過去を救いに来た男
               ブラノンブラガ、ジョーメノスキー、
               リックバーマン
            プロローグ
 
 氷の惑星。
 そこへ防寒服を着た、ふたりの男が転送されて来た。ひとりがハンデ
ィセンサーで目的地を確認し、ふたりで向かった。地面は氷で覆われ、
雪が舞っていたが天候は良かった。
 目的地に着くと、電子杭を刺し、通信マイクで知らせた。
「バックボウ!」
 画面が引くと、そこは凍った浅い湖の上で、湖底に沈んだ巨大なボイ
ジャーの機影が見えた。
「氷の状態は安定している」と、ハリーキム。センサーを見ながら。
「中へ転送してくれ!」と、チャコティ。通信マイクに。




2

1
























































「了解」と、通信マイク。
 腕の裾に付いた懐中電灯で照らしながら、通路を歩いて来た。
「ここだけでも、だいぶ、違う」と、ハリー。ふたりとも頭と口のおお
を取った。
 通路脇のコントロールパネルを見つけて、ハリーは起動した。パネル
は作動した。
「パワーグリッドがいかれているな」と、ハリー。パネルを操作しなが
ら。「ニューラルジェルが完全に凍っている。9から14デッキは、つぶ
れてしまってるし、第10デッキしかない」
「エンジン全開のまま突っ込んだか?」と、チャコティ。「EMHは?」
「医療室にアクセスしている。反応がない、パワーが落ちる」
「パワーセルをリセットしろ!」
 チャコティも応援しようとしたが、バネルのパワーは落ちて、画面は
暗くなった。
「カモ〜ン!」と、ハリー。
「先へ行こう」と、チャコティ。「通信リンクがあるはずだ」
 ハリーがブリッジの戸を手で開けて入ると、雪が積もって、なん人も
の乗員が倒れていた。
 チャコティは、凍結した制御通路を、四つん這いになって進んだ。
 ハリーは、雪で覆われたブリッジを調べた。パイロット席には、トム

4

3
























































パリスがこちらを見ながら凍り付いていた。艦長は、スクリーンの前で
あおむけに倒れていた。ハリーは医療室まで来ると、コンロールパネル
に、ハンディパワーグリッドを装着させてパワーを送った。
 チャコティは、天体測定ラボにたどり着いて、倒れているセブンオブ
ナインを見つけた。
「チャコティよりテッサ!」と、チャコティ。通信マイクに。
「どうしたの?」と、テッサ。周回軌道のシャトルから。
「見つけた。転送リレーをロックして、そちらのラボに収容してくれ」
「スタンバイ」
「急いでくれ!」と、チャコティ。そして自分に。「楽しい再会じゃな
いがな」
「ロックした」と、テッサ。セブンを転送した。
 ハリーは、医療室のパネルを操作した。
「緊急事態の概要を━━━」と、ドクター。起動された。
「久しぶりだな」と、ハリー。
「少尉!」と、ドクター。
「今はただのハリーさ」と、ハリー。「長い話さ。モバイルエミッター
は?」
「船はどうなったんだ?クルーは?」
「時間がない!エミッターは?」

6

5
























































「この中だが」と、ドクター。凍った台を指差した。
 ハリーは、氷を叩いて、エミッターを取り出した。「ホラッ!付けろ、
行くぞ」
「待って!どういうことか説明してくれ!」と、ドクター。
「教えよう!」と、チャコティ。医療室に入って来た。「オレたちは歴
史を変えに来た」
 ドクターは、なにも言わずに立ちつくした。



            1
 
 15年前。機関室に多くの乗員が集まって、新型のコアドライブの完
成を祝っていた。紙吹雪が舞い、みんな拍手していた。ベラナはシャン
パンのビンを、コアドライブの手すりにぶつけて威勢よく割った。トゥ
ヴォックも拍手した。
「みんな聞いて!」と、ジェインウェイ艦長。「静かに!紹介します。
これが次世代の恒星間飛行推進エンジン。量子スリップストリームドラ
イブよ」みんな歓声を上げた。「4年と2か月、11日。デルタ宇宙域
に来て以来、長い日々が過ぎたけど、われわれはこのかん、宇宙探査でフ

8

7
























































ロンティアを前進させた。さらに大事なのは、生き延びたこと。でも、
地球に帰る時よ!」また、歓声。「パーティを楽しんで!でも、明日の
フライトまでには、山ほど仕事があるわ!シャンパン飲み過ぎないでよ」
ベラナも笑った。
 艦長とチャコティは、先に、通路を帰って行った。
「量子マトリックス」と、ジェインウェイ。チャコティに。「ベナマイ
トクリスタル、それに、ボーグのテクノロジーよ、艦隊がなんて言うと
思う?」
「文句は出ないでしょう」と、チャコティ。「はつのスリップストリーム
ドライブが、コックレイン賞にノミネートされますよ」
「授賞式のスピーチを考えなきゃ」
「ボーグに感謝しなければ」
「夕食はなにか?」と、ジェインウェイ。
「そうだな、リプリケータかな?」
「キャンセル!命令よ!」と、ジェインウェイ。
「了解、艦長」と、チャコティ。
「ベラナ!」と、ニーリックス。コアドライブのパーティで、ベラナの
ところへ。「オレもなにか協力したいと思ったんだ」ニーリックスの手
に、死んだ大きな昆虫。
「ありがとう」と、ベラナ。「でも、なに?」

