夢を食う謎のワームホール
               ロバートドハーディ、ビルプラティ
                
            プロローグ
             
 閃光が走り、エイリアン宇宙船が攻撃されたが、すぐに反撃した。
「ハッ!まいったか!」と、白髪のエイリアン。操縦席についた。
「おかしいな、そうあわてるなって!」
 こちらに向かって、巨大ななにかが口をあけていた。
「今、こっちから突っ込んでやるって!オレの心が読めるんだろ?」
 また、閃光が走った。
「分かったよ、来るなら来い!食えるなら食ってみろ!ああ、くそっ!
持ちこたえてくれ!」
 大急ぎで操作パネルを叩いた。
 ひとり乗りの宇宙船は、巨大ななにかに突進して行った。




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 宇宙船ボイジャーは、地球からはるかに離れた、銀河の反対側のデル
タ宇宙域を航行していた。
 ターボリフトのドアが開き、ジェインウェイ艦長がブリッジに入った。
「ワームホールですって?」と、ジェインウェイ。
「現地点より、およそ4億キロの位置にあります」と、トゥヴォック少
佐。
「トランス運動ベクトルを見ると」と、チャコティ副長。
「セクター001に通じている」と、ジェインウェイ。
「ワームホールのようですが」と、チャコティ。「生命物質活動のかた
まりを検知しました」
「生命体なのに、ニュートリノ流動?」
「まさか」
「地球につながる道は、突然、現れた」と、ジェインウェイ。「いった
い、どういうことかしら?」
「プローブで調べましょう」と、チャコティ。
「警戒体制をしいて!」と、ジェインウェイ。「クラス5のプローブを
準備!正体を突き止めましょう!」
 

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               ◇
 
 3名のクルーを乗せたシャトルが、帰還のについた。
「セブンオブナイン、私的記録」と、セブン。「新たなデュートリウム
捜しには失敗したが、クルー1名にいい体験をさせることができた」
 操縦席には、トムパリスとセブン、それに、6才のナオミワイルドマ
ンがいた。
「あした、また、デュー捜しに行くなら、また、連れて行って!」と、
ナオミ。
「それは、艦長しだいだな」と、トム。
「おまえより経験のあるクルーが行くことになるだろう」と、セブン。
「せっかくシャトル任務についたのに、成果なしなんて」と、ナオミ。
「成果はあった」と、セブン。「このシャトルに慣れることができた」
「でも」と、ナオミ。「異星人とのファーストコンタクトとか、スペー
スバトルとか」
「ああ、そりゃいい」と、トム。
「いつか、そのうちにな」と、セブン。
「なぁ、ナオミ、操縦してみるか?」
「いいの?」
「少尉!」と、セブン。

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「これもシャトルに慣れるための、勉強さ」トムは、操縦席にナオミを
座らせた。「さ、よ〜し、まずは、推力4分の1に変えてみよう!この
コントロールを押して、つぎにここ!」
 ナオミは、言われたとおりに操縦パネルを叩いた。「推力4分の1に」
「さぁて、ボイジャーに戻るコースを示して!」
「イエス、サー!」と、ナオミ。それを見つめるセブン。
 
               ◇
 
 ボイジャーの通路を行く3人の脇を、クルーたちが反対方向へ走った。
「なに急いでるんだろ?」と、トム。寝込んでしまったナオミをかかえて
いた。
「ボイラとホワイトだが、毎回任務の交代に遅れる」と、セブン。
「遅れると言えば」と、トム。「こういうこともしなけりゃな。オレが、
ナオミの就寝時間に遅れたことを母親に説明して、きみは調査の報告を
出す」
「了解した」
「がんばってくれ!」通路の角で別れた。
 セブンは、ブリッジに来た。
「遅かったわね」と、ジェインウェイ。「心配してたのよ」

