。
「ピピ」と、コンピュータ。
「セブンは心を開いていた」と、ジェインウェイ。「初めて、集合体の
外側の人間と接触を持ったの。この環境にもクルーにも適応していたわ。
なのに、どこへ?さっき、40光年さきまでスキャンしてみたけど、ボ
ーグ艦の痕跡はなかったわ。集合隊と接触できるはずない」
「ボーグススペースへ戻ろうとしているのでは?」と、チャコティ。
「1万光年も離れているのに?」と、ジェインウェイ。「まさか!別の
理由があるはずよ。なにか見逃しているはずだわ」
「今も、ボーマーが追跡中です」と、チャコティ。「捕まれば、戦闘は
必至です」
「どっちにしても、早く見つけなくちゃ」と、ジェインウェイ。ターボ
リフトを降りた。
 
               ◇
 
 医療室。
 ジェインウェイとチャコティが入って来た。
「見せたいものって?」と、ジェインウェイ。

46

45
























































「驚くべき発見です」と、ドクター。デスクの上のパネルを見せた。
「これは、セブンが最後に転送を試みたときの、身体データです」パネ
ルには人体のイラストが出ていた。「ご覧ください。脊髄とリンパ組織
中の、ボーグ細胞の濃度が、異常に高まっています。活動を休止してい
た細胞内のナノプローブが、再活動を始め、血球を生成し、新たなイン
プラントを作り出しているんです。3週間前に取り除いたボーグテクノ
ロジーの13%が復活するのは、時間の問題です」
「ナノプローブは休止していたと言ったな?」と、チャコティ。「なぜ、
再活動を?」
「分かりません」と、ドクター。「しかし、その生成は止められます」
ドクターは、ハイポスプレーにセットして、ジェインウェイに渡した。
「遺伝子再配列ベクターを、ハイポスプレーで注射し、ナノプローブを
中和するんです」
「まずは、これが打てる距離に行かなくちゃ」と、ジェインウェイ。
 
               ◇
 
 ブリッジ。
 ジェインウェイとチャコティが入って来た。
「報告」と、ジェインウェイ。トゥヴォックとトムパリスのいる保安パ

48

47
























































ネルに行った。
「境界線グリッドを分析しました」と、トゥヴォック。「精巧ですが、
弱点がないわけではない。グリッドを通り抜けるには、シールドの周波
数を、設定し直せばいいのです」
「問題は、エネルギーサインです」と、トムパリス。「ボイジャーでは
大き過ぎても、シャトルがある。シールド調整をおこない、エンジンを
パワーダウンさせれば、見つかることなく、ドリフトできます」
「よく発見したわ」と、ジェインウェイ。「進めて!」ドクターに渡さ
れたハイポスプレーを、トゥヴォックに渡した。「このハイポスプレー
を打てば、しばらく彼女を落ち着かせることができるわ。いったん境界
線を越えたら、ボイジャーとはいっさい交信しないこと。独断で行動を
!」
「艦長」と、トゥヴォック。「遺伝子の再配列も、効果がないかもしれ
ません」
「そうね」と、ジェインウェイ。「効果もなく、説得にも失敗した場合
は、いかなる手段を用いても、彼女を止めてちょうだい」
「分かりました」と、トゥヴォック。トムパリスといっしょに、シャト
ルベイへ向かった。
 
               ◇

50

49
























































 
 セブンの乗ったシャトルが飛行していた。
「セブンオブナイン」と、ふたりのボーグ。記憶が甦っよみがえた。「第12サ
ブジャンクション、グリッド92」セブンは、操縦席の下に隠れてひざ
抱えていた。「おまえを同化する」
 スクリーンが警告音を発した。
 セブンは、我に返って、スクリーンを見ると、100隻近いボーマー
艦隊が待ち構えていた。


            4
 
 セブンの乗ったシャトルは、ボーマー艦隊に向かって行った。
「ボーグの兵士よ」と、ボーマーの首相の声。「おまえはボーマーの領
域に無断で侵入した。エンジンのパワーを切り、シールドを弱めるのだ。
今からそちらへ向かう。これ以上の侵攻は許さん」
 セブンは、顔色ひとつ変えることなく、フェーザー攻撃とボーグシー
ルドで楽々艦隊を突破した。
 