10

9
























































「タラクシアンケバイだよ」と、ニーリックス。「オレの星じゃあ、宇
宙旅行の守り神って言われている。もしこいつが船にこっそり忍び込ん
でたら、その船は安全なんだ。オレはずっとこいつと飛んでた。エンジ
ンルームに6年、吊るしてあったんだ」
 ベラナは、おそるおそるケバイをつまんだ。「か、かわいい!」
「きみは、つぎつぎ」と、トゥヴォック。「驚きの種を提供してくれる
ね」
「そう言われると照れるな」と、ニーリックス。トゥヴォックに触れて、
食堂へ戻って行った。
 セブンがシャンパングラスを右手で持ちながら、左手のインプラント
を気にしていた。
「セブン」と、ドクター。
「ビジュアルプロセッサーと運動皮質が変だ」と、セブン。「機能異常
を起こしている」
「皮質インプラントに問題が出たなら」と、ドクター。ハンディセンサ
ーを出した。「チェックしてみよう」セブンはふらふら歩いた。「じっ
として!」
「足元がフラつく」と、セブン。
「酒に酔ってる?」と、ドクター。ハンディセンサーを見ながら。
「ありえない」と、セブン。

12

11
























































「血中シンセオール濃度が、0・05.シャンパンをなん杯飲んだんだ
?」
「1杯」と、セブン。
「ボーグは酒に弱いらしい」と、ドクター。「医療室へ行こう!イナプ
ロバリンを処方しよう」
「わたしは、おまえの指示通り社交術を磨こうとしていたのだ」
「ああ、見事にやってるね」
「お、おまえは、常に、尽力を惜しまず支援してくれる。よき指導者だ」
「そうとも」
「われわれは同志だ!同志なんだ!」セブンはドクターの胸を叩きなが
ら、医療室へ向かった。
「あれ、見たかい?」と、ハリーキム。トムパリスに。「うん?」
「われらのドローンも」と、ハリー。「パーティで少しはしゃぎ過ぎた
ようだな?おまえは、いつ、仲間に入るんだ?」
「すぐに」と、トム。パネルに向かっていた。
「なんで今頃、ワープドライブのチェックなんか?」
「ハリー」と、トム。パネルから顔を上げた。「こいつはリコールもの
だ」
「なに?」
「欠陥車だ。このまま放っておけば、大事故になる。夕べ、フライトシ

14

13
























































ミュレーションをしてみたが、スリップストリームに入るときに、位相
変動が0・42に上がった」
「0・42?それは今さらだが、もっとひどいときもあるぜ」
「スリップストリームのど真ん中で、ぶち当たったら?」
 ハリーは、シーッとするしぐさをした。
「量子マトリックスがオーバーロードになる」と、トム。
「艦長には言った?」と、ハリー。
「まだだ」と、トム。「みんな期待で沸き立っている、確証がないとな」
「トム、もし気が済むんなら」と、ハリー。「いっしょにホロデッキへ
行って、もっとシミュレーションすべきだ、センサーの不調だろ」
 
               ◇
 
 第2ホロデッキ。
「正常エンジン、全開!」と、トム。パイロット席で。
「スリップストリームドライブ起動!」と、ハリー。自分の席のパネル
で。「量子フィールド安定。ディフレクター、最大出力」
「スリップストリーム突入まで、4秒」と、トム。「3、2━━━」
 スクリーンにスリップストリームの流れが映し出された。
「動力安定」と、トム。「量子フィールドも維持している」

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15
























































「シールド73%」と、ハリー。
「いいかんじだ」と、トム。「ディフレクター微調整━━━」
 警告音がして、ブリッジの照明が暗くなった。
「位相変動があった、0・1、0・2」と、ハリー。
「ディフレクターを調整しろ」と、トム。
「変化なし、0・4」
「スリップストリーム停止」
「待て、量子フィールドを維持してみる」
「ムダだね。スリップストリームが崩壊している」
 スクリーンの流れが消えて、暗い画面になった。
「慣性ダンパーに異常発生」と、トム。
「警告」と、コンピュータ。「第10ブリッジ、船体崩壊」
「船体構造が維持できない」と、ハリー。
「コンピュータ、プログラム停止!」と、トム。
「つぎは」と、ハリー。「非常用パワーをもう少し早くディフレクター
に回せば」
「同じことだ」と、トム。ハリーのパネルまで歩いて行った。
「コンピュータ、プログラム再開、タイムインデックスは」と、ハリー。
「コンピュータ、今のは撤回だ」と、トム。そしてハリーに。「これ以
上やってもムダだよ」

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17
























































「ここで投げ出せないだろ?」
「23回シミュレーションして、全部大惨事に終わってんだ。これは、
センサーの不調なんかじゃない。みんなに言おう」
 
               ◇
 
 機関室。
「そんなわけない」と、ベラナ。艦長や上級士官も立ち合っていた。
「エンジンの部品、1つ1つ、これテストしたのよ」
「オレだって悔しいよ」と、トム。
「シミュレーション結果を検証させろ!」と、セブン。
「第2ホロデッキだ、自分でやってみろ」と、トム。「なん十回爆死し
ても構わないなら」
「私もデータを見ました」と、チャコティ。「明日の朝、フライトすれ
ば、午後には脱出ポッドでしょう」
「中止にするしか道はないでしょうね」と、トゥヴォック。
「もしくは」と、トム。「ハリーのアイデアです」
「なんなの?」と、ジェインウェイ。
「きわどいんですが」と、ハリー。「可能性はあると思うんです。トラ
ブルは、だいたい17秒後に始まります。位相変動が起きて、ストリー

20

19
























































ムが不安定になったら、だれかがシャトルで前を飛んで、その急流を乗
り切ればいいんですよ」
「そう」と、ベラナ。「シャトルでスリップストリームの変動を読み取
って、ボイジャーにフェーズ修正値を送ってもらえばいいんです。それ
なら、行けるわ」
「でも」と、ハリー。「ここがきわどいんです。シャトルは、ボイジャ
ーのほんの2・3秒前を飛ぶことになります。修正を間に合わせるには
ぎりぎりの時間です」
「トム?」と、ジェインウェイ。トムを見た。
「2・3秒か」と、トム。
「絶対成功しますよ」と、ハリー。「シャトルで飛ばさせてください。
スリップストリームを乗り切れます」
 ジェインウェイは、ベラナと顔を見合わせた。
「それしかないでしょ?」と、ハリー。「あきらめるんですか?長いこ
と掛かったのに!」
「もともと非常に実験的なエンジンだ」と、トゥヴォック。「中止も視
野に入れるべきだろう」
「エンジンの中は」と、ハリー。「ベナマイトクリスタルが崩壊し始め
てる、また、合成するには、なん年も掛かります。みんなはどうかしれ
ないけど、今まで必死にやって来たことを、たった0・42の位相変動