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「調査は、予想以上に手間どった」
「デュートリウム問題は解決した」と、チャコティ。
「ワームホールか?」と、セブン。スクリーンに分析図が映し出されて
いた。
「本物だぞ!地球に一足跳びだ!」と、キム少尉。
「こうした現象が見つかる確率は」と、セブン。「きわめて低い」
「大当たりでしょ?」と、ジェインウェイ。
 セブンは、調査パネルの前で、パネルを叩いた。
「なにをしている?」と、キム。
「異常がないか調べている」
「異常はない」と、トゥヴォック。
「そうなんだ」と、チャコティ。「亜空間のねじれなし、時間の変動も
ない」
「プローブが向こう側から、かすかなシグナルを拾ったの」と、ジェイ
ンウェイ。
「ベラナがダウンロード中だが、宇宙艦隊かららしいよ」と、キム。
「このワームホールは、わずか3億キロの位置にある。長距離センサー
が今ごろ感知するのはおかしい」と、セブン。
「それは、きみの見落としじゃないのか?」と、トゥヴォック。
「気がすむように、今からすぐチェックして!」と、ジェインウェイ。

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「それまでは、今のコースを維持します」
 セブンを残して、全員、ブリッジから出て行った。
 調査パネルをいぶかしそうに叩くセブン。







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 艦長室。ジェインウェイがコーヒーを入れていると、ドアが鳴った。
「どうぞ」と、ジェインウェイ。
「チェックはすべて完了した」と、セブン。「センサーは完璧な状態で
動いている」
「じゃあ、なんの問題もない」ジェインウェイは、入れたばかりのコー
ヒーを飲んだ。
「その逆だ。ニュートリノレベルが極端に不安定だ」
「わたしもそう思った。これを受け取るまではね」ハンディパネルを見

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せた。「われわれが感知したシグナルは、宇宙艦隊からだったの。これ
でニュートリノ流動は、なんの心配もいらない」
「宇宙艦隊のミスかもしれない。しばらく様子を見るべきだ」
「時間がない。ワームホールが不安定になる」
「ドクターが、ころばぬ先のつえと、いつもわたしに言っている。古臭いこ
とわざだが、有効だ」
「この言葉を返す」と、ジェインウェイ。「ためらうもの、機会を逃す」
「艦長!」
「ほんとうの問題を避けてはだめよ、セブン。あなたは心から地球に戻
りたいとは思わないでしょ?恥ずかしいことじゃない。ほんとうよ、あ
なたは地球で成長する。ボイジャーでしたようにね」
 ドアが鳴った。
「はい」と、ジェインウェイ。
「これで2通目」と、チャコティが入りながら、艦長にハンディパネル
を渡した。「焼けるね」
「マーク!」と、ジェインウェイ。ハンディパネルを見ながら。「彼、
婚約がだめになったらしいわ。あなたの方は、いいんでしょ?」
「宇宙艦隊から、完全復帰を求められた。その上、アカデミーで人類学
の教授をやらないかと打診された」
「チャコティ、おめでとう!困るわ」

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「大丈夫さ」
「わたしひとりでボイジャー指揮するなんてムリよ」
「いや、きみならできるさ」
 ふたりのやり取りを、黙って見ているセブン。
 
               ◇
 
 セブンは、自分の作業場にしている第2貨物室で、調査パネルに向か
った。
「コンピュータ、宇宙歴52542の全日誌、ジェインウェイ艦長の記
録にアクセス」
「ピピ、全ファイル、アクセス禁止です」と、コンピュータ。
 セブンは、第2貨物室の裏のパネルをあけて、コネクターを1本抜い
た。
「アクセスします」と、コンピュータ。
「通常日誌を」と、セブン。調査パネルに戻った。
「艦長日誌、宇宙歴52542・3。長距離センサーが、アルファ宇宙
域につながるワームホールを感知。しかし残念ながら、2度目のスキャ
ンでは、ある種の策略だと判明した。いったいだれが?われわれをだま
しているのか?なんのために?」