               ◇

52

51
























































 
 
 トゥヴォックとトムパリスは、デルタフライヤーでセブンを追ってい
た。
「武器のサインを感知」と、トゥヴォック。「連邦とボーマーのものだ。
現在、ボーマー船5隻が漂流、ダメージ大、生命反応は安定」
「セブンのシャトルも確認」と、トムパリス。「ここから250万キロ
メートル先だ」
「進路を妨害しよう」と、トゥヴォック。
 デルタフライヤーは、セブンの乗ったシャトルの背後についた。
「セブンはインプラントで」と、トムパリス。「転送シグナルを妨害し
ているんだ。ロックできない」
「シールドを抜けられるよう」と、トゥヴォック。ハイポスプレーを確
認した。「転送装置を調整してくれ!」
「シャトルへ行く気か?」と、トムパリス。
「そうだ」
「やめた方がいいんじゃないか、トゥヴォック。ボーグ対バルカンの決
闘なんてさ。おまえにその気がなくても、彼女が跳びかかって来たらど
うする?」
「驚きという感情を制御できるよう祈ろう。ほかに考えが?」

54

53
























































「残念ながら、ない」
 スクリーンから警告音がした。
「武器を準備している」と、トムパリス。
「座標を、シャトル後尾に設定しろ!」と、トゥヴォック。
「いいぞ」と、トムパリス。
「転送!」
 
               ◇
 
 シャトル。
 後尾に、トゥヴォックが転送されて来た。
 セブンは、さらに後ろに待ち構えていて、バルカンつかみをしようと
するトゥヴォックを、逆にバルカンつかみで気絶させた。
 
               ◇
 
 デルタフライヤー。
「なにやってるんだ、トゥヴォック、応答しろよ」と、トムパリス。
 セブンのシャトルの後尾から攻撃を受けて、大きく揺れた。
「警告」と、コンピュータ。「推進システム停止」

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「ダム!」と、トムパリス。
 
               ◇
 
 シャトル。
 操縦するセブンの前に、ハイポスプレーが置かれていた。
 後方のトゥヴォックは、気が付いて、セブンに近づこうとするが、はば
まれる。
「レベル5のフォースフィールドだ」と、セブン。「気をつけた方がい
いぞ!」
「なぜボイジャーを去った?」と、トゥヴォック。
「わたしはボーグだ」と、セブン。
「かつてはな。だが、今は人間だ。クルーの一員でもある」
 セブンは、トゥヴォックの方を見た。「たしかに、一時は人間だった
が、やはり、わたしはボーグだと再認識した。わたしは常にボーグだ」
「再認識するに至った根拠は?」
「すべてのボーグ艦が、明確な共鳴波を送って来ている。集合体から離
れた兵士たちを導こうという」
「誘導ビーコンか?」
「そうだ。わたしは信号を追っている。ボーグ艦が待っているのだ」

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「さっきボーグ艦をスキャンしてみたが、いなかった」と、トゥヴォッ
ク。
「うそだ!彼らは来ている」セブンは立ち上がって、トゥヴォックの方
へ来た。「バルカン。生命体3259。肥大した新皮質は、高度な分析
能力をもたらす。おまえらの特殊性を同化する━━━」セブンは言いよど
んだ。
「セブン?」
「いや」セブンは後ろに下がった。「おまえは同化しない。集合体に戻
ったら、ボイジャーに帰してやる。艦長に事情を伝えておいてくれ!忍
耐と親切に感謝すると」
「おもしろい」と、トゥヴォック。「きみの行動は、愛情と感傷を表わ
している。人間の特徴だ。ボーグとは思えん。幻覚が見えるのじゃない
か?フラッシュバック」
「そうだ」と、セブン。
「それが見えるのは、共鳴波を感じるときか?」
「いや」
「セブンオブナイン」と、ボーグの声。「第12サブジャンクション、
グリッド92」
「また声が聞こえる」と、セブン。「わたしを呼んでいる。なぜだ?」
「説明はつく」と、トゥヴォック。「フィールドを弱めろ!ボイジャー