22

21
























































であきらめられませんよ」
 ハリーの剣幕に、みんな黙った。
「すいません、艦長」と、ハリー。声が大きくなったことを詫びた。
「いいのよ」と、ジェインウェイ。「分かったわ、少尉。試す価値はあ
る。フライトプランを出して。1時間以内に持ってくるのよ」
「分かりました」と、ハリー。
「それを見て決めましょう」ジェインウェイは、艦長室に戻って行った。
 
               ◇
 
 艦長室。
 チャコティとのディナーの用意がしてあった。チャイムが鳴った。
「入って」と、ジェインウェイ。チャコティが入って来た。
「副長、まだ、食欲はある?」
「腹ぺこですよ」と、チャコティ。「でも、スリップストリームの件で
呼ばれたと思っていました」
「ディナーをふいにしたくはないわ」
 チャコティはテーブルについた。
「祖母が」と、ジェインウェイ。「地球でよく作ってくれたメニューに
したのよ、野菜ビリアーニ」

24

23
























































「うまそうだな、料理できたんですね?」と、チャコティ。
「普段は、コーヒー入れるくらいだけど。記念すべき日よ」
「え?」
「デルタ宇宙域、最後の夜。記念しなくちゃね」
「決めたんですね?」と、チャコティ。
「明日、午前8時に出発よ。ハリーと、デルタフライヤーに乗って。ボ
イジャーはすぐ後ろを飛ぶわ」
「クルーは喜びます」と、チャコティ。ナプキンを広げて膝に掛けた。
「あなたから、知らせてもらうわ」と、ジェインウェイ。「デザートの
あとでね。チャコティ、あなたは、あなたはどう思う?」
「ハリーのプランを見ました」と、チャコティ。ハンディパネルを出し
た。「理論は正しくても、不確定要素が多すぎます。1つ予想外のこと
があれば━━━」
「あのエンジンを試す最後のチャンスかもしれない」と、ジェインウェ
イ。
「でも、このデータを艦隊のエンジニアに見せたら、正気じゃないと思
われますよ。帰る方法は、まだある。リスクも大き過ぎます」
「ずいぶん待ったわ」と、ジェインウェイ。「リスクは分かってる。こ
れまでで最大だわ。でも、賭けたいの。ついて来てくれる?」
「もちろんです」

26

25
























































「リスクと言えば」と、ジェインウェイ。「手料理を試す勇気ある?」
「すりったおんときます」と、チャコティ。ハンディパネルをテーブル
に置いた。
「フフフ」と、ジェインウェイ。
 そのハンディパネルが、今もテーブルに置かれたまま、凍りついて雪
が舞っていた。




            2
 
 小型シャトルは、氷の惑星の周回軌道を飛んでいた。
「15年ってるって?」と、ドクター。
 ハリーキムとチャコティは、防寒服を脱いでいた。
「プラマイ2・3週間だ」と、ハリー。
「ここはどこです?」と、ドクター。
「タカラ星域、アルファ宇宙域のすぐ外だ」と、チャコティ。
「クルーは?」と、ドクター。
「オレたち以外は、死んだよ」と、ハリー。

28

27
























































「艦長は、この星に」と、チャコティ。「緊急着陸しようとしたんだろ
う。だが、船が衝撃に耐えられず、墜落の衝撃でみんな死んだ」
「あんたはこの15年、氷河の中に埋まってたんだ」と、ハリー。
「きみたちふたりは」と、ドクター。「ボイジャーの前を、デルタフラ
イヤーで飛んでた。帰れたんだな?」
「遥か地球までな」と、ハリー。「故郷へ帰ったよ、仲間全員を殺して、
やっとね」
「ハリー!」と、チャコティ。
「艦隊は捜索したんだろ?」と、ドクター。
「艦隊か」と、ハリー。「艦隊は、もう9年も前にボイジャーの捜索を
打ち切ったよ。オレたちが見つけんだ」
「そうか」と、ドクター。「言えるのはひとことです。ありがとう、永
遠に氷ったところにいるところでしたよ」
「おまえを回収しに来たんじゃない」と、チャコティ。「この事故が起
こるのを防ぎに来たんだ」
「ドクター」と、ハリー。「15年前、オレは、スリップストリーム変
動値を計算し間違えて、間違った修正値をボイジャーに送信したよ━━
━ボム!」ハリーは手を広げた。「ボイジャーは一瞬でスリップストリ
ームをはじき出されたよ。キム少尉のおかげさ。オレはあのときなにを
間違えたのか、ずっと考えてきた。答えはもう分かったよ。だから、オ

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29
























































レたちはボイジャーに新しい修正値を送るんだ」
「でもちょっと」と、ドクター。「遅すぎやしないか?」
「過去のボイジャーと交信する方法を見つけた」と、チャコティ。「事
故の直前のな」
「やらないよりましだ」と、ハリー。
「過去へメッセージを送るんですか?」と、ドクター。
「ああ、そうだ」と、チャコティ。
「どうやって?」と、ドクター。
 ハリーはなにも言わずにパネルを叩くと、引き出しからセブンが横た
わった寝台が現われた。
「どういうことなんです?」と、ドクター。
「彼女のインプラントに」と、チャコティ。「トランシーバーがある、
ほかのドローンとの交信用にな」
「ええ、脳内ビーコンと呼ばれているものです」と、ドクター。
「それを取り出して」と、チャコティ。「トランスリンク周波数を割り
出して欲しんだ」
「それはできますけど」と、ドクター。「保存状態はいいようです」
「それで」と、チャコティ。「メッセージの送信先が分かればな。問題
なのは、どの時代へ送るかだ。ゼブンのクロノメーターノードにアクセ
スして、サイバネティックインプラントが有機システムと絶縁した時間

