夜明け前に死んでもらう
          原作:フレドリックブラウン
          アランフィールド
           
            プロローグ
             
 ビッグベンハーデンがもしも彼が太っているという迷信に、それほど
とらわれていなければ、それは、起こらなかっただろう。迷信にとらわれて
いたよりは、太っていたことが。彼がそんなに太ってなければ、キャッ
プロジャースは、彼を警官としてクビにしなかった。そして、もしもク
ビになってなければ、たぶん、あんなにウォッカを飲まなかった。
 そして、もしもそのウォッカが、彼の体重を軽くさせてなかったら、
体重と幸運を得るために、硬貨を体重計に投じてなかっただろう。体重
計から出て来たカードの体重欄には、ビッグベンハーデンの体重は24
7パウンドとあり、幸運欄には、ウォッカはモノマネ鳥とあった。




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 しかし、彼が迷信にとらわれていなかったら、幸運欄は読まなかった。
 つまり、悪循環だということ、それが、彼を窮地に追い込んだ。
 
        1 ログキャビン宿泊所
 
「よう、ベン!」と、キャップロジャース。まさに、その午後だった。
「あんたが、余計な脂肪をそぎ落とせれば、もっと健康になれるはずだ。
けど、あんたはできないと言う。オレが思うにあんたは食べ過ぎ━━━」
「キャップ!」と、ビッグベン。おごそかに。「ここ何週間、固形物を
口にしてない。なのに、今のまま、1オンスも減らせてない!もう残さ
れた方法は、足を切断するしかない、おそらく、しかし━━━」
「いずれにせよ、働けない、規則は規則だ、ベン」
 
 
 
                            (つづく)





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