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に戻って、原因を解明するのだ。オレはきみの仲間だ。オレといっしょ
にボイジャーに戻ろう」
「戻るのは、集合体だ」と、セブン。また、操縦席についた。
 
               ◇
 
 ボイジャーは、単独で飛行した。
「艦長日誌、補足」と、ジェインウェイ。「この数日間のセブンオブナ
インの足跡、行動を追い続けているが、いまだに、彼女の行動の謎はつ
かめない」
 貨物室。
 暗い貨物室に、ハリーが入って来た。
「艦長、お邪魔でしょうか?」と、ハリー。艦長は、セブンの再生装置
に立っていた。
「いいえ、ハリー」と、ジェインウェイ。
「セブンの日誌を翻訳しました」と、ハリー。
「それで?」
「船を出るようなことは、書いてません。これと言って、特別なことは
なにも。日常業務のことや、機能回復の過程の記録、あとは、クルーの
行動についての個人的な感想を述べてあるだけです。オレのことも書い

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てありました。オレの行動は、非常に予知しやすいそうです。いろんな
意味で」ハリーは、ハンディパネルをジェインウェイに渡した。
「悪気はないはずよ。セブン流のほめ言葉かもしれないわ」
「最後だけが、ちょっと変わっているんです」
 ふたりは、座って、ハンディパネルを見た。
「奇妙なイメージの記述で」と、ハリー。「夢の記録かなにかだと思う」
「幻覚かしら?」
「かもしれません。ボーグ艦の中で、必死に逃げていたり、隔壁のうし
ろに隠れたり、シャフトが落ちたり、常に、ボーグに追われる悪夢のよ
うです」
「この鳥は?」
「なんども見ているようです、いつも襲いかかって来る、なんなんでし
ょう?」
「羽は黒く、翼は、およそ1・5メートル。目は黄色、鋭くとがったク
チバシを持っている。見つめられると、からだは麻痺し、動けなくなる。
わたしを知っているようだ。だが、それがなぜなのか分からない。あれ
はただの鳥だ。下等な生命体に過ぎない。だが、姿を見ると、怖ろしく
なる。なんの鳥のことを言ってるのかしら?カラス科には違いないと思
うのだけれど━━━ワタリダラス、RAVENのことを言ってるんだわ」
「心当たりが?」

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「セブンの行き先が分かったわ!」と、ジェインウェイ。立ち上がって、
ブリッジへ急いだ。
 
               ◇
 
 ブリッジ。
「チャコティ」と、ジェインウェイ。ハリーといっしょにブリッジに戻
った。「長距離センサーで、セブンとトゥヴォックが乗ったシャトルを
除いた、連邦の全艦船をスキャンしてちょうだい」
「艦長?」と、チャコティ。
「急いで!」と、ジェインウェイ。「発進準備をお願い。コースをボー
マースペースに設定して!」
「了解」と、操縦席の少尉。
 
               ◇
 
 セブンとトゥヴォックの乗ったシャトルは、惑星の衛星に近づいた。
「共鳴信号は」と、セブン。「衛星から発信されている」トゥヴォック
の方を見た。「ボーグは、そこにいるのだ━━━なにを、おそれているの
だ?」

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「怖ろしいなら」と、トゥヴォック。「ここを離れろ」
「一度集合体に戻れば、もう、おそれなくなる」
「フォースフィールドを消すんだ。オレもきみといっしょに行こう。ひ
とりでは危険だ」
「同化されるぞ」と、セブン。トゥヴォックを心配して、近寄って来た。
「それはないだろう」と、トゥヴォック。「ほんとうにボーグが待ち受
けているとは思えん」
「では、なにがあるというのだ」
「よく分からない。だから、それを捜しに行くのだ。きみといっしょに」
 セブンは、フォースフィールドを解除した。
 