32

31
























































を割り出すことはできるか?」
「死亡時刻ですね?」と、ドクター。
「できれば、ミリセカンドまで頼む」
「やってみましょう」と、ドクター。
「便利だって言ったろ!」と、ハリー。ドクターの腕を叩いた。
「フフ」と、チャコティ。
「過去のセブンと交信する方法があるんですか?」と、ドクター。「ど
うやって?」
 チャコティが目くばせすると、ハリーは装置を見せた。
「これだ」と、ハリー。「救出コンポーネント36698.ボーグの時
空トランスミッターだ」
「艦隊情報局が」と、チャコティ。「ベータ宇宙域で、ボーグキューブ
の残骸から見つけた」
「それを盗んだ」と、ハリー。
 テッサがラボに入って来た。「たいへんよ、長距離センサーが艦隊の
船を感知した」
「時間はどのくらいある?」と、チャコティ。
「低軌道に入ったし、シールドも調節したけど、見つかるのは時間の問
題。運が良くて、6時間」
「はっきり訊いていいかね?」と、ドクター。「きみたちは追われてい

34

33
























































るのかね?」
「銀河一のお尋ね者」と、ハリー。「このデルタフライヤーも盗んだ。
宇宙艦隊の造船所からな。2つの反逆罪で指名手配、しかも、時空保護
条例に違反しようとしている」
「すばらしい、冷凍庫から出たら、火事だ」
「しゃべってる時間はない、掛かってくれ!」と、チャコティ。
「了解」と、ドクター。
「おれたちは、センサー記録を取りに行って来よう」と、チャコティ。
テッサに。「用意しろ!」
 テッサは、防寒服を着始めた。「こんにちわ、ドクター」
「どこかで?」と、ドクター。ハンディセンサーでセブンをながら。
「いいえ」と、テッサ。「でも、友達みたいなかんじ、テッサオマンド
よ」
「よろしく」と、ドクター。
「やっと会えて光栄、ボイジャーの悪名高いEMH」
「悪名高い?」
「いろいろ聞かせたからな」と、ハリー。パネルを操作しながら。
「ほんとうは、いつも、あなたをほめていたのよ」と、テッサ。
「きみはまたどうして」と、ドクター。「このボニーとクライドの仲間
に?」

36

35
























































「ボイジャーには前から、興味深々だったから」
「ふたりはできてる」と、ハリー。
「なに?」と、ドクター。
「チャコティとテッサだよ」と、ハリー。「離れられない仲だよ」
「正直言えばね、チャコティとハリーだけで来させることできなかった。
手伝いたいの」
 別のドアが開いて、防寒服のチャコティが顔を出した。「いいか?」
「風邪引くな!」と、ハリー。
 チャコティとテッサは、転送室に向かった。
 
               ◇
 
 凍結したボイジャーのブリッジ。
 チャコティとテッサが、パネルを見ていた。
「旧式のコントロールパネル」と、テッサ。「最新鋭の船だって言って
なかった?」
「当時はそうだった」と、チャコティ。
「見つけたわよ、センサー記録」と、テッサ。「でも、わたしじゃアク
セスできないみたい」
「オレのコマンドコードが使えるはずだ」と、チャコティ。副長席に移

38

37
























































動して、脇のパネルに入力した。「う〜ん、使用中のファイルがある」
再生した。
「ジジジ、だが万一に備え」と、再生されたジェインウェイの声。「ジ
ジジ、記録のために言っておこう、クルーは勇気と叡智を持って行動し
た、ジジジ」
 ここで音声が途切れた。
「大丈夫?」と、テッサ。
「ああ」と、チャコティ。「ただ、前、ここに座っていたときも、みん
ながいた。生きてた」
「だから助けに来たんじゃない?」と、テッサ。
「ウウ、トリコーダーを貸してくれ!」と、チャコティ。気を取り直し
て、トリコーダーを脇のパネルの上に置いた。「ダンロードしている、
2・3分だ」立ち上がって、2・3歩歩いた。
「中を案内してもらう時間はないの?」と、テッサ。
「ムリだな」と、チャコティ。「それに、オレの室は散らかっている」
「フフ」と、テッサ。
「計画通りに行けば、2・3時間後に歴史を変えることになる。この1
5年間が消えてしまう。やめてもいいんだぞ?」
「フフフ」
「オレは本気だ」と、チャコティ。

40

39
























































「わたしもよ」と、テッサ。「いまさら引き返すつもりはないわ」
 チャコティは、ゆっくりと、氷ったブリッジを見回した。
「どうかしてるな、いよいよというときに、怖気おじけづいた。自分でも分か
らない。バカ気てるよな。なん年もずっと、このときを目指して来たの
に、なに考えていると思う?おまえを失いたくない」
「あなたの心はいつだって、このボイジャーにあった。きっとこれから
もそうよ。ここがあなたの場所なの。それにいつか、会えるかもしれな
いじゃない?」
「会えなかったら?」
「その日をずっと待っている」
 
               ◇
 
 デルタフライヤーは、氷の惑星の周回軌道を飛んでいた。
「すべてが変わったってことか?」と、ハリー。通信マイクに。「ひと
つ貸しだ」
「キム少尉、手伝ってくれるか?」と、ドクター。
「じゃあな」と、ハリー。通信を終了して、ドクターのところへ。
「今のはなんなんだ?」と、ドクター。セブンから取り出したクロノメ
ーターノードを、調べながら。