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「つぎの日誌に進め!」と、セブン。
「艦長日誌、補足。プローブでかすかな遠隔データを受信し始めた。み
んなを期待させるわけではないが、ベラナは宇宙艦隊からではないかと
言う。だまされていたというわたしの疑いは思い違いだったようだ」
「つぎの日誌に進め!」と、セブン。
「艦長日誌、補足。ボイジャーのコースをワームホールに設定。うまく
行けば、われわれはわずか数日で、アルファ宇宙域に到達する」
 その記録を聞きながら、セブンは、無表情を崩さなかった。
 
               ◇
 
 通路を歩くセブン。「アニタ!」と、呼び掛けながら、ニーリックス
が走って来た。
「アニタハンセン!」と、ニーリックス。
「そんな名前のクルーはいない」と、セブン。
「きみだろ?きみ宛ての手紙を預かっている」ニーリックスは、ハンデ
ィパネルを渡した。「アルファ宇宙域にきみの知り合いがいるとは思わ
なかったよ」
「いない」と、セブン。
「しかし、向こうはきみを知ってる。だれなんだい?」

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「クラウディアハンセン」と、セブン。ハンディパネルを見ながら。
「わたしの父の妹だと言っている」
「おばさんか!」
「わたしに会うのを楽しみにしているらしい」
「そりゃよかった!」と、ニーリックス。「オレの方は、宇宙艦隊から、
ランチュアンセクターの大使に抜擢ばってきされた」
「大使?」
「哺乳類をかぎ分ける能力を買われたのかな?」
 セブンは、うれしそうなニーリックスを残して、歩いて行った。
 
               ◇
 
 食堂にはいると、調理室でつまみ食いしているトムパリスを見つけた。
「少尉」と、セブン。「少し、きたいことがある」
「なんだ?」と、トム。
「シャトルから戻ったとき、クルーたちの態度の変化に気づかなかった
か?」
「たとえば?」
「ワームホールは見せ掛けかもしれないという証拠を、艦長に示したが、
艦長は無関心だった」

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「ほんとか?」と、トム。料理を皿に盛りながら。「艦長らしくないな」
「みんな、ニセの遠隔測定データにだめされている。楽観的な通信のよう
だ」
「故郷からの手紙か?」
「ああ」
「オレも受け取ったよ」と、トム。コーヒーをつぎながら。
「やはり、いいニュースか?」
「ああ、最高さ。オーストラリアの新しいテストフライトセンターで働
かないかって!美しいビーチで、最新型の実験船を操縦するんだぞ!信
じられない」
「手紙はニセものの可能性もある」
「ハハ、冗談よせよ!オレはもう返事を出した。オーケーしたよ」
 セブンは、喜んでいるトムを見ながら、失望を感じた。
 
               ◇
 
 医療室。
 セブンが入って来た。「コンピュータ、EMHを作動!」
「緊急事態の概要を述べよ!」ドクターが起動された。
「ワームホールはニセものの可能性が高い」と、セブン。「クルーが」

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「待ってくれ」と、ドクター。「ワームホールだと?」
「知らされていないのか?」
「まったく知らん」
「最近の態度から考えれば驚くことはない。ワームホール発見以来、策
略の可能性があるのに、クルーたちは目をつぶっている。からだに、な
にか問題があるのか調べてほしい」
「ピピ」と、スピーカー。
「ブリッジよりセブンオブナイン」と、チャコティの声。
「すぐ行く」
「いつもの検査ということで、なん人かクルーを調べてみる。それで必
要な診断はできるだろう」
 セブンは、医療室を出て、ドクターにうなづいた。
 
               ◇
 
 ビリッジ。セブンが入って来た。
「ちょうど視覚領域に入った」と、チャコティ。「きみも見たいだろう
と思ってね。これから向こう側の画像が出るだろう」
 スクリーンに、ワームホールの入り口が映し出されていた。
「データが古く、更新している」と、トゥヴォック。