               ◇
 
 デルタフライヤー。
「ボイジャーからパリス」と、ジェインウェイの声。
「はい、パリスです、艦長。待ちに待った声だ。トゥヴォックはセブン
といっしょです。しかし、彼女のシャトルに転送した以降、連絡が取れ
ていません。イエロードワーフ、第5惑星の衛星軌道上にある、Mクラ
スの月へ向かった模様です。地表から未確認の救命信号を感知しました。
不安定で正体は確認できません」

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               ◇
 
 ブリッジ。
「了解」と、ジェインウェイ。「あなたのシャトルに向かって、ボーマ
ー機が数機向かっているわ。コンディションは?」
「ワープエンジン停止。シールドは50%です」
「敵機を捕捉して!そっちへ向かうわ」
 
               ◇
 
 イエロードワーフ、第5惑星の衛星。
 切り立った峡谷ばかりの衛星。呼吸できる大気が存在し、朝霧が立ち
込めていた。
 セブンとトゥヴォックが、岩だらけの峡谷を登って来た。
「発信地が近い」と、トゥヴォック。ハンディセンサーを見た。
「ここだ、間違いない」と、セブン。
「行こう」と、トゥヴォック。セブンは、立ち止まった。「イヤなら、
シャトルへ戻ろう!」
「いや、捜さなくては」と、セブン。また、歩き出した。

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 高台に着くと、不時着した宇宙船がすぐ近くに見えた。
「あれは?」と、セブン。
「連邦の船だ」と、トゥヴォック。「ボーグに同化され掛かっている」
ハンディセンサーを見た。「生命反応はない。トリタニウムの状態から、
20年以上、放置されている」
 ふたりは、宇宙船の内部へ入った。内部は薄暗く、一部ボーグ船のよ
うだった
「覚えがある」と、セブン。操縦パネルが、グリーンに点滅していた。
「わたしを呼んでいた信号だ」埃だほこりらけのパネルを叩いて、信号を止め
た。
 記憶が甦っよみがえた。
「アニカ〜!」ボーグに引きずられる父。「逃げて〜!」
 パネルの下に隠れるアニカ。
「アニカ〜!」ボーグに捕まる母。「逃げて〜!」
 セブンは、よろめきながら、父と母を捜し始めた。
「パパ!ママ!」と、セブン。「助けて!」パネルの下に隠れて、腕を
体に回した。「うう〜」
「イヤ〜」叫ぶアニカ。
 ふたりのボーグに見つかった。手を伸ばして来るボーグ。
「セブン」と、トゥヴォック。「分かるか?」

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 セブンは静かになって、トゥヴォックを見た。ゆっくりパネルの下か
ら出て来た。
「ここだ」と、セブン。「わたしは、ここでボーグに同化されたのだ」
 壁にある船体名『THE RAVEN』の埃をほこり払った。
「わたしたちの船だ」と、セブン。「ここで、ここで暮らしていたのだ。
父は研究者だった。大切な実験をするために、ここまで来たのだ。ここ
で誕生日を祝った。ケーキには6本のローソクが立っていて、もう1本
立てるというとき、彼らがやって来た。パパは戦おうとしたが、かなわ
なかった。わたしは隠れた。小さいから見つからないと思っていた。だ
が、見つかった。それから、パパが墜落すると言った。男はわたしを抱
え、つぎの瞬間には、わたしはもうこの船にはいなかった━━━そして、
ボーグになった」
「不思議だ」と、トゥヴォック。「20年間発信し続けた共鳴信号を、
やっと盗知したのがきみだった」
 船体がゆれた。
「攻撃を受けている」と、セブン。
「ボーマーだ」と、トゥヴォック。「崩壊する。早くここを出よう」
 セブンとトゥヴォックは、崩壊する船体を避けて走った。
 
               ◇

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 ボーマー船が3隻、衛星に向けて攻撃していた。
 ボイジャーの巨大な船体が現われた。
「依然として、ボーマーから応答がありません」と、ハリー。
「攻撃に備えよ!」と、チャコティ。
「武器システムをねらって!」と、ジェインウェイ。
「トム、そっちはどう?」
「トゥヴォックとセブンを発見」と、トムパリス。「しかし、妨害が激
しく、現在、ロックを試みているところです」
 