42

41
























































「友達に」と、ハリー。「手紙をね。どうだ?」
「基礎構造に損傷はない」と、ドクター。「だが、アイソプローブがい
るな」
「ああ、あるよ」ハリーは、イスの下からコンソールを出し、アイソプ
ローブの調整を始めた。
「それで、どうだった?」と、ドクター。「帰還したときは?」
「反物質花火に」と、ハリー。「高官がずらりといたな。バルカンの聖
歌隊も。そうだ、勲章をもらったよ。チャコティがクルーに捧げるスピ
ーチをして、涙を誘い、マッキンタイヤー提督は、オレを娘婿にと言っ
て来た」
「少なくとも、氷の下には埋もれなくてよかったな」
「いっしょに埋もれていた方がどんなによかったか」と、ハリー。ドク
ターをにらんだ。
「さぞつらかったんだろうな、友人や仲間をみんな残して来て」
「よくあるんだってさ」と、ハリー。アイソプローブの調整を終え、ド
クターに手渡した。「生き残った者は罪悪感を持つ、カウンセラーたち
が言っていた。きみが今、生きているという事実を大切に!人生を愛し
て、過去は忘れろ!当然ながら、捜索隊に志願した。ボイジャーが墜落
した場所を計算しようとした。4年捜し続けて、あと1歩だった。手ごた
えあった。なのに艦隊司令部は捜索を打ち切ると言った。成功の見込み

44

43
























































が少ないってな。祝賀会でオレと握手した提督に、ひとりひとり頭を下
げに行った。続けさせてくれと頼み込んだ。すぐに、マッキンタイヤー
提督さえ会ってくれなくなった。だからオレは、艦隊を辞めた」
「分かったぞ」と、ドクター。「セブンのトランスリンク周波数は、1
08・44236000だな」その数値をハリーに見せた。
「ラッキーナンバーだな」と、ハリー。「今、入力する」パネルに、入
力した。
「無法者の生活は」と、ドクター。「いつからなんだ?」
「この宝箱の存在を聞いた瞬間だ」と、ハリー。ボーグの救出コンポー
ネントを出した。
「キム少尉」と、ドクター。「なにをしようとしているのか、よく考え
たのか?歴史を変えても、事態は悪化するかもしれない。少なくとも、
きみとチャコティは生きている、なぜ、運命にそむく?」
「15年前、オレがミスをしたからこそ、この歴史があって、この今が
あるんだ。オレを信じていたクルーを裏切った」
「ピピ、警戒警報」と、コンピュータ。「船舶接近、方位184マーク
7」
 それを聞いて、ハリーはパイロット席に行って、コントロールパネル
で確認した。「見つかったか。チャコティ!」
「なんだ」と、チャコティ。

46

45
























































「艦隊の船がインターセプトコースにいる、今、やるしかないぞ!」
「すぐ戻る」
 ハリーは、ドクターの方を向いた。「もし反対なら言ってくれ。あん
たのプログラムを切る。だが、やるならいっしょに、運命を変えられる」
「名誉の盗賊に協力するか、コンピュータ回路の中で永遠に眠るか、う
う、よし、運命を変えよう!」
 ハリーは、やっと笑顔を取り戻して、ドクターの腕を叩いた。



            3
 
 15年前。ボイジャーの前を、チャコティとハリーが乗ったデルタフ
ライヤーが飛んでいた。
 ボイジャーのブリッジ。
「艦長日誌」と、ジェインウェイ。「宇宙歴52143・6。運が良け
れば、つぎは、アルファ宇宙域で記録することになる。だが万一に備え、
記録のために言っておこう、クルーは勇気と叡智を持って行動した」
 ブリッジを歩きながら、見回した。
「シールドジェネレータ」と、チャコティ。

48

47
























































「オンライン」と、ハリー。
「プラズマフロー」と、チャコティ。
「安定」と、ハリー。
「通信リンク」と、チャコティ。
「異常なし」と、ハリー。
「ランチは?」と、チャコティ。笑顔で。
「サラミサンドイッチです」と、ハリー。笑顔になった。
「用意はいいか、少尉?」と、チャコティ。
「イエス、サー」と、ハリー。
「チャコティよりボイジャー」と、チャコティ。胸の通信マイクに。
「準備オーケー!」
「艦長より全クルーへ」と、ジェインウェイ。「全員配置につき、全シ
ステムを確認して、スリップストリームに備え、待機しなさい」艦長席
に座った。
「シャトルとの遠隔リンクを確立した」と、セブン。
「コースとスピードを合わせて!」と、ジェインウェイ。
 デルタフライヤーのあとを飛ぶボイジャー。
 
               ◇
 

50

49
























































 現在のデルタフライヤー。
「追いついて来てるわ」と、テッサ。「距離20万キロ、さらに接近中。
これでも回避行動のつもり?」
「これで精一杯だ」と、チャコティ。パイロット席で。「ハリー、どう
だ?」
「ボーグトランスミッターは、これだ」と、ハリー。ボーグトランスミ
ッターをセンサー端子で追いながら。「あとは、ドクターだ。時間座標
が出れば送れる」
「あと、2・3分だ」と、ドクター。セブンの左目奥から取り出したイ
ンプラントを調べながら。
「急いでくれ」と、チャコティ。「ギャラクシー級の船に追われている」
「最大限急いでいるよ」と、ドクター。
「通信が入ってます」と、テッサ。「向こうと話してみる?」
「時間が稼げるかもな」と、チャコティ。「回線をつなげ!」
 スクリーンにラフォージ大佐。以前の全盲サングラスはしてなかった。
「こちらチャレンジャー号」と、ラフォージ。「艦長のラフォージだ。
相当、急いでいるようだな?」
「ああ、まあね」と、チャコティ。
「エンジンを停止して、シールドを解除しないか?ヒザを突き合わせて
話そう」