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「なんとか取り除こう」と、キム。操作パネルを叩いた。「今だ」
 すると、スクリーンに地球の映像が出た。艦長はスクリーンに釘付け
になった。
「ワームホールまで、あとなん分だ?」と、チャコティ。
「53分です」と、トムパリス。
「コースを維持して!」と、ジェインウェイ。
「全クルーへ、こちらブリッジ」と、チャコティ。「全システム固定」
「地球の軌道に入ったら」と、ジェインウェイ。「第2の軌道に入って!
北アメリカ大陸、宇宙艦隊司令部」

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 天体測定ラボ。
「コンピュータ、ワームホール内部の重力測定スキャンを実行」と、セ
ブン。「空間傾斜度の矛盾を捜せ!」
「ピピ、傾斜はクラス1ワームホールと一致します。異常はまったく感
知されません」
「センサーを再調整して、実行」
「ピピ、異常は、まったく感知できません」
「グリッド925を抜き出して、拡大」スクリーンに黒い点のようなも

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のが見えた。
「コンピュータ、グリッド925にあるのは、宇宙船か?」
「ピピ、宇宙船は感知できません」
「回線をつないで!」
「ピピ、回線をつなぎました」
「通告する、こちらは、宇宙艦ボイジャー、応答せよ!ただちに応答せ
よ!」
 雑音の多いスクリーンに、白髪のエイリアンが映し出された。「おま
えさん、だれだ?」
「連邦宇宙艦ボイジャーのセブンオブナインだ、お前の船から3・4光
年離れた位置から、そちらに向かっている」
「さっさと帰れ!おまえは、だまされている」
「だれに?」
「人の夢を食う、けだものさ!」
 スクリーンの画像が消えた。
「コンピュータ、通信が途絶えた。原因はなんだ?」
「艦長命令だ」と、トゥヴォック。室に入って来た。「天体測定ラボか
らのパワーは、推進の方へ回される。ワームホールからあちら側に出る
まではな」
「今」と、セブン。「現象内部にいる宇宙船と話しをした」

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「宇宙艦隊か?」
「異星人だ。ここから離れるよう警告された」
 トゥヴォックは、パネルを調べた。「センサーには、なんの通信記録
も残ってはいない」
「センサーは、機能不全だ」と、セブン。「われわれは、だまされてい
るのだ。ワームホールの存在をうのみにするな!」
「データの量から言って、間違いとは思われない」
「データは正しくない」と、セブン。
「きみの推理ではな」
 セブンは、話題を変えた。「少し立ち入ったことを訊いてもいいか?」
 トゥヴォックは、うなづいた。
「家族との再会は楽しみか?」
「もちろんだ」
「その再会の思いは、予想以上に強くなっていないか?」
「なにが言いたい?」
「おまえはあやられている。なにものかが、論理を混乱させている。いつ
もなら、わたしの不安に耳を傾けないはずだ」
「セブン、当分、天体測定ラボへの立ち入りは禁止する。以上だ」
 セブンは、憤然としたが、なにも言わずに出て行った。
 

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               ◇
 
 セブンは、第2貨物室へ戻って来た。操作パネルを叩いていると、貨
物の奥で物音がした。ゆっくり近づいてから声を掛けた。
「ナオミワイルドマン」
 ナオミはゆっくり体を起こした。
「おまえは、貨物室への立ち入りは禁止されている」
「わたし、逃げて来たの」と、ナオミ。
「だれから?」
「みんなよ!みんななんだかおかしいの。ママからして」
「詳しく話せ!」
「ママったら、笑ってばかりいて、地球は最高だって、地球のことばか
り言うの」
「おまえは、地球に帰りたいとは思わないのか?」
 ナオミは首を振った。「わたしのうちはボイジャーよ。地球に着いた
ら、船を降りなければならない。ニーリックスにも会えなくなるから、
寂しいし、それに、セブンといっしょにキッヅコットで遊べなくなる」
「妙だな」と、セブン。「おまえとわたしだけが、影響を受けていない」
「なんのこと?」
「まだ、定かではない」

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                  (第五_四_二話 つづく)

















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