               ◇
 
 イエロードワーフ、第5惑星の衛星。
 セブンとトゥヴォックが、崩壊する船内で逃げ回っていた。
「大丈夫か?」と、トゥヴォック。
「損傷はない」と、セブン。
 上方に明るい場所。
「出口は、ここだけだ」と、セブン。
「いや、ほかにもある」と、トゥヴォック。ハンディセンサーを見た。
「前方に外かくの裂け目がある。そこから脱出しよう」

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 船体の残骸が折り重なった場所。
「どけて!」と、トゥヴォック。ふたりで、残骸をどかし始めた。「急
いで!」
 
               ◇
 
 ブリッジ。
「2機を、沈黙させました」と、チャコティ。武器パネルを操作した。
「3機目が、いまだ、攻撃中」
「応答がありました」と、ハリー。「音声のみです」
「われわれに戦争を仕掛けているのか?」と、ボーマーの首相。
「選択の余地がなかったもので」と、ジェインウェイ。
「まもなく、援軍が到着する」と、首相。「おまえを壊滅させるぞ!」
「勝手にどうぞ」と、ジェインウェイ。「砲塔をねらって!」
 チャコティは、武器パネルを操作した。
 
               ◇
 
 イエロードワーフ、第5惑星の衛星。
「セブン、これをどかしてくれ!」と、トゥヴォック。

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 ふたりで瓦礫をどかすと、外への道がひらけた。
 急いで船外に出ると、船体は崖下へ転落して行った。
 セブンとトゥヴォックは、転送された。
 
               ◇
 
 ブリッジ。
「ふたりをロックしました」と、トムパリスの声。「ボイジャーへ帰還
します」
「了解、トム」と、ジェインウェイ。「ご苦労さま」チャコティの方を
見た。チャコティは、安心した素振りを見せた。
「ボーマー艦隊が接近中」と、ハリー。「68隻です」
「少尉」と、ジェインウェイ。操縦席の少尉に。「トムパリスのシャト
ルが帰還次第、ボーマースペースを脱出して!ワープ8で」
「了解」と、操縦席の少尉。
「今回は」と、ジェインウェイ。「近道できそうにないわ」





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            エピローグ
 
 ホロデッキ。
 イタリアのレオナルドダヴィンチの工房。
「そこにいたの?」と、ジェインウェイ。天井近くで、翼の模型を見て
いるセブンを見つけた。「ドクターがインプラントの調整をしたいって
言ってるの。そうすれば、もう、誘導シグナルを受信しなくて済むらし
いわ」
「ありがとう」と、セブン。天井近くで模型を見ていた。「無断で、プ
ログラムを使わせてもらった」
「いいのよ」
「あなたは、この前、言っていた。ここが、イマジネーションを刺激す
る場所だと」階段を下りて来た。ランプの火が燃えていた。
「効果は、あった?」
「分からない。ただ、さっきから、シナリオを作っている。もう一つの
可能性もある。もし、ボーグと遭遇していなかったとしたら、どうなっ
ていたのかと。両親に育てられ、教えられ、彼らにたくさんの影響を受
けていたなら」
「あなたもよ。彼らに影響を与えていた。もし、ご両親のことが知りた
ければ、連邦のデータベースに情報があるわ」

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「情報が?」
「有名な方たちだったそう。型破りな発想で、ユニークな科学理論を打
ち立てていたらしい。ボイジャーでさえ最大ワープで70年はかかるこ
のボーマースペースまで、数年でやって来れた謎もあるし、ぜひ、読ん
でみるとよい。きっと、イマジネーションを刺激される」
「そうかもしれない。いつかな。おやすみ、艦長」セブンは、ホロデッ
キを出て行った。
 
━━━ボイジャーは、ふたたび、アルファ宇宙域への、帰還の旅へ。
 
 
 
                  (第四_二_二話 終わり)








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