52

51
























































「また、今度にさせてくれ!」と、チャコティ。
「それはできないな。きみたちの計画を実行させるわけには行かない。
そこで連邦評議会から提案がある。トランスミッターを返して、船を明
け渡せば、きみたちへの提訴を取り下げよう」
「こっちには」と、テッサ。「まったくメリットないわ!成功すれば、
そんな提訴自体、存在しなくなるんだから!」
「もし成功すれば、無数の人が影響を受ける」
「150人の」と、チャコティ。「命を救いに来たんだ、クルーのな」
「それは知ってる」と、ラフォージ。「気持は痛いほど分かるが、私も
きみ同様、私のクルーを守らなければならない。15年間の歴史もね。
だから、もう一度、頼もう。警戒を解き、トランスミッターを返すんだ」
「それは、どうしてもできない」と、チャコティ。
「なら私は、きみを止めなきゃならない」
「ああ、分かっている。幸運を」
「きみもな」
 通信画面が消えた。
 攻撃を受けて、シャトルが揺れた。
「こっちのエンジンをねらっているわ」と、テッサ。
「シールドフルパワー」と、チャコティ。「攻撃の用意をしろ!」
 

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53
























































               ◇
 
 デルタフライヤーのあとを飛ぶボイジャー。
「ボイジャーよりチャコティへ」と、ジェインウェイ。艦長席から。
「はい、艦長」と、チャコティの声。
「スリップストリーム、突入用意!」
「了解」
「開始して!」
「スリップストリーム、突入まで4秒」と、トム。パイロット席で。
「3、2━━━」
 スリップストリームの中を飛ぶ、デルタフライヤーとボイジャー。
 
               ◇
 
 攻撃を受けて、シャトルが揺れた。
「シールド、62%にダウン」と、テッサ。
「応戦しろ」と、チャコティ。
「命中!敵のシールドには影響なし!とても勝てっこないじゃない、チ
ャコティ!」
「いいから、続けろ!」

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55
























































 攻撃を受けて、シャトルが揺れた。
「邪魔したくないが」と、ハリー。「こっちのパワーが切れそうだぞ!」
「待ってて!非常用のバックアップを回す」と、テッサ。
「助かるよ」と、ハリー。そしてドクターに。「ドクター、時間座標を
出してくれ、今すぐだ!」
「せっついても早くはならない」と、ドクター。セブンのインプラント
をセンサーで見ながら。
 
               ◇
 
「位相変動を感知した」と、ボイジャーのセブン。「0・1、0・2」
「回避!」と、ジェインウェイ。艦長席で。
「ハリーの数値待ちです」と、トム。パイロット席で。
「0・3」と、セブン。
「ボイジャーよりデルタフライヤー」と、ジェインウェイ。「修正値が
出ないなら中止するしかないわ」
「もうすぐです」と、ハリー。
「スリップストリームが歪み出してる」と、チャコティ。
「大丈夫です、今、数値を出します」と、ハリー。「空間傾斜度を補正
します。ディフレクタージオメトリーは安定。出たぞ!」

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「位相修正値を受信!」と、トム。
「位相変動は減少している」と、セブン。
「シールド維持しています」と、トゥヴォック。
「うまく行きそうね」と、ジェインウェイ。
 ボイジャーは揺れて、ブリッジの照明が暗くなった。
「位相変動が増加し始めている」と、セブン。「0・3、0・4」
「ハリー、どうなってるの?」と、ジェインウェイ。「位相変動がまた
増加している」
「分かりません、艦長、うまく行くはずなんです」と、ハリー。
「答えはいるけど、ハリー、時間がないの」と、ジェインウェイ。
「センサーを、もう一度、調整してみます」と、ハリー。「変動調整を
し過ぎたのかもしれません━━━」
「通信リンクが途絶えました」と、トゥヴォック。
「テレメトリーもダウンしました」と、トム。「スリップストリームが
不安定になり始めました」
「すぐエンジンを停止して!」と、ジェインウェイ。
「できません」と、トム。「量子マトリックスがオーバーロードになっ
てる。完全に制御不能です」
 
               ◇

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「分かったぞ!」と、ドクター。「サイバネティックシステムが停止し
たのは、宇宙歴52164・3、ボーグタイムインデックス9・438
52だ」
 ハリーは、数値をハンディセンサーに入力した。
「9・40でトランスミッターに入力するつもりなのか?」と、ドクタ
ー。
「ああ」と、ハリー。
「ボイジャーが墜落する4分前だぞ!余裕を持たせた方がよくはないか
?」
「電話するのとは、わけが違う」と、ハリー。「過去に信号を送るって
言うんだからな。セブンが完全なタイミンングでデータを受け取れるよ
うにしたいんだ」
「ピピピ、ピピピ、ピピピ」と、ボーグトランスミッター。
「よ〜し!」と、ハリー。「新しい位相修正値を入れるぞ!」コントロ
ールパネルから数値を入力した。「オレは、15年前、これでミスした。
今度は違う」ハリーが電子端子棒で、ボーグトランスミッターに触れる
と、送信し始めた。
 
               ◇

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 ボイジャーのブリッジ。
「艦長」と、セブン。「信号が届いている」
「通信リンクはダウンでしょ?」と、ジェインウェイ。
「そうです」と、トゥヴォック。
「わたしのインプラントに」と、セブン。「シグナルが届いている」船
体が揺れた。「位相修正値が含まれている」
「ハリーは」と、ジェインウェイ。「ボーグシステムにアクセスできる
の?」
「いや」と、セブン。
「方法を見つけたんだわ」と、ジェインウェイ。ひとりごとのように。
そして、セブンに。「修正値を入力して!」
「やはり、位相変動は減少しない」と、セブン。「スリップストリーム
は崩壊する」
「ディフレクターにフルパワー!」と、ジェインウェイ。
「効果なし」と、トゥヴォック。
「船体がゆがんでます」と、トム。
「シールド最大値に!」と、ジェインウェイ。そして、トムに。「船を
安定させて!」
「無理です」と、トム。「姿勢制御が効きません、慣性ダンパー、停止

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しました」
「デルタフライヤーはどこなの?」と、ジェインウェイ。
「船影が見当たらない」と、セブン。「ストリーム内に残ったらしい」
 
               ◇
 
 デルターフライヤー。
「ボイジャーがストリームから投げ出された」と、チャコティ。
「コースを変更しましょう」と、ハリー。「戻らなきゃ!」
「無理だ」と、チャコティ。「ボイジャーが無事でも、この速度で戻っ
たら、シャトルが持たない」
「そんな!」と、ハリー。「みんなを助けなきゃ!」
「少尉!」と、チャコティ。ハリーの腕をつかんだ。「仕方ないんだ」
 ハリーは、力尽きたように、床にヒザをついた。
 
               ◇
 
 制御を失ったボイジャー。
「艦長」と、トム。「アルファ宇宙域から、ほんの数パーセクです」
「その境界をなんとか越えたかったのに」と、ジェインウェイ。

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「第5から第10デッキに船体破損」と、トゥヴォック。「生命維持機
能低下」
 ブリッジのパネルに火花が散って、船体が揺れた。
「どこかに不時着しないと、空中分解します」と、トゥヴォック。
「惑星を発見しました」と、トム。「ここから900万キロ先のLクラ
スです」
「着陸」と、ジェインウェイ。
 ボイジャーは、氷の惑星に着陸体勢に入った。
「速度が速すぎる」と、ジェインウェイ。「逆トラスター!」
 切り立った惑星の氷の山脈が迫った。
「全員、衝撃に備えよ!」
 ボイジャーは、2度3度バウンドして山脈のあいだの雪原に不時着し
た。
 
 




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67
























































            4
 
 チャレンジャー号から逃げるデルタフライヤー。
「まだオレたちがいる」と、ハリー。「どうしてまだいるんだ?」
「キム少尉」と、ドクター。
「あの修正値はダメだったんだ」と、ハリー。
「確かか?」
「もしボイジャーが助かったんなら、オレたちが救いに来てるわけがな
い」
 ハリーは、トランスミッターを調べた。「トランスミッターは異常な
い。メッセージは受け取っているはずだ。チャコティ、問題発生だ」
「ああ、そのようだな」と、チャコティ。船体が揺れた。
「エンジンがダウンしたわ」と、テッサ。「向こうのトラクタービーム
にロックされてる」
「スラスター全開!」と、チャコティ。
「効果なし」と、テッサ。
 チャコティは、テッサのコントロールパネルへ行った。「やつらのト
ラクタービームにプラズマを放出できないかな?逃げられるかもしれな
い」
「できると思うけど、EPSリレーがかなりやられている。ワープコア

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69
























































が不安定になるかも」
「向こうの船に転送しようか?構わないんだぞ」と、チャコティ。
「ひとりで楽しむ気?」と、テッサ。
 チャコティはパイロット席に戻った。
「ハリー」と、チャコティ。「あと、2・3分、時間を稼げ!」
「分かった」と、ハリー。
「タイムトラベルは専門外だがね」と、ドクター。「もう一度やればい
いだろう?過去はどこにも逃げないんだ!」
「さっきと同じ情報を送っても意味ないだろ!」と、ハリー。別のパネ
ルコントロールに向かった。「動力は問題ない、長時間信号、問題ない、
ディフレクタージオメトリーだ」
 チャレンジャー号のトラクタービームに引っ張られていたデルタフラ
イヤーは、ビームにプラズマを放出して飛び去った。
「離脱したわ」と、テッサ。
「EPSリレーがオーバーロードだ」と、チャコティ。「ハリー、たぶ
ん、あと3分以内にワープコアが爆発するぞ!そっちは、どうなってい
るんだ?」
「グレイト!最高だね!」と、ハリー。また、別のコントロールパネル
に向かった。「あの修正値を出すのに10年掛かった!それを3分で直
せるか!」

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「やるしかないだろう!」と、ドクター。
「もう無理だ、うまく行くはずない、どうしてだめなんだ!」と、ハリ
ー。パネルを叩いて、パネルから離れた。
「オレが殺したんだ」と、ハリー。
「しっかりしろ!」と、ドクター。
「オレがクルーを殺したんだ!」
 ドクターは、ハリーの両腕をつかんだ。「キム少尉、オレはきみの泣
き言を聞くために氷の中から出て来たんじゃない!自分があわれで泣くの
は勝手だがな、ひとりのときにしてくれ!」
「だがな、歴史は繰り返すんだよ!オレはまたボイジャーを墜落させた
んだ」
「なんとか歴史をねじ伏せて、変えるしかない!それができるのは、き
みだけなんだ!」
「無理だよ、ドクター」
「言っただろ?確かに、位相変動の修正は間に合わないかもしれないさ。
ああ、そりゃ認めよう!でもボイジャーに警告は送れないのか?スリッ
プストリームフライトをやめさせることはできないのか?」
「そうだ」と、ハリー。なにかを思いついて気を取り直した。「そうだ、
スリップストリーム自体を消す修正値を送ればいいんだ」
「そう、地球に帰せなくても、命は救える」と、ドクター。

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「警告」と、コンピュータ。「ワープコアの崩壊まで60秒」
「コアの放出できるか?」と、チャコティ。
「だめ」と、テッサ。「非常用システムが機能しないの」
「ラフォージよりデルターフライヤー」と、ラフォージの声。「センサ
ーでコアのオーバーロードを感知している。シールドを解除しろ!転送
収容する」
 テッサは、パイロット席まで来て、チャコティの腕に触れた。
「申し出は感謝します」と、チャコティ。「だが、答えはノー。危険で
すから距離を取ってください」
「警告」と、コンピュータ。「ワープコアの崩壊まで45秒」
「ハリー」と、チャコティ。「そろそろ、頼むぞ!」
 ボーグトランスミッターのリンクが切れて、点滅が消えた。
「キム少尉」と、ドクター。
「パワーが切れる」と、ハリー。
「警告」と、コンピュータ。「ワープコアの崩壊まで30秒」
「あんたのエミッターだ」と、ハリー。「電源が入っている」
「足りますか?」と、ドクター。
「やってみるしかない」と、ハリー。ドクターの腕に付いているエミッ
ターを取り外そうとした。「いてくれてよかった」
「がんばってくれ!」と、ドクター。励ますようにハリーの腕を叩くと、

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消えた。
「警告」と、コンピュータ。「ワープコアの崩壊まで15秒」
 ハリーは、エミッターをボーグトランスミッターに接続した。
「チャコティ」と、ハリー。「もう一度だけやってみる!」
「警告」と、コンピュータ。「ワープコアの崩壊まで10秒、9、8、
7、6」
 チャコティとテッサは手を取り合った。
「5、4、3、2」
「ヤッター!」と、ハリー。ボーグトランスミッターへの入力を完了し
て叫んだ。
 デルタフライヤーは、爆発して崩壊した。
 
               ◇
 
 ボイジャーのブリッジ。
「艦長」と、セブン。「信号が届いている」
「通信リンクはダウンでしょ?」と、ジェインウェイ。
「そうです」と、トゥヴォック。
「わたしのインプラントに」と、セブン。「シグナルが届いている」船
体が揺れた。「位相修正値が含まれている」

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77
























































「ハリーは」と、ジェインウェイ。「ボーグシステムにアクセスできる
の?」
「いや」と、セブン。
「方法を見つけたんだわ」と、ジェインウェイ。ひとりごとのように。
そして、セブンに。「修正値を入力して!」
 ゼブンが修正値を入力すると、ビビビビとコンピュータが警告音を出
した。
「艦長」と、トム。「いま、量子ドライブが停止しました。通常スピー
ドに落ちています」
「艦長」と、トゥヴォック。「スリップストリームから出ました」
 デルターフライヤーに続いてボイジャーもスリップストリームから出
て、宇宙空間を飛行した。
 
               ◇
 
 デルタフライヤー。
「スリップストリームが崩壊した」と、チャコティ。「ボイジャーとい
っしょに放り出されたぞ」
「送信リンク、復活しました」と、ハリー。「デルタフライヤーよりボ
イジャーへ」

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79
























































 ボイジャーのブリッジ。
「ハリー、計算ミスよ」と、ジェインウェイ。席を立って歩き出した。
「あなたがセブンに送った修正値を入力したら、量子ドライブが停止し
たの」
 デルタフライヤー。
「艦長」と、ハリー。「私はセブンに修正値など送ってません」
 ボイジャーのブリッジ。
「彼女は」と、ジェインウェイ。「インプラントを通してメッセージを
受け取っているの、あなたじゃないの?」
 デルタフライヤー。
「違いますよ」と、ハリー。
 ボイジャーのブリッジ。
 ジェインウェイは、不思議そうにセブンを見つめた。セブンはなにも
言わなかった。







82

81
























































            エピローグ
 
「艦長日誌、補足。スリップストリームフライトは短時間だったが、旅
が10年は縮まったようだ。技術的に完成したと言えるまで、量子ドラ
イブは撤去しておくよう命じた。失敗はしたが、おかげでかなり士気は
上がった。あとの問題は、帰れるかどうかではなく、いつの問題だ」
 電気の消えた夜のラウンジルーム。ハリーがひとりでコンソールに向
かっていた。
 ジェインウェイが入って来た。ハリーは立ち上がろうとした。
「そのままで!」ハリーの脇まで来た。「邪魔だった?」
「いえ、ちょっと確認したいことがあったんで」と、ハリー。
「修正値の件ね?」
「私は、計算ミスをしてました」と、ハリー。「あれを使っていたら、
ボイジャーにかなりの被害が出て、墜落していたかもしれない。だが、
だれかが、セブンに別の修正値を送っていたんです」
「守護天使がついているんじゃない?」と、ジェインウェイ。
「そうならいいんですけど」
「ほんとうよ」と、ジェインウェイ。「名前はハリーキム」
「艦長?」
「メッセージに艦隊の機密コードが埋め込まれていたのを」と、ジェイ

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ンウェイ。イスを引いて、ハリーの隣りに腰掛けた。「セブンが見つけ
た。あなたのものよ」
「でも、ほんとうに、ぼくは送ってません」
「まだ、ね」と、ジェインウェイ。「あの通信には、時間のずれがあっ
たの。あれは、未来から送られたものよ。10年、20年先かもしれな
いわ」
「待ってくださいよ」と、ハリー。「ぼくは未来からメッセージを送っ
て、過去を変えたとすると、そしたら、その未来は存在しないはずでし
ょ?なら、どうして、そのメッセージを送れるんです?言ってること分
かります?」
「タイムパラドックスを解消する方法は簡単よ」と、ジェインウェイ。
「考えないこと!それより、大事なのは、あなたがわたしたちを助けた
こと。どの時代からか、どうやったか分からないけど。わたしが言って
も信じないのね?」ジェインウェイは、ハンディパネルを見せた。「確
かめる?」
 ハリーは、ハンディパネルを受け取った。
「送られて来たメッセージの中に、セブンがこれを見つけたの。ハリー
キムから、ハリーキムへ」
 ジェインウェイは室を出て行った。
 ハリーは、コンソールでメッセージを再生した。

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「やぁ、ハリー」と、ハリー。「あまり時間がない。手短かに話す。1
5年前、オレはミスを犯し、150人の仲間が死んだ。そのミスを後悔
しない日は、1日もなかった。だが、もし、今、これを見てるんなら、
すべては変わったということだよ。ひとつ貸しだよ」
「キム少尉、手伝ってくれ!」と、ドクター。
「じゃあ、な」と、ハリー。メッセージが終わった。
 ハリーは、なにも言わなかった。
 
━━━ボイジャーは、ふたたび、アルファ宇宙域への、帰還の旅へ。
 
 
 
                  (第五_二_二話 終わり)








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